この映画は中国に古くから伝わる題材から撮った映画です。
今までに何回も映画化されており、タイトルの英文
「HUA MU LAN」からもわかるように、最近ではディズニー
のアニメ「花木蘭」でも有名な物語です。


    この出品者のクレジットの上段には、良く見ると
    「美商中国聯合影業公司」(原文右書き)となっ
    ています。「美商」というのはアメリカ資本という
    ことですが、これはプロデューサーの張善「王昆」
    が日本の侵略を避けるため、アメリカ資本を導入
    したためのようです。この辺にも当時の租界事情
    が伺われます。           

1939年作品 監督 卜萬蒼 プロデューサー 張善「王昆」
         主演  陳雲裳 梅熹  91分  白黒
         華成影片公司出品

ストーリーは、「花木蘭」(陳雲裳)という乙女が
父親に代わって男装して異民族との戦争に出
征し、その勇敢さと知恵とを発揮、元帥として戦
を指揮するまでになります。
そして戦いのなかで同僚の劉元度(梅熹)に恋
をし、戦争の勝利とともに故郷へ帰り結婚する。
というものです。


梅熹         陳雲裳

ストーリーとしては単純なものですが、中国人の(しかも美女が)
異民族と勇敢に戦って勝つ。というストーリは当時の社会的状況
からも中国国内において大ヒットとなりました。           
1931年9月18日(満州事変)、1937年7月7日(蘆溝橋事件)
同年(南京占領、南京大虐殺)等々日本が中国を侵略していく中
で、借古諷今の形をとって侵略者(異民族であり日本)に対する
勝利という明快なテーマと、陳雲裳の可憐な姿が多くの人々の支
持を集めたものでしょう。           
この映画は当初上海租界にてヒットしました。その後、偽南京政府の
支配地区に対して中華電影がその配給1号作品として、公開しました。
そして1942年には日本でも公開され、それなりの成績を上げたようです。
     

    これは当時の日本の映画雑誌に掲載された広告です。
    1941年の「映画評論」10月号(映画日本社発行)の裏
    表紙ですが、誌面でも「木蘭従軍を語る」と題した3ペー
    ジ程の記事が掲載されています。(飯田心美、北川冬彦)
    なおこのほかの記事として中華電影史話」に触れられてい
    る松崎啓次という人の中国での映画製作に関する記事も
    掲載されています。

  

   しかしこの後すぐに太平洋戦争の開戦などもあり、実際には
   翌1942年(昭和17年)の7月23日から公開されました。
   (関西は不明)
   上の切り抜きは当時の新聞の広告です。


なおこの映画は現在ではVCD化されており入手可能となっています
私は4月に香港で購入しました。珍しく紙箱のパッケージに入っています。
この写真では見にくいかと思いますが、題名等は金文字になっています。
「中国CHINA絶版電影精選」
深セン音像公司出版
ISRC CN-F29-97-168-0/V.J9