トリプル・ビル(新国立劇場バレエ団)

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01年6月22日(金),23日(土),24日(日)

新国立劇場(オペラ劇場)

指揮:渡邊一正  管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 

テーマとヴァリエーション

振付:ジョージ・バランシン  演出:パトリシア・ニアリー

音楽:ピョートル・チャイコフスキー

高橋有里,根岸正信(22)/宮内真理子,小嶋直也(23,24)

大森結城,西川貴子,前田新奈,湯川麻美子(22,23)/遠藤睦子(24)
市川透,ゲンナーディ・イリイン,奥田慎也,冨川祐樹

高橋/根岸は,初役。
高橋さんは,音楽的な踊りですし,なにより,小柄な方なのにグラマラスな大人の女らしさが感じられてステキ♪
一方の根岸さんは,貫禄は欠けるものの,明るい雰囲気が幕開けにふさわしかったと思います。

宮内/小嶋は,「見せるべきところを見せる」職人芸を披露。
でも,宮内さんは,精緻な人形細工を見ているようで・・・テクニックも美しさも文句はありませんが,こちらを高揚させてくれるものがないと言えばいいのかしらん・・・。
小嶋さんは今回は若干不調でしょうか・・・動きにいつもほどの余裕と大きさが感じられなくて,残念。
でも最終日はかなりよかったですし,なにより,好きなモノは好きなのよ(笑)ということで,ああ,やっぱりステキだわ〜。一瞬,もうこの後は見ないで,帰って余韻に浸ろうかと思ってしまいましたー。(すみません。)

長身ダンサーを揃えた女性コール・ドが見事でした。(男性も,進歩していたとは思います。)

 

リラの園

振付:アントニー・チューダー  演出:ドナルド・マーラー

音楽:エルネスト・ショーソン

キャロライン:酒井はな(22,23)/西山裕子(24)

キャロラインの恋人:山本隆之

婚約者:ゲンナジー・イリイン

婚約者の過去の恋人:草刈民代(22,23)/湯川麻美子(24)

友人:高山優,根岸正信
友人たち:鹿野沙絵子,中島郁美,真忠久美子,冨川直樹,冨川祐樹,佐々木淳史

この作品を見るのは,2度目(新国立は初演)。
1階席で見た日は,以前見たときと同じく,どうも盛り上らない作品だなー,と思いましたが,2階席から見たら,実に美しかったです。「泰西名画」風とでも言えばいいのかしらん,クライマックスの場面で,音楽が盛り上がり,全員が登場して動きが止まるところが,印象的。

山本さんがステキでした〜。手の差し出し方や,肩の向け方の角度が雄弁で,こんなにステキな方だったのか,と失礼ながらびっくり。(彼のロミオを見たい,と思った。)

主役のキャロラインですが,酒井さんは,終始張りつめた表情で何かに怒っているかのよう。(傾きかけた家運に? 自信に溢れた婚約者に? それとも,不甲斐ない恋人に?)
これに対して西山さんは,自分の運命を受け入れながらも恋人を思い切れない,という感じで,揺れ動く心が感じられ,たいへんリリカルでした。(彼女のジュリエットを見たい,と思った。)

まさに「過去の愛人」の草刈さんと,むしろ「捨てられた恋人」という感じだった湯川さんの違いもあり,二組のキャストの印象はかなり異なったもの。
私は,西山/湯川のほうが,感情移入できて好きでした。

イリインさんは,ロシア人という個性を生かして,いかにも「お金のある,親の選んだ婚約者」という感じ。これは,キャスティングの勝利でしょう。

それから,「友人その2」と呼べばいいのかしら,モスグリーンのドレスで,二人の逢引を見咎める役の方が,とても表現が上手で目を引かれました。(たぶん鹿野紗絵子さん)

ボブ・リングウッドの装置は美しかったですが,いったい,リラの花はどこだ???(笑)
さらに,最後に,恋人がキャロラインにリラの一枝(?)を渡すのですが,これが貧弱で・・・ううむ・・・。

 

