四大バレエ団競演 (プログラムA)

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01年3月2日(金)・4日(日)

東京文化会館

 

各バレエ団とも得意の演目を披露し,しかもそれぞれ傾向が違うので,たいへん楽しめる公演でした。

 

白の組曲 (東京バレエ団)

音楽:エドゥアール・ラロ 《「ナムーナ」からの抜粋》

振付:セルジュ・リファール

シェスト:矢部亮子,市来今日子,門西雅美

テーム・ヴァリエ:井脇幸江,高岸直樹(2)/木村和夫(4),後藤晴雄

セレナード:荒井祐子

ブレスト:早川恵子,武石光嗣,高橋竜太,大嶋正樹or後藤和雄,古川和則or吉田和人 (会場掲示では,一部不明)

シガレット:井脇幸江

マズルカ:木村和雄(2)/高岸直樹(4)

アダージュ:吉岡美佳,高岸直樹(2)/後藤晴雄(4)

フルート:荒井祐子

初めて見ました。

黒一色のセットの中,白のクラシック・チュチュ又はロマンチック・チュチュのバレリーナと白のブラウスに白又は黒のタイツの男性ダンサーが,ポーズをとって舞台いっぱいに並ぶという,パリ・オペラ座のデフィレを連想させる幕開きと幕切れといい,プリンシパルが入れ代わり立ち代わり登場する全体の構成といい,この作品は,そのバレエ団のファンが楽しむための作品のように思いました。

というわけで,東バも悪くはなかったのですが,もし牧がこれを上演していたら,私は3倍くらい盛り上ったような気がする。(すみません)

井脇さんがよかったです。特に優れた振付とは思えないのですが,彼女が踊ると,表情が出るなあ,と思いました。
荒井さんも軽やかでチャーミング。特に,4日は,フェッテできれいにダブルが入っていました。
しかし,なぜ,首藤さんを出さないのでしょうかねえ? 

あと,音楽が・・・なんというか,生ぬるい感じ(?)がして,私は好きではありませんー。特に,前奏曲が長くて,(皆さん拍手していましたが)私としては,早く幕を開けろよー,と強く要求したかったです。

 

シャブリエ・ダンス (牧阿佐美バレエ団)

音楽:エマニュエル・シャブリエ

演出振付:ローラン・プティ

プリンシパル:上野水香,森田健太郎,吉岡まな美,小嶋直也

ソリスト:相羽源氏,逸見智彦,正木亮羽,吉本泰久(2)/西岡裕典(4)

見るのは,2度目。

人の出入りが激しい作品(笑)で,牧の初演で見たときは,「???」と思っているうちに終わってしまったのでした。小嶋さんの役回り(?)も意味不明だわ,とか思ったりして。
要は,考えすぎだったのね。別にテーマのようなモノがあるわけではなくて,ダンサーが,軽快な音楽に乗って軽快に踊るのを,素直に楽しめばいいのよね。

ネオ・クラシックでの牧の女性コールドは,いきいきしていて,ほんとに見事♪
皆さんほっそりしていて,薄いオレンジ色のスカートつきレオタードがよく似合っているし。

白のレオタードの上野さんは,プロポーションも,身体の柔らかさも,同じ日本人とは思えないすばらしさ。でも,決して,それだけではない。「無垢な少女の無自覚な色気」みたいなモノがあって,とてもチャーミングでした。うん,プティを踊る彼女は,伸び伸びしていて,たいそう魅力的です。

森田さんは,あの・・・失礼ですが,少し太ったのではないでしょうか? いや,もともとがっちりした上半身で,だからこそ踊りも安定して,特にサポートが上手なのだとは思うのですが・・・この作品の,白いタンクトップに黒いタイツの姿だと・・・ううむ・・・見ていてちょっとキツかった・・・。
あ,踊りは,よかったと思います。上野さんとのパ・ド・ドゥは,特に。

