Harley-Davidson Jyuku
晴旅人尊塾
旅人はお天道様を敬い尊び、晴れた日を最高!と歓喜し雄たけびをあげる
晴旅人尊塾・・・ハーレーなかよし倶楽部 《ツーリングレポート
登録No.1
*注目度100%、お騒がせいたしました
ドッ、ズドドッ 。怒涛のような地鳴りにも似たような音が、山間に響き渡った。「ハーレーなかよし倶楽部」。ハーレー愛好家たちの集いである。彼らにはユニフォームも規約もない。ポリスタイプだろうがチョッパーであろうが、ハーレーのエンジンが載っていれば良いのである。数々のモーターバイクを乗り継いだ結果がハーレーなのだ。世界一のビッグトルクを誇るエンジンに体が振り落とされそうになった瞬間、その魂までも奪われた男達である。
 あえて「○○ハーレー会」と称しないのは、機種にこだわらず心底ハーレーマニアであるためだ。メンバー募集はロコミとバイク雑誌の投稿欄から。そして関東全域からそれぞれが集まってきた。月一回の会報発行、隔月毎のツーリングなど精力的に活動している。これもマニアならではの成せる業かも、しれない。現在キャプテン「あずま」こと、東進一ひきいる36名、40台のメンバーで倶楽部は成り立っている。 さて、そのメンバー達。ゴールデンウィーク真只中の5月3日、関越花園インター近くのレストランに、21台のハーレーが集合した。なかよし倶楽部ではすでに恒例となった、 春の一泊ツーリングヘとメンバー違が近県からやって来た。軽い挨拶とミーティングを済ませ、曇天下午前7時に出発した。1台でもかなり大きなサウンドを発するハーレーが21台一斉にスタートしたのだから周りには想像を絶する轟音だったに違いない。
 連休中とあって、30分も経たないうちに渋滞に巻き込まれた。ところが待ってましたとばかりに、ハーレーの楽しみ方が活かされている。 ラ ジオで交通情報を聞く者、カーステレオを聴く者、無線で世間話を始める者、まさに三者三様である。また何をやっても絵になるのが、ハーレーなのである。数あるバイクのなかで唯一ハーレーだけが許される特権だろう。  
 しかし悦に入ってばかりはいられない。富岡市内では、ハーレーのデメリットが顔をのぞかせ始めた。巨大なボディゆえにスリ抜けができない。必然的に渋滞の御一行様となり、オーバーヒートに至る。ギアチェンジの音まで悲鳴に聞こえる。
 下仁田付近で、ローライダーの村岡氏のクラッチワイヤーが切れた。そこでメカニック荒井氏の登場だ。多勢のメンバーのどこからともなく、ワイヤーが2本出てきた。
 居るだけで目立つハーレー、近所の人達が遠巻きに見ている。そばまで来て見物を決めこむ子供達。渋滞中の車から暇つぶしの物見遊山。21台ものハーレーが道端に止まっていれば、もうこれはひとつのイベントだろう。
 修理は難なく終わり再び走り出したが、間もなく、馬場氏のFLHがバババッと異音を発している。次第にその音はひどくなり、2qも走らないうちに全員停止。原因はプラグのかぶり。また、いずれとも知らずプラグが出てきた。何ともすばらしい部品の供給体制、まるでドラエモンのポケットのようだ。
 こういった状態で下仁田を通過したのが正午過ぎ。 コンニャクの、のぼりが風になびいているドライブインで昼食を取った。 予定 ならば今頃は松本市で食事だったのだが。
 今日中に着くのだろうか? 誰もが心配している。が、口にする者はいない。代わりに皆、食事がやけに早い。食べ終わると皆そそくさとバイクの所へ行ってしまう。誰かがエンジンをかけたのを合図に、一斉にスタートした。
 ドライブインを出ると、さきほどまでの渋滞が嘘のようにすいている。内山峠を過ぎた頃からツーリングらしくなってきた。無線で話しながら楽しんでいる。
 大抵はグループで走行しても、それぞれ違う事を考え、旅にひたっているものだが、こんな事ができるのもハーレーならでは。浅科、望月、見丸子町を後に松本市へと向かった。
 三才山トンネルを抜けると松本市である。駅前通りに21台のハーレーが整列して信号を待っている。赤から青に変われば、ズドドッと轟音を発して出て行くだろうと誰もが信じていた。がしかし、彼らは動こうとはしなかった。見ると先頭を行く「キャプテン東」がバイクを押している。「やったね。キャプテン」!