『ライモンダ』第3幕

振付:マリウス・プティパ  演出:牧阿佐美(テリー・ウェストモーランドによる)

音楽:アレクサンドル・グラズーノフ

ライモンダ:アナスタシヤ・ゴリャーチャワ

ジャン・ド・ブリエンヌ:小嶋直也(22)/イルギス・ガリムーリン(23,24)

マズルカ:神部ゆみ子,北原亜希,千歳美香子,鳥海清子,深沢祥子,堀岡美香
チャルダッシュ:志水礼子,杉崎泉,佐藤禎徳,小林由明

グラン・パ・クラシック:遠藤睦子,斉藤希,高橋有里,高山優,中村美佳,西川貴子,真忠久美子,西山裕子(22)/大和雅美(23,24)
市川透,ゲンナーディ・イリイン,奥田慎也,貝川鐵夫,高木裕次,冨川直樹,冨川祐樹,山口章

ヴァリエーション:西川貴子(22)/遠藤睦子(23,24)

パ・ド・カトル:奥田慎也,高木裕次,富川祐樹,山口章

パ・ド・トロワ:高山優,中村美佳,遠藤睦子(22,23)/高橋有里(24)

 

どこかで見たような装置と衣装だなあ,と思ったら,牧バレエからの借り物でした。あら,がっかり。
おまけに,主役が出てくるのが遅いので,小嶋さんが踊った初日は待ちくたびれてしまったわ。

主役と8組のカップル(グラン・パ・クラシック)での大リフトが,見応えがありました。
これだけ白いタイツが似合って,これだけリフトを見せられる男性コール・ド(半分は,ソリストの方ですが)が揃うようになったのか,と感心。
中でも奥田慎也さんが,終始にこやかにいきいきと踊っていて,ハンガリー風のポーズと動きも板についていて,チャーミング♪

しかし,男性4人のパ・ド・カトルはキャスティングの失敗では? もっときれいに垂直跳躍2回転(トゥール・ザン・レールでしたっけ?)をできる人を揃えてほしかった。(なぜ,市川さんかイリインさんを出さないのだ? 8人の中には入っているのに??)
あ,キャスティングの失敗と言えば,ハンガリー王の貫禄不足もいささか・・・。

ボリショイからのゲスト,ゴリャーチャワさんは・・・上手な,安心して見ていられるバレリーナで,新国立劇場の主役として不足があるとは言いませんが・・・ゲストとして来てもらってよかったわ,と思えるだけの輝きは,感じられませんでした。まあ,私が,ゲストよりも劇場のダンサーを見たい観客だということもあるとは思うけれど・・・。
小嶋ファンとしては,ほっそりしていないのがたいへん不満。(よく言えば、健康的でぴちぴちしているんですけどー。)

さて,初日の私のお目当ては,初めて見る小嶋さんのジャン・ド・ブリエンヌだったのですが・・・決して軽くは見えないパートナーを迎えてのリフトは見事でしたが,それで精力を使い果たしたのでしょうか(笑),ソロは不発。いや,もちろんきれいではあるのですが,躍動感や高揚感が今ひとつで,私としては納得がいかない。(たぶん,「テーマ・・・」のところで書いたように,若干不調だったのでしょう。)
全体としては,若いパートナーをリードする誠実なナイトを見られたから,これはこれで悪くはなかったですが・・・。

あとの2日を踊ったガリムーリンさんは,たいへんな不調だったと思います。
表情がつらそうだし,ソロは,勢いをつけてなんとかこなしている感じ・・・。サポートはさすがに上手でしたし,最終日は,動きもだいぶよくなっていましたが・・・
かつて,ハンガリー風キャラクテールとダンスール・ノーブルが絶妙にブレンドされた彼のジャン・ド・ブリエンヌにステキ〜と思った記憶を持つ身には,正直言って切ないものがありました。
まだ老け込む年齢ではないと思うので,復活(?)を期待したいです。

というわけで,どうも最後の『ライモンダ』が盛り上らない公演だったのでした。

(01.11.11)

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