吉岡さんも,(上野さんには及ばないものの)見事なプロポーション。女性らしい艶があって,きれいでした。

小嶋さんは,とてもよかったです〜♪
弱点であるパートナーシップをたいして要求されないパートだったこともあるとは思いますが,最近の彼は,好調で嬉しい♪♪♪

(以下ベタボメ)
たぶん一番難しいことを担当(笑)しているのに,一番軽快で,一番音楽的。衣装も似合っていて,ステキ。
プティ振付の特徴の,普通のバレエとちょっとだけ違う動きを,きちんと咀嚼して踊っていて,動きがとても明瞭。それによって振付が生きるから,そこはかとないユーモア(エスプリ?)が,全身からにじみでていました。もう,見ながら,くすくす笑いっぱなし。(でも,回りのお客さまは皆さん,真顔で見たり,感嘆したりしているの。うーん,私が変なのかしら?)
一番見事だったのは,最後の曲で,舞台上を大きく回るところ。
大きく跳んで,片手を差し出して回転して,上体をそらしてもう1回転。これの連続で舞台を一回りして,下手前まで行くのですが,音楽がスペイン風で,上体のそらし方が,なんだか「ドンキ」1幕のキトリの踊りを思わせます。で,私の目には,キトリ以上に色っぽく見えるの〜(笑)。
クラクラきているところで,にこりともしないで,フラメンコみたいなポーズで袖に入っていくのが目に入って,今度は吹き出してしまいました〜。(でも,やっぱり,回りでは,誰も笑っていないのよ。あらら,完全に怪しい観客になってしまったわ。)

 

コッペリア3幕 (東京シティ・バレエ団)

音楽:レオ・ドリーブ

原振付:サン=レオン  演出・振付:石井清子

時のワルツ:佐藤靖美,荒木美保,エムバー・ウィリス,黄凱(2)/佐藤雄基(4)

曙:津金澤千枝美

祈り:堀田麻子,北沢華子,高木糸子

戦いの踊り:穴吹淳,吉田守,山本秀典

平和の踊り:関本美奈(2)/志賀育恵(4),佐藤雄基(2)/黄凱(4)

新鮮なネオ・クラシックの3作品にはさまって,不利は免れない,とか思っていたのですが,うまくまとまっていて,特に4日は,主役2人の魅力もあって,楽しめました。(ほかのバレエ団に比べると,男性が手薄で苦労してるなー,と同情したりもしましたが。)

4日の志賀/黄ペアが,とてもチャーミング♪(2人とも,初めて見たと思います。)
志賀さんは,明るい雰囲気で「はつらつ」を絵にしたよう。見ていて元気になる踊りでした。
黄さんは,(技術的には,2日の佐藤さんのほうが安定していましたが)色白で丸顔のハンサム。小さな刺繍の花やリボンをあしらった衣装が似合うのは,たいへん貴重(笑)。
「曙」の津金澤さんが,優雅な踊りでした。

 

ウエスタン・シンフォニー (スターダンサーズ・バレエ団)

音楽:ハーシー・ケイ

振付:ジョージ・バランシン(振付指導:メリッサ・ヘイドン)

第1楽章(アレグロ):小平浩子, ベン・ヒューズ

第2楽章(アダジオ):須永リエ(2)/厚木三杏(4),西島千博(2)/李波(4)

第3楽章(スケルツォ):厚木三杏(2)/厚木彩(4),新田知洋

第4楽章(ロンド):小山久美(2)/小山恵美(4*),長瀬伸也

*小山久美の負傷による交代(会場掲示)

バランシンの名人芸! スタダンもお見事!
このバレエ団のダンサーは,男女とも色気がありますねえ。

見たのは2度目ですが,今回特に楽しかったのが,2楽章と4楽章。

2楽章は,2日は,西島さんのキザでやに下がった色男ぶりに脱帽。ピンクのスカーフが似合う日本人男性って,スゴイと思う・・・(笑)。
4日は,最後に厚木さんがオデットみたいにポアントで去っていくところが,クールビューティーの典型タイプであるだけに,とても笑えましたー。

