00年8月5日(土)
東京文化会館
指揮: ミッシェル・ケヴァル 管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ: 浅野菜生子, 高岸浩子
「なんじゃ,こりゃ?」というのもなく,「もう,すばらしくて〜」というのもなく,淡々と進む立派なガラ公演でした。
最近はガラ公演も多いし,メンバー的にも,NBS主催公演でおなじみの皆さんの顔合わせという感じが強いですし,まあ,こんなものでしょうか。
チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ
振付:ジョージ・バランシーン 音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
バルバラ・コホウトコヴァ, ロベルト・ボッレ
コホウトコヴァは,軽やかで,上半身がきれいな正統派のバレリーナ。若々しくてチャーミング♪
ミラノ・スカラ座日本公演『ジゼル』客演を前にしての登場ですが,う〜む,さすがNBSさんの目は確かですねー。
ボッレは,3年前よりは進歩していたと思いますし,長身でハンサムなのが結構でした。
アニュータ
振付: ウラジーミル・ワシーリエフ 音楽: ワレリー・ガヴリーリン
斎藤友佳理, セルゲイ・フィーリン
1回しか全幕を見たことがないので定かではありませんが,回想の中での恋人とのシーンだと思います。
斎藤友佳理は,91年に出演したときよりも堂々として見えましたが・・・顔の表情に比べて身体の表現が足りないと思いました。
フィーリンは雰囲気はよかったですが,衣裳が似合っていなかったような・・・。ロシア風なのになぜかしら?
シェリ
振付:ローラン・プティ 音楽:フランシス・プーランク
カルラ・フラッチ, マッシモ・ムッル
フラッチは,年齢を考えると驚異的な美しさ。
ムッルがいきなり脱いで,つなぎの下着になったので,非常に驚きました。ああいう下着の形というのは,欧米ではポピュラーなのであろうか??
作品としては,長すぎてかなり飽きました。抜粋のし方が悪いのか,振付がつまらないのか・・・?
黒鳥のパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ 音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
ガリーナ・ステパネンコ, アンドレイ・ウヴァーロフ
ステパネンコは,回転技の超名人という持ち味を十分生かして,細かいところもアクセントを付けて,強い黒鳥を見事に表現していました。
王子を誘惑するとか欺くというのではなく,ねじ伏せるというか,有無を言わせず結婚式場に引っ張っていくというか・・・。
個人的には好きではないのですが,脱帽せざるを得ない。
名演だったと思います。
ウヴァーロフは,必然的に影が薄い(笑)。跳躍の着地の度に大きな音がするので,とても悲しかったなあ・・・。
(20分休憩)
白鳥の湖 第2幕より
振付:レフ・イワーノフ 音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
アニエス・ルテスチュ, ジョゼ・マルティネス, 東京バレエ団
いきなり,王子のソロで始まったのでびっくり。脚を細かく動かす振り(ロン・ド・ジャンブ?)が多いので,ヌレエフ振付ではないかと思います。その後,グラン・アダージオ,4羽の白鳥,再び王子のソロ,オデットのヴァリアシオン,コーダと別れの場という順で上演されました。王子が,落ちていた白鳥の羽を拾って幕になるのが印象的。
ルテスチュは優美でしたが,美しい女性であって,白鳥の神秘性とか詩情は今ひとつ。
マルティネスもきれいですが,少々細すぎで王子としては風格不足(衣裳のせいもあったかも)。それと,彼も跳躍の着地音が大きすぎますね。
東京バレエ団の出演は,このペアに関しては大きなマイナス。体格が違いすぎて・・・失礼ながら,ガリバー旅行記を想起してしまった・・・。
なお,王子のソロの振付について休憩時間に質問したところ,「イワーノフという方の振付ではないでしょうか?」という回答でした。ううむ・・・たしかにそう書いてあるけどさー(笑)。
バーンスタイン・ダンス
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:レナード・バーンスタイン
ヘザー・ユルゲンセン, イリ・ブベニチェク, オットー・ブベニチェク
黄色いランニングに黒いズボンのイリが登場。ちょっと陽気に1曲踊る。
次に,上半身裸,白いズボンのオットー登場。こちらのほうがかっこいい踊り。ランニングを脱いで,まねっこしてみるイリ。同じ振りで,そっくりの容姿だけれど,ちょっとニュアンスの違いがある双子効果が面白かったです。
3曲目にして,やっとユルゲンセンが登場。衣装がちょっと妙な感じでしたが,きれいでした。
ちょっとユーモアがあって,ドラマもあって,まずまず楽しかったです。
