演出・振付: アンドレ・プロコフスキー
音楽: ジュゼッペ・ヴェルディ 編曲: ガイ・ウールフェンデン
美術・装置: アレクサンドル・ワシリエフ
指揮: 堤俊作 管弦楽:ロイヤルメトロポリタン管弦楽団
3月24日 | 3月25日 | |
ダルタニヤン | イルギス・ガリムーリン | 小嶋直也 |
コンスタンス | 岩本桂 | 柴田有紀 |
ミレディー | 草刈民代 | 田中祐子 |
アンヌ王妃 | 坂西麻美 | 平塚由紀子 |
《三銃士》ポルトス | 相羽源氏 | |
《三銃士》アトス | 根岸正信 | 西岡裕典 |
《三銃士》アラミス | 逸見智彦 | |
バッキンガム侯爵 | 佐藤崇有貴 | |
ロシュフォール | 加茂哲也 | |
リシュリュー枢機卿閣下 | 本多実男 | |
フランス国王ルイ13世陛下 | 小嶋直也 | 根岸正信 |
01年3月24日(土)
新国立劇場中劇場
何回も見ているけれど,見る度に楽しい♪
特に,ダルタニヤン+三銃士と敵の一味(7人)とのチャンバラシーン(?)が痛快だし,敵側にもユーモラスなお芝居が用意されていて,理屈抜きで楽しめます。
4人の銃士は,初演(93年)で見たときと全く同じキャスティングだったのですが,いやー,成長したなー,としみじみ感心。
ガリムーリンさんは,テクニックは当時のほうがよかったと思いますが,芝居は今のほうが上手ですし,3銃士は・・・当時は,失礼ながら「跳んで回って」だけでしたからねえ(笑)。そろって30歳を迎えようという今では,リーダー格のアトス,腕自慢でダルタニヤンの教育係のポルトス,女好きのアラミス,とそれぞれの個性も出て,楽しませてくれます。「跳んで回って」方面も皆さん格段に進歩していますし。
ダルタニヤンの恋人コンスタンスは,初演からの当たり役の岩本さん。小柄さからくる健気な感じが王妃の侍女という身分によくあっていますし,何よりとてもチャーミング。技術的にも安定して,申し分ありません。
アンヌ王妃の坂西さんは,牧のバレリーナの中ではテクニックが強くないようで,主役級は踊っていないのですが,長身で首がほっそりと長く,ステキな方。初役(たぶん)のアンヌ王妃は,「王妃」としての華は少々足りなかったかもしれませんが,不倫の恋に悩む人妻の雰囲気が出ていて,とてもいいなあと思いました。
いつもは王妃を踊っていた草刈さんは,敵側の悪女ミレディーを,貫禄を見せながら実に楽しそうに踊っていました。
さて,小嶋さんのルイ13世陛下(初役)ですが,いやこれがもう見事なバカ殿さまで,客席には大受け。
私としては,彼の新たな一面を知って惚れ直したと言えばいいのか,あまりのことにショックだったと言えばいいのか・・・。
白塗りのお顔にソバカス,赤いおちょぼ口というメイク。首がすわらない,と言えばいいのかしら,終始首をがくがくと揺らしていますし,王妃をサポートすればお尻を突き出してしまう。短いソロでは,やはり端正さを隠し切れないので,これがまた笑える。玉座に腰を下ろすときは,椅子の肘に両手をついて身体を持ち上げて,ぴょんと跳び乗って,しかも足が床に着かないでぶらぶらしているの〜。(いやーん,うますぎ〜)
圧巻は,バナナ。(笑)
王妃の不義をくどくどと訴えるリシュリュー枢機卿に耳を貸さずに(というより,耳に入らなかったのよね),何とも幸せそうにバナナを食べながら,舞台を横切っていくのよ〜〜♪♪
こんなに笑えるルイ13世は初めてでした。というより,今までのこの役は,背の高くないダンサーの役という点で,王妃の恋人バッキンガム侯の長身と対照的ではありましたが,まあ普通の格式ばった王様だったのです。
それが,彼のコミカルな芝居によって次は何をしでかすか目を離せない役になり・・・(翌日根岸さんが踊ったときも,ついついそちらを見てしまった)・・・何より,観客にとって,王妃が同情の対象になりました。
ダルタニヤンと三銃士が王妃の軽はずみの後始末をするお話だったのが(草刈さんの華やかさと坂西さんのおとなしやかな感じとの違いもあったとは思うのですが),ダンナがこんな風では到底耐えがたいわ,典雅な侯爵に心惹かれるのは当然よ,と思え,素直に王妃を応援する気持ちになれたのは,彼の表現と存在感によるものです。(ま,そこまで深刻なテーマのあるバレエではないから,ひいき目ですわね,要するに。)
というわけで,やっぱり小嶋さんに惚れ直した舞台だったのでした♪♪♪
(02.2.1)
三銃士(牧阿佐美バレエ団)
01年3月25日(土)
新国立劇場中劇場
この日は,森田健太郎さんが東京での初ダルタニヤンを披露するはずだったのですが,腰の不調ということで,小嶋さんが登場しました。
