くるみ割り人形(新国立劇場バレエ団)

サイト内検索

00年一覧表に戻る 表紙に戻る

振付:マリウス・プティパ, レフ・イワーノフ
台本:マリウス・プティパ(E.T.ホフマンの童話による)
改定振付:ワシーリー・ワイノーネン
演出:ガブリエラ・コームレワ

音楽:ピョートル・チャイコフスキー

舞台美術・衣装:シモン・ヴィルサラーゼ
照明:ウラジーミル・ルカセーヴィチ

指揮:渡邊一正  管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
児童合唱:東京少年少女合唱隊

    12月23日   12月24日
マーシャ 酒井はな 宮内真理子
王子 イルギス・ガリムーリン 小嶋直也
ドロッセルマイヤー マシモ・アクリ
シュタリバウム 石井四郎  
シュタリバウム夫人 堀岡美香  
フランツ 高山優  
道化 根岸正信   小林由明
人形 高橋有里  中村美佳
黒人 小林由明 山本隆之
おじいさん 佐藤禎徳 
おばあさん 田中りゑ  
ねずみの王様 ゲンナーディ・イリイン  
くるみ割り人形 伊藤隆仁
人形たち 根岸正信,高橋有里,中村美佳 小林由明,高橋有里,中村美佳
雪の精(ソリスト) 高山優,西山裕子 遠藤睦子,鶴谷美穂
スペイン 楠元郁子,市川透  楠元郁子,イルギス・ガリムーリン
東洋 湯川麻美子 大森結城
中国 遠藤睦子,金森穣
トレパック 高山優,西山裕子,ゲンナーディ・イリイン   高山優,西山裕子,市川透
パ・ド・トロワ 高橋有里,中村美佳,根岸正信
ばらのワルツ 大森結城,川村真樹,西川貴子,前田新奈,小嶋直也,佐藤崇有貴,冨川祐樹,山本隆之 鹿野沙絵子,西川貴子,前田新奈,湯川麻美子,ゲンナーディ・イリイン,佐藤崇有貴,冨川祐樹,山本隆之

 

00年12月23日(土)

新国立劇場

 

新国立劇場の『くるみ』上演は3回目で,私が見るのは2度目でした。
帰ったばかりのキーロフと同じ装置・衣裳。振付・演出もほとんど同じのワイノーネン版での上演です。

 

酒井さんのマーシャは,好奇心いっぱい,とても元気のいい女の子。
1幕は,パーティーにはしゃいでいる感じですし,人形劇はお母さんの膝の上で見ているのですが,盛り上がって王子を応援していました。
2幕では逃げようとする先々にねずみがでてくるところのタイミングが見事。いつも踊っている劇場で,十分にリハーサルをして公演に臨んでいることがよくわかります。(新国立は,旅興行の海外バレエ団とも自前の劇場がないほかの日本のバレエ団とも違って,こういう細かいところがとてもよく準備されているんですよね。)
ネズミと人形たちの戦いの場面では,怖いことは怖いのだけれど,こういう経験はワクワクもする! という感じで,とてもいきいきとしていますし,雪の場面では王子が行こうと促すのに,もう少しここにいたいと駄々をこねる。3幕冒頭の蝶々たちとはいっしょに遊びたいようでしたし,お菓子の国(なのかな?)に着くと動かない人形たちを触ってみたりして,かなり活発なお子さんですねー。
思わずにこにこしてしまうようなチャーミングなマーシャでした。

もちろん,グラン・パ・ド・ドゥでは子どもではなく,そこまでの溌剌とした感じを保ちながら,プリマらしく堂々とした踊りを見せていました。

 

ガリムーリンさんはこの酒井さんの表現を反映したのか,かなり年の離れた頼もしいお兄さんのような王子でした。安心して見られるサポートは見事でしたし,マナーも王子らしいですが,踊りは,彼にしては少々重かったかも。

それからですねー,どうしても彼に言っておきたいんだけど・・・

コウモリに襲われたとき,マーシャを追い越して,先に舞台から逃げ出してはいかんですっ!!

