OMEGA SpeedMaster Professional / 5th Cal. 861
1996年に購入した初めての機械式時計、オメガスピードマスタープロフェッショナル。上野の老舗時計店で正規輸入品(新品)を購入したんだけど、購入価格は現金払いで16万円。記憶にある当時のスピマスプロの最安値は14万円と更に2万円安かったんだけど、渋谷の怪しげなショップだったのでそこでは買わなかった。ちなみに当時の定価は22万円、バックスケルトンモデルが25万円だった。
急速に円高が進んでいた頃ではあったけど、今では考えられないような値段。最近はかなり値上がりしてるようだけど、それでも決して高くはないと思うんだよね。50年以上も前からオメガ社のフラッグシップモデルとして君臨し、通常のオメガウォッチの3倍とも言われる検査工程を経てリリースされるスピードマスタープロフェッショナル。現在も安定して補修部品が供給され、メーカのメンテナンス体制も整っている。これだけの時計が40万円で買えるなら、決して高くはないと思う。
1996 OMEGA SpeedMaster Professional

スピマスプロはおそらく世界でもっとも有名な機械式クロノグラフだと思う。アポロ11号の月面着陸の際に宇宙飛行士とともに月面に降り立ったスペースウォッチであることはあまりにも有名な話。1960年代にNASAが公式の時計を採用するにあたって11項目にわたるテストを行った際、最後まで正常に作動していたのがこのスピマスプロだった。NASAにより精度、比類なき信頼性、卓越した堅牢さ、感敏な操作性を持つ時計として認められ、1965年に公式採用が決定された。以降、現在に至るまで船外活動での着用が認められた唯一の時計でもある。
SpeedMaster Professional

ケースの外径は42mm。少し大きいと感じる人も居るかもしれないけど、機械式のクロノグラフはこのくらいが存在感があってちょうどいいと思う。シンプルなムーブメントのお陰でケース厚は14mmと比較的薄く、機械式のクロノグラフとは思えないほど使いやすい。G-SHOCKよりは全然薄いし、デート機能を搭載したスピードマスターのオートマチックモデルよりも1mm薄い。スーツを着てもワイシャツの袖の中に違和感無く収まるので、オンでもオフでも使いやすいサイズ。
インデックスが焼けてきてイイ感じ(^^)

愛機は一般的に5代目と呼ばれているモデルで、ムーブメントは1968年から1997まで採用されたCal.861。フルに巻くと確実に48時間動作する。自動巻きのローターが不要な手巻きのムーブメントは構造がシンプルで、信頼性も高い。デイデイト機能も無く、クロノグラフとしての最低限の機能を備えるスピマスプロ。
オメガと聞くと高級腕時計って連想するかもしれないけど、この時計は完全な実用時計。機械式腕時計で同程度の品質の時計を作り、メンテナンス体制を含めてサービスを展開しようとすると日本メーカでもこの値段では難しいと思う。ロレックスも機械式実用時計の代表だと思うけど、あのくらいの値段がして然るべきだと思うんだよね。
OMEGA Logo

精度では当然ながらクォーツ式に歯が立たない。だけどゼンマイと歯車で実用精度を出す機械式クロノグラフはもはや芸術の域という感じがする。耳を当てるとチッチッチッチと小気味のよい暖かい音がして、1996年10月に手に入れてから毎日こうして動き続けていると思うととても単なる機械とは思えないんだよね。愛おしくさえ思えてくる今日この頃(^^)
ステンレス無垢ブレス

初期のモデルは竜頭がむき出しなんだけど、1963年の4thモデルからは構造的に強度の低い竜頭を保護するガードを持つ構造にケースデザインが変更された。このリューズガードのデザインが秀逸で全く違和感を感じないんだけど、正面から写した写真を良く見るとスピマスプロのケースは右側が張り出した左右非対称なデザインになっている。
リューズガード

ムーブメントは軟鉄製のインナーケースによって磁場や衝撃から保護されているんだけど、バックスケルトンモデルはこのインナーケースが廃されている。高い信頼性と実用性がウリのスピマスプロなんだから信頼性に妥協して欲しくないよね、どうせ買うならスチールバックモデルがイイと思う。
シーホースマーク

クロノグラフのお手本のようなデザインで、黒文字盤に組み合わされる白のポインタとインデックスは視認性に優れる。インデックスには放射性同位元素トリチウムを含む夜光塗料が使われており、インデックスの下にはトリチウムの使用を示す"T"の文字の表示がある。新しかった頃はよく光ってたんだけど、トリチウムの半減期は約12年ということもあり現在はほとんど光らなくなってしまった。トリチウムインデックスは焼けて少し黄ばんできてるんだけど、オールドらしい風格が感じられていいんだよね(^^)
トリチウムインデックス

愛機は今までに2度オーバーホールに出している。プラ風防はオメガの正規メンテナンスに出すたび新品に交換してくれるんだけど、最初付いていた風防に比べると最近の風防は随分と傷に強くなったと思う。最初のやつはすぐに深い傷が何本も入ってしまったんだよね、メンテに出す頃には視認性に問題が出るような深い傷が1本入ってたし。今の風防に目立った傷が見当たらないところを見ると、最近の風防にはハードコーティングが施されているんだと思う。だけど一般的な硬質ガラス風防に比べると透過率が低くて光が写り込みやすく、傷も付きやすい。
オメガ刻印入りの純正プラ風防

一方、プラ風防への写り込みは当初からほとんど改善されていないように思う。メガネレンズのように反射率を下げるコーティングも出来ると思うんだけど、風防の材質とかコーティングの耐久性とか問題が色々とあるのかな。プラ風防には割れ難いという最大のアドバンテージがあるので、未だにプロフェッショナルにはプラ風防が採用されている。このプラ風防はスピマスプロの外見上の特長にもなってて、個人的には独特の質感が好き。最新のCo-Axial Chronographには反射しづらいクリスタル風防が採用されているようだけど、やっぱりこの時計にはプラ風防の方が似合うと思う。


使えば使うほど、スピードマスタープロフェッショナルって最強のクロノグラフだと思う。衝撃に対してはG-SHOCKの方が強いかもしれないけど、さすがのG-SHOCKも-19度から+93度の極度の温度変化テストをパスすることは出来ないと思う。熱湯の中に落としても壊れない時計(たぶん、笑)、それがスピードマスタープロフェッショナル。それにG-SHOCKは壊れても修理がきかないからね、補修部品の供給も数年でストップしてしまう。長く使い続けられることも重要な信頼性の一つと考える人も多いと思うんだよね。

いい歳して付ける時計じゃないとか、スーツには似合わないとかいう人も居るようだけど、俺はそうは思わないけどね。初めて担当したプロジェクトで出合ったスイス人のベテランエンジニアがスピマスプロを腕に巻いてたんだけど、最高にカッコイイと思えたんだよね。長年身に着けてるから似合うって事もあると思うけど、俺はこの時計はエンジニアに最もに合う時計の一つだと思う。

「大きくなったらオトーさんの時計が欲しい」って言うウチの息子。息子の高校進学祝はこのスピードマスターかな(^^) ←親バカ