森田さんにはたいへん失礼で申し訳ないとは思うのですが,前日に交代を知ったときから嬉しくて嬉しくて・・・。なにしろ,初演のときに負傷降板で見られず,それ以来ずーーっと見たかったから。
でも,たしか8年ぶりに踊るのだし,(森田さんは2週間前には元気に踊っていたから)急な代役らしいし,パートナーの柴田さんと組むのは初めてのはずだし,多少の不安もありました。
不安は一部当たっていて,パートナーシップはよろしくなかったです。三つあるパ・ド・ドゥは,大きなミスはないし,リフトはきちんとしているものの,例によって(ごめんねー)回転のサポートに問題があって,柴田さんの軸が傾いてしまったり,田中さんがうまく回れなかったり・・・。
コンスタンスとの愛も足りませんでしたねー。特に1幕のパ・ド・ドゥは,初恋のときめきみたいな感じが全然ないので,ううむ?・・・。最後のパ・ド・ドゥは,きれいでしたし,まずまず雰囲気もありましたが,誉めるほどのできとは言えない。
田中さんとのパ・ド・ドゥのほうは,敵の一味である彼女から首飾りを取り戻す場面で愛が必要ないのが幸いしたのか(笑),なかなか楽しかったです。
パ・ド・ドゥ以外は,踊りも演技も,すばらしかったです〜。
客観的に言えば(一応そのつもり・・・)動きの軽さとスピード感がダルタニヤンの若々しさと威勢のよさの表現になっていて,はまり役。
最初の乱闘シーンは,ダルタニヤンはまだ剣が上手ではなく,動き回って敵を撹乱する振付なので,ここが非常に見事でした。それから,王妃のラブレターを届けようとするコンスタンスがリシュリュー枢機卿の一味に襲われたのを救おうと登場するシーンのスピードは,客席がどよめいたほど。
コミカルな芝居もなかなかうまい。
最初にポルトスと決闘しようとするときの下手な剣の構え方は,それだけでかなり笑えるし,それを見かねた当のポルトスが構えを直すと,急に一人前の剣士らしくなるので,また笑える。
主観的に言えば,「もうチャーミングで〜」の一言♪
言うことを聞かないロバを前に「そうだ,こうすればいいんだ!」と角砂糖を取り出すときのマイムの愛敬や,ポルトスに決闘を申し込んで「アラミスがソロを踊ってからだ」と待たされている間,所在なげに剣をいじっているときの様子,首飾りを取り戻しに4人で出発するときに,コンスタンスが自分だけにキスしようとしたときのこの上なく嬉しそうな笑顔・・・なんてかわいいのかしら♪♪♪
そして,もちろん,凛々しくもあります。
跳躍しながらの登場シーンは颯爽としていますし,1幕で田舎出の新入りだったダルタニヤンが2幕ではリーダーシップを発揮するのがまたステキ。大詰めで,首飾りを手に,窓を破って王妃の部屋に転がり込んできて,そのまま恭しく跪くところの動きの美しさといったら,うっとり〜♪
柴田さんは,顔立ちのせいでしょうか令嬢風に見えて,コンスタンス向きではないような感じもしましたが,侍女とはいえ宮廷に仕えているのだから,まあいいのかな?
平塚さんは,美しくて艶があるし,存在感もなかなか。バッキンガム公爵とのパ・ド・ドゥは,身分の高さと恋と両方を感じさせて,よかったです。
田中さんのミレディーは,いやー,怖かったですぅぅ。登場した瞬間から,あ,これは王妃の敵だとわかるし,バッキンガム公爵の屋敷に現れ,首飾りを渡すように迫る踊りなど,勢いに負けて,ついつい首飾りを渡してしまうのではないかと思うほどの迫力。見事でした〜。
初アトスの西岡さんは,よかったとは思うのですが・・・なんとなくお芝居が根岸さんに似ていたような・・・?
ポルトス,アラミスはもちろん上手。
そういえば,アラミスのソロのときに衣装の袖口にトラブルがあったらしく,逸見さんは,途中でカラーを捨てて踊りました。それを街娘(?)の1人が拾って,「ねー,見て,見てー。アラミスさまのカラー拾っちゃった〜」という演技をしていたので,ほほー,と感心しました。当然の機転というべきなのかもしれませんが,色男アラミスの「人となり」に非常にふさわしいエピソードを作ったなー,と。
そうそう,本日の国王陛下は,首を振ったりバナナを食べたりといった奇矯な振舞(笑)はなく,人柄が良さそうな感じでしたねー。リシュリュー枢機卿にカラの宝石箱を見せられて,「予に理解できないものは見せるな」といきなりフタを閉め(枢機卿は指をはさんでしまう・・・),「ヘンだなー?ナゼかなー??」と悩んでいる様子が,とてもいい人そうでしたー。
全体としては,第1キャストの前日のほうがよかったかもしれませんが,私にとっては,この日が最高の舞台。
念願だった(そしてほとんど諦めていた)小嶋さんのダルタニヤンを見られて,しかも,想像していた以上にチャーミングで,ああ,8年間待った甲斐があったわ〜。幸せ〜〜〜♪♪♪(あ,森田くん,ごめんなさいね。)
(02.2.15)
04.01.01から