なお,イリとオットーの違いについては,これも休憩時間に質問して教えてもらいました。こちらは明快な回答でしたわ。(ありがとうございます〜)
カルメン
振付:ローラン・プティ 音楽:ジョルジュ・ビゼー
オレリー・デュポン, マニュエル・ルグリ
ルグリのソロはさすが。かなりおじさんが入っていて,ちょっとホセとは違うような気もしましたが,渋い味わいがあってかっこよかったです。
その間,ベッドに横たわるデュポンは輝くばかりの美しさ。
でも,彼女は,踊り出してからは,きれいなだけで少々つまらなかったです。妖艶さとか気の強さとか,何かもう少し味付けがほしかったかも。
これを見るルグリは,タバコの吸いっぷりに品がないのが,おお,すばらしい♪ 人差し指と中指の間にはさむのではなくて,親指と人差し指で持つことによって,労働者階級らしさを現しておりました。
全体の印象としては・・・こんなコトを言ってもしかたないとはわかっているのですが・・・ルディエール抜きのルグリって,私にとっては単なるとても上手なダンサーなんだ,と改めて思い知らされた感じでした。(見事なんだけど,こちらを熱くしてくれないのよ)
アダージェット
振付:モーリス・ベジャール 音楽:グスタフ・マーラー
ジル・ロマン
優れたダンサーによる優れた作品の上演。感動的。
いいものは,何回見てもいいですなー♪
(休憩10分)
椿姫
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
アレッサンドラ・フェリ, ウラジーミル・マラーホフ
フェリは調子が悪かったのではないでしょうか。(妊娠中だったせいもあるのかしらん)
マラーホフはすばらしかったです。
幕が開いたとき上手のカウチにもたれかかっている姿が「傷心の美青年」を絵に描いたようで,それだけで,胸がしめつけられるようでした。
そして,そっと入ってきて立ち尽くすマルグリットに気付いて,ゆっくりと立ち上がり,軽くため息をついて,歩み寄るときの美しさ。何をしにきたのかと訝しみながら(あるいは,幻覚かと疑いながら?)彼女が黒いベールをはずすのを手伝うときの痛々しい優雅さ。
踊りだしてからの切迫感もすごい。
彼はサポートに関しては名人というほどではないと思いますし,フェリはこの作品は初めてだったそうで,多少パートナリングに不安定さがありました。でも,それがかえってよかったのでしょうか,リフトに危うさや懸命さが感じられるのがアルマンの狂おしい心情の表現になっていて,見ていて息をするのを忘れてしまいそうな迫力でした。途中でマルグリットのドレスを脱がせる動きがあるのですが,その性急さも印象的。
愛した人に裏切られて,でも,彼女を忘れられなくて,その彼女が目の前にいて,愛しているのか憎んでいるのか自分でわからない。そんな内心の嵐の表出・・・。
ぜひ,彼で全幕を見たい。そう思いました。
でも,でも,それだけに・・・ああもう,ワロージャったら,この場面でふわっと跳んじゃダメじゃないのぉ!!!(泣)
アルキヴィア
振付: アナトリー・ヤノフスキー 音楽:ルイス・デルガード
(プログラムには,逆に表記されていましたが,間違いと思われます)
アニエス・ルテステュ, ジョゼ・マルティネス
暗い中で踊られるかっこいいモダン。プログラムによると,マルティネスは「この作品は現代のスペインを表現している」と述べているそうですが,その辺りは全然理解できませーん。
特に,最初のマルティネスのソロがよかったです。シャープで,ちょっと翳があって,何かドラマがありそうで,とってもすてきでした。(王子よりずっと好きだわ〜)
以前見たことあるような? と気になって調べたら,96年のルグリとルディエールを中心とするガラで見ていました。
ヌアージュ
振付:イリ・キリアン 音楽:クロード・ドビュッシー
バルボラ・コホウトコヴァ, ロベルト・ボッレ
悪くはなかったですが,特によくもなかったです。この催しの定番演目の一つなので,もっとすてきなカップルで見たことがあるしねえ,という感じ。
二人とも若いから,雰囲気を出すにはまだ早いのかもしれませんねー。
三人姉妹
振付:ケネス・マクミラン 音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
シルヴィ・ギエム, ニコラ・ル・リッシュ
ギエムは「許されない恋」の雰囲気がよく出ていて,大人の女でとーってもよかったのですが,ル・リッシュがちょっとぎこちないというか・・・。登場したときは,軍服とおヒゲが似合っていて期待したのですが,ううむ・・・中年の不倫はまだ早いのね,きっと。
彼はこのパ・ド・ドゥはこのとき初めて踊ったそうで,そのせいもあったのか,英ロイヤルへの移籍直後のイレク・ムハメドフに当てて振り付けられている跳躍や回転も,迫力が今ひとつでした。
それにしても,以前作品全体を見たときも思ったのですが,このパ・ド・ドゥ,最後の別れが唐突すぎるのではないでしょうかねえ?
