現状報告2 - '99年8月

 '99年8月中、現地に滞在した大森誠司による、これまでにAYUCAが調査を行った村(集落)の状況報告です。['99年 9月11日現在]
 地名については、AYUCA活動地域地図を参照してください。
 8月中にこれらの地域で撮影した写真は、写真レポート '99年8月に掲載しています。
 
AYUCAの活動地域における村落の現状

■ サンタ・ロサ・デ・アグアン
 海岸沿いの村。ミッチ以前は人口500人程度で、比較的裕福な家が多い村だった。ミッチのときは洪水のような状態になり7割の家屋が水没した。
 水流で一部の土地が削られ、現在は、湖のようになってしまっている。この土地は海水面、川面よりも低くなったため、もう水が引くことはないと思われる。村は3ヶ所に分断され、ボート(片道5レンピーラ=約45円)が村人たちの日常の交通手段になっている。また、家を失った住民の多くは、この村を去った。ハリケーンに対する恐怖があり、海の近くには住みたくないと考えているようだ。現在でも村のいたるところに、壊れた家が被災当時のまま放置されている。海岸部分では、波によって、ミッチ直後よりも浸食が進んでいるように見えた。
 この村は、援助物資が比較的多く集まった地域で、AYUCAは特に支援活動は行っていない。

■ ブエルタ・グランデ
 人口約300人。すべての家が全壊した村。AYUCAでは、今年の初めに、屋根の材料となるトタン板と釘を全戸に配布した。また、今年2月に野菜の種子を各家庭に配布、3月には小学校では子供たちに文房具を配布した。
 今は、村はだいぶ落ち着きを取り戻しているように見える。現在、AYUCAでは「ホンジュラス災害復興を支援する会」の資金援助を元に、教会の再建の話を進めている。
 最近、アイルランドのNGO「APSO」が植林のプロジェクトを行っている。

■ ミラ・モンテ
 ここも、ほとんどの家が全壊した地域。AYUCAでは、これまで約30件の家にトタン板と釘を配布した。ミッチ後、サンタ・ロサ・デ・アグアンからここに移り住んできた人も多い。現在、スペインのNGOの資金援助により、修道女のグループが約100軒の住居を建築する大がかりなプロジェクトを進めている。サンタロサ・デ・アグアンで家を失った人たちをここに移住させようという計画らしい。もともとこの地域にも家を失った人たちがたくさんいるのに、他の地域の人たちの住居のみを建設するという計画なので、個人的には、あまりいいやり方とは思えない。
 他から移り住んできた人が多いのと、このプロジェクトの影響で多くの資金がこの地域に流れていることもあって、最近、ここでの支援活動は非常にやりにくくなっている。住民たちは援助慣れをしてしまって、私たちにあまり協力的でない。中には、無償で得た援助物資を転売して儲けようと考えている人もいるようだ。
 AYUCAでは、今年の初め、このような状態になる前にここを調査し、援助が必要な家のリストを作成した。このリストに基づいて建築資材の配布を行い、現在までにほぼ配布を終えている。

■ ドス・ボカス
 人口約300人。比較的多くの援助が集まった地域なので、AYUCAは特に援助をしていない。
 現在、「MEDICO DEL MUNDO」というNGOが、女性を対象に性教育を行うプロジェクトを進めている。

■ フレナカイン
 多くの住民はコンクリートブロックの家に住んでいて、電気も通っており、比較的裕福な地域。ただ、中には、土壁の家に住んでいて、ミッチで家を失った人たちもいる。コンクリートの家では、キリスト教系の団体から屋根瓦の援助を受けていたが、家を失った人たちは、まったく援助を受けられず、今年の8月までビニールシートの下で雨を避けて生活をしている家族もあった。まわりがコンクリートの立派な家ばかりなので、悲惨さが際だって見えた。
 AYUCAでは、8月、特に悲惨な生活をしていた3家族に、トタン板と釘を配布した。他にも援助が必要な家があるようなので、現在調査中。
 NGO「MEDICO DEL MUNDO」が浄水施設の建設を進めており、ほぼ完成していた。

■ リカルド・メヒーヤ
 十数世帯の集落。ほとんどの家が、土の壁が崩れ落ちたため、ビニールシートで覆って生活している状態だった。家々が主要道路から離れた場所にあり、広い地域に点在しているため、これまで援助が入っていなかったものと思われる。
 AYUCAでは、全戸に建築資材(トタン板・釘)の配布を行う予定(注:9月中旬、11軒分、168枚のトタン板などを配布した)。
 この地域では、8月中に2人の幼い子供が喘息のような症状で亡くなった。ビニールシートで覆った家は隙間だらけで、衛生状態も決して良いとは言えない。

■ クアク
 十数世帯の集落。すべての家が全半壊していた。ここも、主要道路から離れた場所で、家々が点在している。一部の家は、欧米の団体が2度調査に来たが何の援助ももらえなかったという。このあたりでは、調査は来たけど援助がなかった、という話をときどき聞く。そういう団体も少なくないようだ。
 AYUCAでは、9月初めに全戸に建築資材(トタン板・釘)の配布を行った。私たちの調査から漏れていた家が数件あったらしく、さらに調査を進める予定。

 


[治安の悪化について]
 AYUCAが援助活動を行っている地域では、最近、治安が悪化していることが心配されます。
 7月だけで、トルヒーヨ近辺で以下のような事件がありました。これらの事件は、ハリケーン「ミッチ」後に十分な援助がなされていないことと無縁ではないと思います。8月中は、特に大きな事件はありませんでした。
 
・ トルヒーヨに駐留している米軍の医師が殺害される。金銭目当てと言われているが、犯人は捕まっていない。
・ トルヒーヨで町ができて初めての銀行強盗が発生。町から離れた場所で路線バスが銃撃され、警察がそこへ集まっている隙に、警察署のそばの銀行を襲うという事件だった。バスで数名の死者が出た。銀行では警官が重傷を負った。犯人グループは捕まっていない。
・ AYUCAが援助活動をしている村へ行く道路でジュースを運ぶトラックが襲われる。逃げたので被害はなかった。
・ リモンでスペインの援助団体の車が襲われる。逃げたので被害はなかったが、この援助団体はホンジュラスの支援活動から手を引くことになった。
 
 


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