Harley-Davidson Jyuku
旅人はお天道様を敬い尊びそして晴れた日を最高!と歓喜し雄たけびをあげる
ある出版社の若者がレポートの為に取材に来た。その時の内容であるが、誤解されていたものが、取材を通して「ハーレーでも国産車のバイク乗り」でも、バイク乗りはみな同じだ!ということ事を、理解するまでのプロセスがよ〜くわかる。また晴旅人尊塾「ハーレーなかよし倶楽部」の
在り方の一部が良く出ている。ハーレーであれば「FX系」「FL系」機種は問わない。
登録No.2
 ハーレー以外の、いわゆる国産車に乗っている若者の中には「ハーレーなんて金持ちの道楽だ」くらいに思っている者も少なくないのではないだろうかあ? 俺もそんな中のひとりだったその日、彼らと出会うまでは・・・・・・

ハーレーなんて
 関越自動車道を6連フルスロットルでとばす。全身をゆさぶる風圧を気持ちよく感じながら、思った。なんで俺がハーレーのツーリング同行取材なんぞに行かねばならんのか、と。ハーレーは嫌いではない。でも乗る気もない。興味がないのだ。実際今まで国産にしか乗ったことはない。今跨がるのもスズキのシングルレーサー。ハーレーなんてものは、まったく金のかかる、程遠い世界の乗り物のようなイメージがあった。まあせいぜい楽しむかと、わだかまりを残しながらも集合地に向かう。
★軽快に止まった、それは強烈な印象を焼きつけた。
 午前2時、当然集合地のDIY店の駐車場には誰も来ていない。少し欠けた月をつまみに、途中で仕入れてきたビールを呑む。明日は晴れそうだ、そんなことを考えているうちにいつのまにか寝てしまった。
 爆音に目を覚ます。眩しい朝の光に薄目をあけると、1台の巨大なバイクが目に入る。それは駐車場の中を大きな円を描きながら、ゆっくりと走っている。朝日に輝く。ハーレーだ・・・。 その巨大なものは思っていたよりもずっと軽快にくるりと回って、止まった。その光景は、今までハーレーに対してさして美しさを感じなかった感性が間違いであったことを教えてくれた。それほどに強烈な光景だ ったのだ。
 メットを外して近寄ってくるハーレー乗り、どこにでもいるような普通のオヤジだ。だが、感じる。そう、同じ人種の香りを感じるのだ。あ、バイク乗りだ、そう恩った瞬間、思わず笑ってしまった。来るまであんなに厭だった、あの変なわだかまりはどこかへ消し飛んでしまった。何だハーレー乗ってたってバイク乗りはバイク乗りじゃないか。
★こんな乗り方もあったんだ
 集まった30台のハーレーと共に走り出す。
 今回同行するクラブは「ハーレーなかよし倶楽部」、その名の示すとおりFX系もいればFLもいる、おっさんがいれば若者だっている、真面目そうな奴も悪そうな奴も…とにかくハーレーに乗っていてルールが守れるなら何でもござれ、といった倶楽部で実に楽しそうな連中だ。
 埼玉県は花園から、軽井沢へ。初めてのハーレーとの並行は、驚くことばかりだ。何しろ今までハーレーなんざブチ抜いた覚えはあっても、ゆっくりとその走りを見てたことなんてない。信号で止まっているクラブ員のハーレーのエンジンがアイドリングで揺れ動いている(国産車では滅多にない)のを見て、なんちゅうフレームにエンジンだ、と思ってみたり、このどでかい車体でどうしてこんなに軽快なんだろう、そう思ってみたり。なにより30台ものハーレーが一列になってゆっくり走る光景。 バイク、というものが 非日常性を求めるものであれば、これは国産車のツーリングの比ではない。今までツーリングといえばバトツー(バトルツーリング)しかしたことのない俺にとってまったく初めての感覚だ。こんなバイクの乗り方もあったんだなあ、ほのばのした気分でメットのなかで、にやっと笑ってみた。
★振り向いた日常はいつもの「しかめっつら」ではなかった。
 バイクでツーリングしたことのあるものは必ず経験したことがあるのではないだろうか。ツーリング先で現地の人間が向ける、迷惑そうな顔、いかがわしいものを見るような視線。通りすぎる非日常に、日常はいつだって不機嫌なものだと、そう恩っていた。