ドン・キホーテ
振付:マリウス・プティパ 音楽:ルードヴィヒ・ミンクス
パロマ・ヘレーラ, ホセ・カレーニョ
ううむ・・・あまりよくなかったです。
ヘレーラは,テクニックはあるのでしょうが,踊りが美しくないですねえ。それと,ぐらつきながら長いバランスを見せられても困るんですけどー。
カレーニョは端正でステキなのですが,こういうお祭りでトリをとるときに必要な「俺がっ,俺がっっ」という感じがないのが少々物足りない。あと,胸が大きく開いて白いシャツが粗末に見える衣裳を何とかしてほしかったなー。
(03.5.11)
第9回世界バレエフェスティバル Bプログラム
00年8月8日(火)
東京文化会館
指揮: ミッシェル・ケヴァル 管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
Aプロより楽しめました。
たぶん,ギエムとマラーホフとルグリが2演目ずつ踊ってくれたからでしょう。
チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ
振付:ジョージ・バランシーン 音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
オレリー・デュポン, マニュエル・ルグリ
「我こそは,世界一のダンサー」,「私は,オペラ座のエトワール」,「(二人で声をそろえて)実力を見せてあげましょう!」と言わんばかりの,気迫に満ちた上演でした。
世界に冠たるダンサーが一堂に会する催しにふさわしかったとも言えましょうが,この作品に必要な清新さに欠けたように思えて,私は好きになれませんでした。
踊り自体は見事。
マーラーの交響曲第3番第4楽章 “夜”
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:グスタフ・マーラー
ヘザー・ユルゲンセン, イリ・ブベニチェク, オットー・ブベニチェク
無音の中で踊りが始まったのが私向きでなかったらしく,楽しめませんでした。
私,ノイマイヤーはとても好きだけれど,全幕では,ストーリーのあるバレエしか見たことないの。彼の作品には,交響曲に振り付けた長大なモノが多数あるらしいのですが,そっちはもしかすると苦手かもしれないなー。
フー・ケアーズ?
振付:ジョージ・バランシーン 音楽:ジョージ・ガーシュウィン
パロマ・ヘレーラ, ホセ・カレーニョ
デュエット1曲だけでした。
えーと・・・もう少し都会的に垢抜けてほしいような・・・。
グラン・パ・クラシック
振付:ヴィクトール・グゾフスキー 音楽:ダニエル・オーベール
アニエス・ルテステュ, ジョゼ・マルティネス
よかったです。
ルテスチュはフランス人形(←古い?)のように美しかったですし,マルティネスは衣裳もよかったのかAプロの『白鳥』と違って細すぎる感じがなく,スレンダーですてきなダンスール・ノーブル。
(休憩 10分)
薔薇の精
振付:ミハイル・フォーキン 音楽:カール・マリア・フォン・ウェーバー
カルラ・フラッチ, ウラジーミル・マラーホフ
マラーホフの趣味のいい衣裳に感嘆。
上半身がオールドローズで下にいくほど白へとぼかしが入る色遣いといい,衣装と髪の控えめな薔薇の花弁といい,さすがだわ〜。特に,頭の「お帽子状態」を避けた賢明さに拍手♪
表現は少々清純派すぎるように思いましたが,たいへん美しかったので不問に付すことにします。
フラッチは,最初のうち,あの少女そのものの衣装では,いくら何でも苦しいよなあ,と思ったのですが,見ているうちに,違和感がなくなってきて,薔薇の精が去ったあと,薔薇の残り香に浸る場面などは,とっても優雅ですてきでした〜♪
カルメン
振付:ローラン・プティ 音楽:ジョルジュ・ビゼー
アレッサンドラ・フェリ, マッシモ・ムッル
ムッルは伊達男が似合いますなー。
Aプロの2人よりはるかに「らしかった」ですが,踊りとしてはデュポン/ルグリのほうがずっとよかったような。
あのー,ところで,この作品,世界中の名ダンサーがこぞって踊るほどの名作なのでしょうか? どなたで見ても盛り上がれないのですが・・・。単に私の好みでないだけですかね?
