Cattleya mossiae  


                         春の女王

                                                       原文  A. A. Chadwick

                                    翻訳  花咲村 熊虞蘭土

 

 カトレヤ原種に接していて感じる素晴らしい事柄のひとつは、いつ何時でも何かしら咲いている種があり、それぞれが特定の季節と結びつくことだ。日が長くなり、日射しが強くなると、程無く、温室あるいは ガラス張りベランダでは、自然の至宝の中で最も輝き、最も大きく、最も魅力的なバラ色のカトレヤのひとつCattleya mossiae が咲き競う。春は Cattleya mossiae の季節だ。



C. mossiae  tipo Selected Dark’   蘭の里梨久保より

 

   C. mossiae は3,,5月と相次いで咲き、復活祭にも、母の日にも、春のダンスパーテーや卒業式にも、常に、そして殆どの春の花の展示会にも咲き誇っている。1940年代及び1950年代には切花産業の寵児だったし、他の Cattleya 原種がより煌びやかな交配種に駆逐されてしまった後も長いこと切花用に栽培されていたのも納得がいく。

Cattleya mossiaeCattleya labiata に次いで2番目に発見された単葉 Cattleya 原種で、それが1836年にヨーロッパの園芸界に導入されたとき、センセーションを巻き起こした。C. labiata とは違い、希少だとか、入手困難だとかいうことはなく、C. mossiae はふんだんに供給され、注ぎ込める金のある人なら誰でも買うことができた。

Cattleya mossiae はまた大きな、目立つ花を1茎当たり4〜5輪も付け、リードもよく出るので、8.5号鉢で20輪以上は咲く。それらは誰もが観賞する蘭展には申し分の無い展示になった。1865年から1913年に掛けて、RHS (英国王立園芸協会) は誰もが熱望する賞である AM 37個とFCC 16 個を C. mossiae53 個体に与た。   C. mossiae の個体名の数は、殆ど際限が無く、1900年までに登録された個体名は既に150以上に上ぼっていた。


C. mossiae  fma. coerulea Kmagland
 

  Cattleya mossiae は、自生地ベネズエラで非常に好まれ、この国の国花となる栄誉に浴した。ベネズエラには、ルデマニアナ、パーシバリアーナ、ガスケリアナ、ジェンマニーなどの印象的な単葉カトレヤを含め、8種のカトレヤ原種があり、これは本当に輝かしい栄光だった。そしてこのことは C. mossiae に対する国民の愛惜を雄弁に物語っている。

  趣味家にとって、C. mossiae は真の宝物と成り得るあらゆる資質を具えている。最も栽培し易い Cattleya 原種で、最も花上がりが良く、過酷な栽培条件であってもこの属の中の他のどんな種よりもうまく順応する。そんな訳で C. mossiae は初心者向き洋蘭としてよく薦められている。だが、その逆境耐性ゆえに栽培経験の長い愛好家の人気リストの中でも高く評価されている。私の友人が、何棟もの温室の管理がもうできなくなったとき、大コレクションを放棄したが、C. mossiae だけは4鉢手元に残し、サンルームで栽培していた。  「C. mossiae はラッパスイセン同様春の象徴で、毎年確実に花が見れるからね。」と、そのわけを話してくれた。

 

 

Cattleya mossiae の 栽 培
 

 春咲くので、C. mossiae C. labiataC. trianaei などのリードが成熟してしまってからかなり後の真夏まで、生長を始めない。しばしば10月になっても生長が完結せず、通常新しいリードから新しい根を続々と出す。この時期に植え替えても春には逞しい花茎が立ち上がる。

他の Cattleya 同様、C. mossiae はリード・バルブから出る新しい根が動き始めたときに植え替えるのが望ましい。Cattleya mossiae は夏から初秋にかけて活発に生長している間は十分に水を与え、休眠期の寒い冬の間は控えめに給水する。Cattleya mossiae は、よく乾かしてから水を与えるようにすれば、最善の生長をする。給水時は鉢内のすべての根が湿るように徹底した給水を行う。

Cattleya mossiae は十分な日照と通風を必要とし、日当たりが良ければよいほど輪数も多くなる。とはいっても、葉に触って熱を感じるようであれば、日照が強過ぎる。Cattleya mossiae は夜間15℃、日中30℃までの通常のカトレヤと同様に管理する。

生長を促し、花上がりを良好にするために肥料は特に必要ないが、バーク植えの場合は有効だ。8月、9月の生長が旺盛なときにバランスの取れた薄い液肥を毎週与えると良い。遅効性の肥料は使わない。これらの弊害は休眠中にも効いてしまい、根を傷めてしまうからだ。