もちろん,跳躍が大きすぎて勢いがありすぎたからそうなってしまったのはわかるのですが,絶対に,あれはマズイと思いますです。
だって,ワイノーネン版のくるみ割り人形って,ネズミたちとの闘いでかなり情けないじゃないですか。(部下のおもちゃ軍団は,ネズミたちの反撃にあうとすぐバンザイして逃げ出しちゃうし) しかも,くるみ割り人形と王子は別のダンサーが踊るから,労せずしておいしいトコだけさらってしまう役。グラン・パ・ド・ドゥは4人のカヴァリエがリフトを分担してくれるし。
だから,コウモリとのシーンは,いわば唯一王子が凛々しさを見せられる場面なのよ。ああ,それなのに,ガリムーリン王子ったら,もう・・・(泣)。

 

1幕の男の子たちと2幕の戦闘シーンのおもちゃの兵隊たちがとてもよかったです〜。
キーロフで見ると,女性が無理して演じている感じがするのですが,日本人バレリーナが踊ると自然で溌剌としていてかわいい♪ 

一方,1幕の大人たちと3幕のばらのワルツ,特に男性は,やはり衣裳が似合っていませんですねえ。キーロフ版を輸入するからといって,何も衣裳やカツラまで同じにしなくても・・・ううむ・・・。その中で,佐藤崇有貴さんだけは金髪ワカメヘアが似合っていたので,いたく感心しました。
なお,この日は小嶋さんもばらのワルツ(とグラン・パ・ド・ドゥのカヴァリエ)で登場。珍しい白いカツラ姿が見られて楽しかったです。(・・・さすがに,似合うとかステキなどとは言えんよなあ。)

雪の場面は整然としており,ソリストの高山さんと西山さんもきれい。3階席を選んだ甲斐がありました。(足音が大きくないのもよかったわ・・・笑)
キーロフと違って,この場面でマーシャと王子が登場しないのはちょっと不満かな。

3幕キャラクター・ダンスは,左右木さんの退団と奥田さんの故障休演のせいか,女性上位の印象。
中国の遠藤さんは軽快で愛敬があり,パ・ド・トロワの高橋さん,中村さんは人形のように愛らしかったです。

 

さすがは年末の『くるみ』,それも土曜日だけあって,全席売り切れ。
キーロフだとあきてしまいがちな1幕が,酒井さんのマーシャと高山さん率いる男の子たちのおかげで楽しめたこともあり,なかなか楽しい舞台でした。

(02.6.23)

サイト内検索

上に戻る 00年一覧表に戻る 表紙に戻る


くるみ割り人形(新国立劇場バレ団)

00年12月24日(日) 

新国立劇場

 

とてもよかったです〜。
宮内/小嶋という組み合わせは,2人とも「品はいいが熱くはない」タイプなので,濃厚な色恋沙汰には向かないと思いますが,こういう作品では申し分ありません。

 

宮内さんの可憐な容姿はマーシャにぴったり。
「ここの場面のこの表現に特徴があった」といったことはないのですが(うーむ,感想が書きにくい・・・),彼女の場合,そんなことは必要ないんですよね。「かわいい〜」と声をあげたくなる感じで,幸せな家庭の夢見るお嬢さんの雰囲気。たいへんマーシャらしいマーシャでした。

この日は1階の前のほうで見ていたのですが,やっぱりパーティーの子どもたちがかわいくていいです。昨日は男の子たちの溌剌ぶりが印象的でしたが,女の子たちもたいへん愛らしい。
これは,日本人ダンサーは全般に年齢より子どもっぽく見えるという問題点と裏表の話とも言えますから,無邪気に喜びすぎてもいけないのかもしれませんが,それは後から考えたこと。見ているときは,とても楽しかったです♪
ドロッセルマイヤーは,癖のない役づくりで,子どもたちに人気のある楽しいおじさん。家族連れで見るのに適切な感じでした。
そうそう,この日は新たな発見が。おじいさんとおばあさんのゆっくりした踊りのときに,後ろのほうにもう2組の老夫婦が! 楽しそうに(うらやましそうに?)おばあさんたちの踊りを見ていました。はてな,いつから舞台の上にいたのでしょう??