ライモンダ
振付:マリウス・プティパ 音楽:アレクサンドル・グラズノフ
バルボラ・コホウトコヴァ, ロベルト・ボッレ
コホウトコヴァはいいねえ♪ 愛らしいし,プリマらしさもあって。
ボッレは,特に不満はないです。
海賊
振付:マリウス・プティパ 音楽:リッカルド・ドリゴ
シルヴィ・ギエム, ニコラ・ル・リッシュ
ギエムが「海賊」を選んだと知ったときから,何か考えがあるのではないかと思っていましたが,やっぱりやってくれましたわ。
黒いチュチュで登場して,なんて言えばいいのかしら・・・そうねえ,前回見せてもらった赤いボブ・ヘアの『グラン・パ・クラシック』の系列の表現。本来の『海賊』のメドーラらしさなんか微塵もなくて,こういう見慣れたパ・ド・ドゥでも現代感覚を持ち込めるのを立証して差し上げましょう,換骨奪胎してみせましょう,という感じ。
技術的にももちろん見事。グラン・フェッテは,上手奥から下手中央に斜めに16回転(8小節)。あっと驚く90度の方向転換で,上手前に向けて,16回転。おおっっ♪
一番かっこよかったのは,ヴァリアシオンの始まる前。
舞台前方中央にしずしずと歩み出て嫣然と微笑みながら,「皆さん,今日は,私のために集まってくださってありがとう」とごあいさつするのよ〜(笑)。
・・・かっこいい♪♪
これにつきあわされたル・リッシュは,ご苦労さまというかお気の毒というか・・・(笑)。
でも・・・あのメドーラに対するに,おとなしい臙脂色のハーレムパンツで登場して,普通に恭しくアリを踊るなんて・・・ううむ・・・。なんかもう少しやりようがあったのではないかなー,とは思いました。(じゃあ,どうすればいいのか? と聞かれると困るが)
(休憩 20分)
ラ・シルフィード
振付:ピエール・ラコット 音楽:J=M・シュナイツホーファー
斎藤友佳理, セルゲイ・フィーリン, 東京バレエ団
斎藤友佳理は,日本風の湿気のある(よく言えばしっとりした)シルフというか・・・。欧米人のマネをしないで独自の雰囲気があるのはいいことかもしれませんが,軽やかさがないので,私の好みではなかったです。
フィーリンはきれいでしたが,マジメそうに見えるせいか,ジェームズらしいロマンチックさが今ひとつ。
ラコット版は,ブルノンヴィル版に比べて,2人で組む動きがけっこうあるのですねー。
小さな死
振付:イリ・キリアン 音楽:W.A.モーツァルト
オレリー・デュポン, マニュエル・ルグリ
洗練された「愛の四十八手」の趣で,今回のバレエ・フェスティバルの中で最大の収穫♪♪
腕も脚も頭も首も全部使って,普通のバレエでは考えられないような振付が次々と目の前に現れて,しかもダンサーがすばらしいから,流麗そのもの。
衣裳は肌色で必要最小限の面積しかないようなのですが,動きに品格があれば何を着ても下品にはならないんだなー,と思いました。
モーツァルトの快活で澄明な音楽は,私には素朴に脳天気すぎて感じられ,決して好みではないのですが,この振付を見ながら聞くと,それはもう美しくて・・・泣きたいような幸福感。
とってもとってもとってもとってもすばらしかったです〜。
「マノン」より “寝室のパ・ド・ドゥ”
振付:ケネス・マクミラン 音楽:ジュール・マスネ
アレッサンドラ・フェリ, ウラジーミル・マラーホフ
マラーホフはよかったですが,フェリはあまり魅力的ではなかったです。
前の作品にこちらの気持ちが持っていかれたせいもあるのかもしれませんし,私がフェリを好きでないせいもあるかもしれません。
ディアナとアクティオン
振付:アグリッピーナ・ワガノワ 音楽:チェーザレ・プーニ
パロマ・ヘレーラ, ホセ・カレーニョ
カレーニョの衣装の露出度が印象的でした。上半身に申し訳程度に(たすきのように)斜めに布が走っていて,下半身も超短め。