4楽章は,「のみの夫婦」的な二人の取り合わせの妙が楽しい。小山姉妹の「姐御」そのものの表現も,長瀬さんのキレのいい踊りも,お見事。
最後は,4組の主役もコール・ドも総登場。舞台いっぱいに広がって,踊りまくる中で幕が下りました。
う〜ん,盛り上りました〜。

(01.12.1)

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四大バレエ団競演 (プログラムB)

01年03月10日(土)・11日(日)

東京文化会館

 

全体としては,Aプロに比べて今一つでした。

その原因は,なんと言っても,東京バレエ団の新作。
バレエ団の公演であれば,こういう失敗作(だと思う。)であっても,意欲を買うべきでしょうし,踊りこんでいない上演も,「初演を見られた」ことで補いがつくと思うのですが,かりにも「四大バレエ団競演」と銘打った公演に,海のものとも山のものともわからない新作で臨むというのは・・・ううむ・・・率直に言って,東京バレエ団の見識を疑いますね,私は。

 

ステップテクスト (スターダンサーズ・バレエ団)

音楽:J.S.バッハ 《シャコンヌ》

振付・舞台装置・照明・衣装:ウィリアム・フォーサイス (振付指導:アントニー・リッツィ)

小山恵美,ベン・ヒューズ,李波,西島千博

開演時間3分くらい前に,幕が上がり,客席の灯りが落ちて,舞台上のセットと照明が・・・。おお,そうか,フォーサイスだものね。
定刻になったとたん,奥のセットの板(?)の後ろから,李波さんが,すたすたと歩いて出てくる・・・ちょっとだけ踊って,また,すたすたと板の後ろに・・・。ああ,フォーサイスだわぁ(笑)。

という場面に始まり,立派なフォーサイス作品の上演を見せてもらいました。でも,4人しか出ないのがちょっと寂しかったかな。(私は,物量作戦の作品が好き)
李さんが男っぽくて,かっこよかったです。対照的に西島さんは,ほほー,フォーサイスを踊っても軟派になるのねえ。(←悪いと言っているわけではない。)

 

フィジカル・ノイズ (東京シティ・バレエ団)

音楽:ハイブリッド フェティッシュ・パーク

振付・音楽構成:中島伸欣 

中村真理子(10)/高野知美(11),堀内充(10)/穴吹淳(11)

気に入りました。
黒い幕の使い方が面白いし(床から生える脚,宙に浮かぶ生首の群れ・・・),照明も工夫してあるし,最初が団体で,中ごろに男女のデュエットがあって,最後はまた皆で踊る,というオーソドックスな構成もよかったです。

デュエットは,男性が横たわって女性の股間から手を出すとか,かなり性的な匂いのする振付で,10日の2人が魅力的でした。中村さん(初めて認識した方)は,ロングヘアを崩した感じのアップにしていて,なかなか色っぽい。堀内さんは,動きにキレがあって,やはり上手。

「密林の奥深くでの太古の秘儀」とか「暗闇の中に潜む不気味なイキモノ」みたいな作品だなあ,と思ったのですが,プログラムを読むと全然違うみたい(笑)。

 

カミング・トゥギャザー (牧阿佐美バレエ団)

音楽:フレデリック・ジェフスキー

演出振付・装置・衣装:ナチョ・デュアト (振付指導:ヨーコ・タイラ)

大畠律子,佐々木想美,岩本桂,志賀三佐枝,田中祐子,平塚由紀子(10)/吉岡まな美(11),佐藤朱実,橋本尚美
イルギス・ガリムーリン,小嶋直也,森田健太郎,相羽源氏,逸見智彦,正木亮羽,塚田渉,保坂A.慶


下手前方に,後ろ向きに立つ男性ダンサー。人差し指を頭に・・・。「I THINK・・・」という朗読から音楽が始まり,黒のタンクトップ(胸にアルファベット)とスラックスの男性ダンサーが,次々に駆け入ってきて踊り始める。最初の1人(ガリムーリン)も振り向き,踊りに加わる。激しい動きのダンスが続く。その後ろを,照明燈を持ってゆっくりと横切るダンサー(森田。素肌に黒のジャケット)。赤や紫のタンクトップに黒いタイツの女性ダンサー5人も次々に舞台に駆け入り,デュエット,2組,3組のシンクロなどダンスが続く。

突然,金色の中幕が降りる。赤,藤色,白のロングドレスの女性3人が登場して,幕の前で踊る。床に転がったり,互いを跳び越したり,「見ざる,言わざる,聞かざる」のような振りもある。(政治的な意味があるのか?)