 

2幕の戦いのシーンもなかなか楽しめました。
勇壮な音楽に乗せて繰り広げられる,おもちゃの兵隊たちの情けない奮闘ぶりが,とってもキュート。
宮内さんのマーシャはかなりおっとりしていて,悪く言えば演技が足りないように思いますが,何しろこのプロダクションの戦闘シーンは迫力というものが徹底的に欠けているので,お嬢さま風なのも決して悪くなかったです。
そういえば,この幕の始まり,1幕の人形と道化に加えてもう1体の人形がいたのが珍しかったです。(というか,キーロフと違う。)水色の衣裳で金髪のおかっぱ。ピンクの人形のボーイフレンドなのでしょうか? 戦闘の役に立たないという意味では他の人形たちと変わらないので,何のためにいたのやら??

そして暗転。
ほんとうに真っ暗になってダンサーが入れ替わるのが舞台間近の席でも全く見えない劇場機構に感心。
さあ,明るくなるとそこには王子がっ♪♪ 
ですが・・・この瞬間に,会場がざわめくようなスター性や容姿は,残念ながら小嶋さんにはないのよね・・・。(あ,すみません。前日の王子と比較しての話ではないです。というか,キーロフでのルジマトフ王子と比べてしまいましたー。)

踊り出してからは,たいへんステキでした。踊りはもちろん,控えめな立居振舞いも美しいです〜。
乙女に近い少女の趣のマーシャとのパ・ド・ドゥは,プラトニックな恋の雰囲気。ボリショイ風の(?)高いリフトからマーシャが降りるときに,王子の肩に乗る感じでいったん動きが止まり,2人で微笑をかわすところにはうっとり〜。

雪の場面は・・・踊りはさておき,あのヘルメット型帽子(?)は,近くで見ると美しくないなー,と思いました。

 

3幕は,まず,前日に逃げ足の速い王子さまを見てしまったコウモリのシーンですが・・・うふふ,小嶋王子には100点満点の120点を差し上げます♪

マーシャを後ろにかばうところは,ただ両手を広げるのではなくて,片手を後ろに回して大事なお姫様を気遣う様子を見せる。(ね,ちょっといいでしょう?)
そして,マーシャを逃がしてから,舞台の端でいったん両手を広げて不気味なコウモリたちを押しとどめて,さっと振り向いて引っ込んでいくのよ〜♪♪ (きゃあああ)
最後追い払うところは,跳躍2つで舞台の端から端まで行ってしまいました〜。その大きさ,美しさ,清潔感♪♪♪ (もう一度,きゃあああ)

各国の踊りでは,大森さんの雰囲気のある「東洋」が印象的。この踊りは,ちょっと長すぎるなあと感じることが多いのですが,この日は,すっかり見入ってしまいました。
女性上位の印象は全体には変わらないものの,トレパックの市川さんはコサックダンス風の振りにキレがあってよかったです。

ばらのワルツは・・・近くで見るとますます,ピンクと白のカツラは日本人には似合わないなー,と・・・。あ,佐藤さんは白いカツラもお似合い。(顔立ちがはっきりしていることもあるのでしょうが,上半身ががっちりしているのもいいのでしょうね。)
全体としては,ふんわりした雰囲気があってきれいでしたから,楽しめました。

グラン・パ・ド・ドゥは,2人とも技術的に安定していますし,組むときも離れて踊るときも,動きがよく合っていました。(ううむ・・・あの『ラ・バヤデール』はなんだったのだろうか???) 
それにしても,カヴァリエたちが加わって見せるこのパ・ド・ドゥは,ほんとうに少女の憧れの世界ですよねー。宮内さんの愛らしい美しさは,特にこの演出にあっているように思いました。
小嶋さんはカヴァリエたちより小柄ですが,動きやポーズの美しさが際立っており,これぞ主役の余裕と貫禄。新国立の舞台の広さに対して3幕のセットは少し大きすぎる(多すぎる?)ようで,前日のガリムーリンさんがコーダのときにマネージュの勢いを落として調節しているように見えたので,この部分はちょっと心配モードで見ていたのですが,う〜む,さすがは座付きのプリンシパル,舞台をいっぱいに使って効果的に見せていました。お見事♪

 

この日も会場は満席。主役2人の品のいい美しさが印象的ないい舞台でした。
お気に入りのバレエ団とお気に入りのダンサーで,年末最後にふさわしいステキな舞台が見られて,うふふ,とっても幸せ〜♪

(02.6.28)

サイト内検索

この日の文頭に戻る 上に戻る 00年一覧表に戻る 表紙に戻る

04.01.01から