衣裳に加え,カーテンコールでも跳んで登場して見せるサービスで,楽しかったです。
踊りは,特に,ヴァリアシオンでの上体を反らしての跳躍が見事♪ 踊りの途中で「ブラヴォ」がかかりました。
ヘレーラは,テクニックはありましたが,女神には見えませんでした。
(休憩5分)
クレオパトラと奴隷
振付:リュック・ボウイ 音楽:アントン・アレンスキー
カルラ・フラッチ, マッシモ・ムッル, 東京バレエ団
東京バレエ団の3人のダンサーのリフトによって宙を歩くクレオパトラと,妙な衣装(ムッルが胴長に見えてしまった)の奴隷が登場。装置がいかにもエジプト風ですし,演出・振付も比較的わかりやすかったです。
ただ,まあ,1回見れば十分だと思いましたし,この催しにふさわしい演目かというと,ううむ・・・。
当初出演予定の首藤康之が肩の故障で降板。せっかくの機会なのに気の毒だなー,と思って見始めたのですが,この作品ならそんなに残念ではないかも,と終わった後では思いました。
『マノン』より “沼地のパ・ド・ドゥ”
振付:ケネス・マクミラン 音楽:ジュール・マスネ
シルヴィ・ギエム, ニコラ・ル・リッシュ
同じ「マノン」を踊るにしても寝室の場ではなくて沼地の場を選ぶのが,ギエムのギエムたる所以でしょうか。
などと落ち着き払って論評している場合ではないですね。
たいへんな名演でした。二人の技術も表現も拮抗していて,それが相乗効果を生んだすばらしい舞台だったと思います。
でも,私は,前回見せてもらった,コープの軟弱なデ・グリューとの方がずっと感動できました。
ル・リッシュは,「愛してる,マノン!!死なないでくれ!!」で普通すぎるの。コープは,「マノン〜,死んじゃやだ〜(泣)」で,もらい泣きしそうだったから。
椿姫
振付:モーリス・ベジャール 音楽:F.ショパン, F.チレア
クリスティーヌ・ブラン, 小林十市(語り), 東京バレエ団
小林十市による冒頭のモノローグは懇切丁寧な作品説明のような趣で,ううむ・・・あのー,ベジャールさん,そういうコトは解説しないで踊りで伝えてほしいんですけどー。
語り自体は声もよく上手でもあって,感心しましたが。
ブランは,白い総タイツで2曲踊りましたが,えーと,私はこのタイプの衣裳は苦手なので。すみません。
ドン・キホーテ
振付:マリウス・プティパ 音楽:ルードヴィヒ・ミンクス
ガリーナ・ステパネンコ, アンドレイ・ウヴァーロフ
ステパネンコのフェッテがすごかった〜。
あれは,トリプルだったんですかね,それとももしや4回転? 思わず数えたのですが,結局わかりませんでしたわ。
彼女は,3年前の出演経験から,「ガラでの見せ方」を研究してきたのではないでしょうか。同じ回転技でも前回より見せ方が派手で,客席を見事に乗せていましたし,かわいらしさ(おきゃんな感じというか)もある魅力的なキトリでした。
ウヴァーロフは王子からバジルに変身するため床屋に行って,準備万端整えて登場しました。愛嬌はあまりないですがたいそうかっこよくて,「ダンスールノーブルの踊るバジルはかくあるべし」の見本の感じ。
すてきだわ〜,と思ってうっとり見ていたのですが,音楽が静かになったとたん跳躍の着地の大音響が・・・。とほほ,私にとっては,これではダンスールノーブル失格なのよねえ。
フィナーレは,恒例の女性のアルファベット順での登場でした。
1人で登場したブランと3人のハンブルク組の関係で男女交互にならなくなったところで,マラーホフが交互に並ぼうと提案したようで,率先垂範してブランとフェリの間に移りました。これに応じたギエムは,事態が飲み込めないらしいル・リッシュのウエスト辺りをサポートして(笑),自分とフェリの間に移動させておりました。
マラーホフはその後も,右手にブラン,左手にフェリを優しくエスコートしていて,とっても王子さまでした。気遣いのある方ですね〜。
(03.5.20)