新国立劇場バレエ団 ガラコンサート 2003新潟公演

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03年7月25日(金)

新潟県民会館大ホール

 

ガラにしては作品数が少なく『パキータ』もパ・ド・トロワなしの上演で,ちょっと淋しかったですが,普段は主役を踊らないダンサーのパ・ド・ドゥもあり,とても楽しめました。

 

第1部

『ジゼル』よりパ・ド・ドゥ

振付:ジャン・コラリ/ジュール・ペロー/マリウス・プティパ   音楽:アドルフ・アダン

斎藤美帆, 小嶋直也

斎藤さんは,新国立劇場バレエ研修所出身で,正式には秋に始まるシーズンから入団する方。プログラムによると,新潟市出身とのことでした。
そういうこともあってでしょうか,かなり緊張していたようで,ジゼルらしい雰囲気は出せていなかったと思います。でも,きちんとていねいに踊っていましたので,新人のデビューとしては立派だったのではないでしょうか。

小嶋さんは悔恨に打ち沈む美しい伯爵さまで,パートナーへの配慮のあるサポートもよかったのですが・・・ううむ・・・ソロの音楽が速すぎ。あんなにスピード感溢れる踊りでは,全然死にかけている人に見えない・・・(泣)。彼自身の希望するテンポだったとすれば「踊りの意味を考えてよぉ」と文句を言いたいですし,不本意ながらバレエ団の用意したテープに合わせて踊ったのだとすれば,ううむ・・・「ちゃんと主張してよぉ」とやっぱり文句を言いたいです。

全体としては,短すぎて物足りなかったです。そんなに盛りだくさんのプログラムではないんだから,最後までやってくれればいいのにぃ。

 

『海賊』よりパ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ   音楽:リッカルド・ドリゴ,レオン・ミンクス

前田新奈, 貝川鐵夫

前田さんは指先までていねいに気を配った上半身の動きがきれいでした。
貝川さんのアリは2月の研修所終了公演のときも見たのですが,上達したなー♪ と思いました。

二人ともほっそりとした長身で見映えがしますし,ロマンチックな雰囲気があったのもよかったです。
特に,前後に立って,揃って腕を差し上げたポーズで腕の動きがきちんと調和して重なっていたのには「おおっ,正しい『海賊』だわっ♪」と嬉しくなりました。(←ルジマトフファンのこだわり)

 

『白鳥の湖』より黒鳥のパ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ   音楽:ピョートル・チャイコフスキー

遠藤睦子, マイレン・トレウバエフ

遠藤さんは,腕の動きの美しさが足りない感じでしたし,少々地味な気はしましたが,安心して見られる確実な踊りでした。
なにより,単にパ・ド・ドゥとして踊るのではなく,きちんと「悪巧みのオディール」を表現していたので,私はとても気に入りました。

トレウバエフさんは,技術的には上手なのですが,ううむ・・・具体的に分析して説明する能力がないのですが・・・王子の踊り方ができていませんでした。あと,表現力が足りないというか・・・オディールに誘惑されていく(あるいは恋に落ちていく)様子には見えなかったなあ・・・。
たぶん,レニングラード国立バレエでは王子役を踊る機会がなかったから慣れていないのでしょう。今後に期待したいですー。

 

チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ

振付:ジョージ・バランシン   音楽:ピョートル・チャイコフスキー

志賀三佐枝, 小嶋直也

私が思うに,現在日本で踊っているダンサーの中で,最もこの作品にふさわしいであろう二人による上演。今回一番のお目当てでした。(というより,このためだけに新潟まで行ったようなものです)

志賀さんがすばらしかったです〜。
確実なテクニックで軽やかにキレよく踊って,女らしい艶もある。そして,とっても音楽的。彼女の音楽の使い方(音のとり方?)って,私の好みだわ〜♪

小嶋さんはですねー,もちろん悪いわけはないです。きれいで安定感があって大きな踊り。でも,私の期待していたものとはちょっと違いました。(←期待というより夢想と言うべきか?) 
この作品の踊り方としては正攻法の楷書すぎるというかアクセントが足りないというか・・・。もう少し,例えば音楽とともに加速していく感じとか洒脱さとかが欲しかったかも〜。

彼が踊るのを初めて見られたのでそれはもう嬉しかったのですが,意外にも今ひとつ向いていない作品なのかなー,それともこの踊りが最も似合う年齢は過ぎてしまったのかなー,いや,(たぶん)あまり踊っていないから表現しきれていないのかなー,などと終わった後でアレコレ考えてしまいました。
それを確認するためにも,近いうちにまた見たいですが・・・望み薄かしらねえ・・・。

全体としては,にこやかに微笑みあう品のいいちょっと大人のカップル。これみよがしなところは皆無で,踊る側の懸命さに見る側が疲れることもなく,幸福感を味わうことができる上演だったと思います。

 

第2部

『パキータ』より

振付:マリウス・プティパ   音楽:レオン・ミンクス

酒井はな, 山本隆之

遠藤睦子, 西山裕子(第2Va), 西川貴子(第4Va), 前田新奈(第3Va), 湯川麻美子(第1Va), 川村真樹, 鹿野沙絵子, 神部ゆみ子, 北原亜希, 工藤千枝, 千歳美智子, 鶴谷美穂, 深沢祥子, 丸尾孝子

全体としては,先月新国立劇場で初演したときよりはプティパ作品らしい華やかさが出ていました。第1部のパ・ド・ドゥと対照的に舞台の上の人数が多いのに目が眩んだせいもあるかもしれませんが,踊る回数を重ねて段々よくなってもきたのでしょう。

酒井さんの華やかな雰囲気や押し出しの強さは,こういう作品ではほんとうに貴重な資質だなー,と感心しました。踊りも安定していましたし,自分の表現方法が確立している感じで,見せ方も効果的。その「見せ方」が少々濃厚すぎて私の好みとは違うのですが,それはあくまでも好みの問題。輝いていて,見事だったと思います。

山本さんは大過なく踊っていましたが,ううむ・・・私には全然つまらないです。
あれだけ酒井さんが見せているんだから,もう少し,なにか,こう・・・。ノーブルさはさほどではないダンサーだと思いますから,別の面の雰囲気を作ってはどうでしょうかね? 例えば『ドンキ』のエスパーダで見せたような,芝居がかったかっこよさとか・・・。
今のままでは,古典を踊る彼は「山本隆之」ではなくて「酒井はなのパートナー」に見えてしまうと思うんですけどー? (もちろん,それも大切な役目ではありましょうが・・・。あんなにかっこいいのにもったいないよねえ)

 

カーテンコールでは,第1部に出演したダンサーも登場してくれたので,とても嬉しかったです〜♪

1階席は,8割くらいの入りだったでしょうか。バレエを習っている方が多い感じの客席でしたが,拍手も盛大でかなり長く,雰囲気のよい公演だったと思います。
舞台が狭くてダンサーが踊りにくそうなところもありましたし,床は大音響でしたが(なにしろ,小嶋さんでさえ着地で音を立てること数回!),多少難はあるにしても,こういう機会が全国各地であるといいのになー,と思いました。

(03.7.26)

 

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