今度は,金の幕が落ちて,その奥には,黒地に銀模様のタンクトップの女性ダンサー(志賀)と男性3人(ガリムーリン,小嶋,相羽)が現れる。3人がかりのリフトなど,いっそうのスピード感のパ・ド・カトル。

多少緩やかになった音楽で,赤いロングドレスの女性ダンサー(佐々木)と男性ダンサー(森田)が踊る。2人のダンサーの持つ照明燈だけに照らされてのパ・ド・ドゥ。床の上での動きが多く,かなりセクシュアルな印象。

再び,めまぐるしくダンサーが出入りする場面。跳んだり,転がったり,走ったり,リフトしたり。金色のボールと円盤が小道具として登場し,ダンサーの間を行き来する。ロングドレスの女性たちも裾を翻しながら,タイツ姿のダンサーと同じように激しく踊る。音楽がいっそう盛り上る。

ついに,全員が舞台前方にそろい,男女交互に横一列に並ぶ。男性の衣装のアルファベットは,「 I T H I N K !」という文字列に。そして,男性は前方に倒れて,床にキッス。女性は,踵を返して後方に歩み出す・・・暗転・・・。

大好き♪♪
初めて見たときほどの衝撃はないものの,音楽はいいし,ダンスもスピード感があって,かっこいい!

踊れるほうから男女8人ずつそろえました,という人選も気持ちいいわー。
特に,女性陣のシャープさが見事。中でも,志賀さんの動きの鋭さは男性以上と思うほど。凄みがあるというか,色気があるというか,うーん,かっこいい〜。11日に踊った吉岡さんもステキ。
小嶋さんは,跳躍のキレと走り方の美しさが一際。黒のタンクトップから出ている肩から上腕部の線が男っぽくて,とても好き♪

 

SON DE MI SON 〜カリブ,わが心のリズム〜 (東京バレエ団)

音楽:クロード・ドビュッシー エルネスト・レクオーナ カリブの民俗音楽

振付:アルベルト・アロンソ,ソニア・アロンソ

男1:高岸直樹  女:井脇幸江  男2:木村和夫  仮面の男:後藤晴雄

「4つのキューバのリズムをつなぎあわせたバレエ」というコトですが,なんと言ったらいいか・・・ううむ・・・なんじゃ,こりゃ?(笑)

いきなり上半身裸の男性8人のシーンで始まり,役名は「仮面の男」とかっこいいが,実は案山子のようなかぶりもので,鈴までついている後藤晴雄さんとか,お祭りの仮装行列のような場面とか,きれいだけれど唐突感は否めない,白のチュチュに扇を手にした井脇さんのソロとか,引き続いて,まっとうな衣装の木村さんとのパ・ド・ドゥが始まると後ろに現れるカップルの女性はレオタード姿だとか,サルサらしいが盛り上りに欠ける群舞とか・・・困惑・・・。

全体の主役(狂言回し?)は高岸さんみたいなのですが,この衣装がまた・・・。
古い時代の宗教指導者のような役割らしく,ボレロ+バミューダ+腰ミノで,しかもこれが赤い布に黄色でアクセントの模様とか縁取りがついているというもの。まあ,この日登場した日本を代表する男性ダンサーの面々の中に,彼以上にこの衣装を着こなせる人がいるとは思えないから,個性を生かしたと言えないでもないですが・・・。
でも・・・ここまで3つの作品が,男性の衣装が全部黒系で,今日は男の子が皆かっこよく見えるなあ,と喜んでいただけに・・・最後のコレは・・・。(とほほ)

(01.12.5)

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