 修理はほんの数分で終わったのだが、目抜き通りにいきなりハーレーの集団が並んだものだからそりゃ大騒ぎ。何t? いくらした? どこから来た? どこへ行く? 矢次ぎ早に質 問をあび、宇宙人扱いだった。なかには額入りの写真を持ってきて、自分もハーレーに乗っていると言うおじさんもいた。
 これ以上騒ぎが大きくならないうちに再び走り出した。駅前から右に曲がってR158に入る。辺りはがらりと変わってのどかな景色だ。「鯉のぼり」が悠々閑々と泳いでいる。
 はるか前方には、これから越えねばならない山脈が曇天と共にズッシリと構えている。飛騨高山市内までは90q以上ある。
 「着くのは9時だね」
 「いや10時過ぎだよ」
 ここから安房峠を始めとする難所が続く。特にこの峠はトレールや400tクラスのバイクにお薦めのルートで、とてもハーレー向きではない。道幅が狭く、九十九折りの連続だ。 しかし意外にも、大型車とすれ違う時に停止を余儀なくされた以外いたって順調に進んだ。タイトなコーナーを、ビッグトルクは思いのほかスムーズに、ハーレー特有のイージーなシフトワークでゆっくりと確実に、峠を登って行った。そしてR158、安房峠から高山へ抜けるこの街道に、大地を揺らさんばかりの音が轟いたのである。
 道端には雪が残っていた。コーナーをクリアするごとに深くなり、残雪が目の高さまできた頃、峠は下り始めていた。
 日が暮れた7時過ぎ、高山市に着くと観光客でにぎわっていた。格子戸からこぼれてくる電灯の光りは優しく、古都の風情が漂っていた。
 突然、ドドドッと音がする。太鼓の音ではない。予定よりかなり遅れて到着したメンバーだ。観光客は彼らを好奇の目で迎えてくれた。
 観光ギャルの熱いまなざしを背にして街中を抜け、12時間かかって宿に着いた。
  この宿『松仙閣』は450年年以上も前に建てられたらしいが、皆そんな事に構っちゃいられない。荷物を降ろし部屋割が決まると、一目散に風呂へ飛んでいった。
 風呂に入るとすでに疲れは吹きとんでいる。あそこのコーナーはどうの、奴のバイクはどうだと自慢話が展開されている。元気の良い奴らだ。ツーリングの夜、風呂から出ると当然、大宴会が始まる。ハーレーは 燃費が良いのだが、皆の胃袋はレーサーレプリカの如くアルコールを吸収していく。そして酒の肴はもちろん、ハーレー談義だ。こればかりは尽きる事がなく、放っておけば朝までやっているに違いない。
 思えば長い一日だった。走行距離253q、時間は12時間半、トラブル5回。なかよし倶楽部のギネスブックに新たな記録が更新した。 宴会が終わると、皆バタンキューと眠りこけていた。
 翌朝8時30分、宿の窓ガラスをゆらさんばかりのエンジン音を発して、威勢よくスタートだ。が、昨夜からの雨のためか、バッテリーあがりが2台出た。他の客が見守るなかで、4人がかりの押しがけなど盛り沢山のセレモニーを披露して出発できた。
 雨にたたずむ高山市もまた、情緒たっぷりで、朝から、疲れた体に一層 拍車をかけてくれた。高山市から帰りのルートは、開田 高原 を抜け木曾福島へ向かうR361だ。
 渋いイメージがあるハーレーだが、皆カラフルな雨具に身を包んで走っていると、また違った雰囲気がある。
 一部に道幅の狭い昔ながらの街道の面影を残した所を通り、新緑の長峰峠、開田高原、木曾福島、塩尻、諏訪、そして和田トンネルを色とりどりのカッパが進んで行った。
 心配していた渋滞や故障はなく、全てが順調だった。解散場所にも無事到着できた。
 帰路は245q、2日間で500q走行。トラブル続出、雨にも降られたツーリングだったが、メンバーの顔は充実感いっぱいの笑みがあふれていた。
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