しかし・・・・・
 本当にいつも通りの日曜日がおくられている田舎の小道を、ゆっくりと通りすぎる。そこに生活する人が振り向いた。驚いたような顔。あ、笑ってる。初めての経験だ。こんな爆音をたてて通りすぎているのにちっとも迷惑そうな顔をしていない。「ハーレーは優しいバイク」。そうどこかの本で読んだことがあった。そうかハーレーって「ひと」と同じスピードなんだ、…
 そういえばゆっくり人の表情が見えるような速度で走ったことなんてない。また一つ、ハーレーのことを知った。
★ハーレーの楽しみかた
 バイクに乗っていて、信号待ちの間、歩道側の建物の窓に映る自分の愛車と自分の姿にみとれているうちに、信号が変わってアオられる。そんな経験、バイク乗りなら誰でもあるだろう。基本的にバイク乗りは目立ちたがりやでナルシストである。そして目立つバイクの代表、といえば誰もがデコレートされたハーレーを思い浮かべるのではないだろうか?一方で、「金持ちの道楽」として国産乗りの若者に最も嫌われるのもこの類だ。
 軽井沢の「銀座通り」観光客が歩くその道を「ハーレーなかよし倶楽部」が通りすぎる。それまでの行程で、いくぶん彼らのキャラクターも理解できていたつもりだったがさすがにこれは、悪趣味だなあ、と思った。のだが…
 気持ちいいではないか! 驚く通行人の顔、呆れたように笑っている人もいる。デコハーレーのゴテゴテ外装がそれをあおる。手を振る人? までいる。なんだ、かっこいいじゃないか。これもハーレーの楽しみかたの一つなんだ。そう気付く。そこではハーレーが完全に主役だ。これほど自己満足に浸れることは滅多にないのではないだろうか? 図々しくも国産乗りの俺も、その快感をおすそわけしてもらった。こりゃ気持ちいいワ。
★帰路・・・
 軽井沢を流したあとは、そのまま埼玉へ向かって帰路をとる。なんと、そのルートはあの碓氷峠旧道だ。こんなデカイもんがあのワインディングで大丈夫なんだろうか?そんな心配と、一体どういう走りをするんだろうか、という期待で胸が膨らむ。
 碓氷峠のワインディング、攻め慣れたこの道を今はハーレーと行く。さすがにハーレーではトバすことは出来ないようだ。しかしゆっくりと、実に気持ちよさそうにコーナーリングしていく彼ら。もう解っている、それがハーレーの乗り方であり、楽しさだ。そんな彼らをインから、アウトからバスして抜き去る。そして、停車、撮影。全員が過ぎ去ったのちにま たそれを1台1台パスして撮影。  彼らは乱れのないライン取りで、それに協力してくれる。久々にフルバンクの快感が蘇る。しかし、撮影をしながら一つ心配なことがあった。彼らに「えげつない小憎め」と思われやしないだろうか、ということだ。パス、撮影、パス、撮影…何度これを繰り返しただろうか。
 休憩地である横川の釜飯「おぎのや」に到着した。停車した倶楽部員が声をかけてくれる。「大人げない走りするなよな」、ではない。
 「気持ちよさそうだったよなあ、山にゃそんなバイクが一番だね」くだらない心配をした自分が馬鹿らしく思えた。なにかというと、ハーレー乗りは国産を馬鹿にしている、そんな気持ちが今まではあったのだが、彼らは気持ち よく国産の走りを受け入れてくれた。そりゃそうだよな、何せ「ハーレーなかよし倶楽部」だ。
★いつかは俺も
 あんなに厭だった同行ツーリングは、思いのほか最高のものとなった。「ハーレーなかよし倶楽部」との走りは今まで思っていたハーレーへのマイナスイメージをすべて消してしまった。
 いつかは俺も「奴」に乗るんだろうか?まだ若い俺には精神的にも金銭的にも遠い先の話になりそうだが、ハーレー乗りになるあかつきには彼ら「ハーレーなかよし倶楽部」みたいに気持ちいい奴になりたいもんである。
 そしていつかまた、彼らと走る日が来ることを願いたい。

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