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指を伝ってとろりと零れた液体は俺の吐き出したそれだけではないぬるつきで、掌を汚した。
 全然収まりのついていない俺の肉塊に、滴る液体を擦りつけながら紅葉の中に再び潜り込む。
 「は……んっ!……って、る……奥…まで…入…って……」
 「何?もっと奥まで入れて欲しいって?ったくわがままな困ったちゃんだな、紅葉は。こんなに
  奥まで入れてるのに、何が物足りないんだか」
 根元をきっちりと締め付けながら奥を突けば、甘い声音が耳を擽った。
 「だ……見て…ら…嫌……だ」
 「敏感になってるから、人でないモノの視線も拾うんだろうけど。たまんない締め付けだって。
  一人で走ってくれるなよ?紅葉」
 「一人は……一人、じゃあ……」
 「嫌なら、ここで俺を感じて……俺はいるんだから。紅葉の中に、いるんだから……」

 囁く度に太ももが揺れる様は、まるで紅葉が俺の指による締め付けを嫌がって、一生懸命自
分の肉塊が擦れるように動いているようにも見て取れる。
 「…だ……も……頭が…ぐら、ぐら…する……」
 自分の身体を支える気力はなく、ただ俺の肉塊が与える快楽に手一杯になってしまった紅葉
が、頼りなさげに俺の二の腕を掴む。
 「…龍、麻…も……」
 「もう…イきたい?」
 つかまれた二の腕が更に引き寄せられて、紅葉の紅潮した頬が俺の顎に触れた。
 「…イ…きたい……」
 熟れ切った瞳で、言われてしまった日には。
 「…だ!きっつ…い。そんなに…揺さ振らない…でぇ」
 紅葉の唇から甘ったるい悲鳴が放たれたところで、獣にならなきゃあ、男じゃねーやな?
 紅葉の根元に絡めていた指を放して代わりに掌で肉塊を包み込んで掴み、突き上げるのと同
じのかなりな早さで扱きながら、紅葉の中を深く抉る。
 「俺は、そんなに揺さ振ってないぜ?紅葉が自分で揺れてるんだろうに。ほら、背中も手も
  ……顔だって俺から離れたくないって、くっついてくるわ」
 全身で求められて求め返す。
 求めた分だけ満たされるわけではないが、こんなに欲しがられては愛しいと思う以外の感情
を、どう抱けというのだろうか。
 「……激しく…しな、い……」
 限界まで広げた太ももが感じすぎて、軽く跳ね上がる。
 「嘘つけってー。これっくらいじゃないと、紅葉はもう、イけないだろう」
 さすがに上がってきた息を、単語で区切って話す事でごまかしながら、紅葉の唇を奪った。
 喘ぐ唇が吐く音は、俺の喉の奥で甘く絡まる。
 「……もう……出す、ぞ……」
 紅葉のために上げたペースを、今度は自分がいきつけるように高めてゆく。
 「……んんっつ!」
 腰が軋むほどに紅葉の中に打ち込む。
 一度精を吐き出してあるので、紅葉の中は俺の激しい動きにもいい感じについてきてくれて、
俺の肉塊を高みへと引き摺り上げた。
 「はっ……」
 びくっと大きく背を撓らせた紅葉の肉塊からぱたぱたと白い液体が落ちるのと同時に起こっ
た、中の絶妙な蠢動に釣られるようにしていきついた。
 「龍麻……!」
 入れたままで身体を抱え直したのを、更なる行為に及ぶのかと勘違いした紅葉から抗議の
悲鳴が上がる。
 「俺はまだまだいけるけど……それじゃあ紅葉がきついだろ?」
 想像していたよりは乱れなかった着物の懐から、ポケットティッシュとウェットティッシュを取
り出す。
 自分でも笑っちゃうんだけど、習慣的に持ち歩いているんだな、これが。
 いつでもどこでも紅葉を押し倒す去るだからさあ?
 膝の上に器用に持ち上げた紅葉の腰を浮かせてから秘所にティッシュをあててやり、やわ
らかく腹を擦ってやる。
 「……ん…」
 一端引いたかに見せた熱を、また頬に乗せた紅葉の中から、俺が吐き出した精液がとろと
ろと溢れた。
 「あ……足りない…足りない…っと」
 三日とあけずにやりまくって、よくもまー、と。
 我ながら呆れるほどの液体が新しく取り出したティッシュに染み込む。
 くるくると丸めてとりあえずその辺に投げると、今度はウエットティッシュで秘所を拭った。
 「はい。綺麗綺麗」
 羞恥に顔を上げない紅葉の首筋に唇を寄せて、ぺろっと嘗め上げる。
                           
 「君って……ホント…無茶……好きだよね…」
 耳まで真っ赤にした日には、憮然とした風情で責めてみたって説得力ないよ、紅葉。
 「紅葉にしかしない無茶だけどな。何、そんなに嫌だった?着物ですんの」
 「…着物……そう、着物……何て言って持って行こうかなあ…」
 俺の着物は、まあ良しとしても、紅葉の着物は皺くちゃに加えて、恥かしい染みまでもがあち
こちに飛んでしまっている。
 何を言わずに持っていった所で、ナニをしたのがばればれでは洒落にもなりゃしない。
 「場所教えてくれれば俺が持って行くから、その辺は気にしなくっていいぜ」
 抱き合う時特有の静かな時間から、日常へと。
 戻ってゆくのも、紅葉となら淋しくもない。
 変な違和感も抱かなくてすむ。
 深い溜息をついて首を振る紅葉を安心させるように笑いかけてから、ふと聞こえてきた音に
耳を澄ます。
 「…龍麻…どうか……した?」
 まだまだ全然触れたりなくて、ずっと首の後ろにある後れ毛と遊んでいた指が止まったのを
訝しがった紅葉が首を傾げる。
 「ん。静かにすればわかるよ、紅葉。耳を澄ませてみればいい」
 ぽんぽんと紅葉の手の甲に軽く自分の掌を乗せながら囁くと、紅葉は長い睫毛を伏せた。
 「……ああ、除夜の鐘か」
 息を殺すまでもなく、そんなに遠くもない鐘の音は腹の底に響くように聞こえてくる。
 習慣とは恐ろしいもので、たかが鐘の響きなのに、古い一年が過ぎ去って新しい年を迎える
気になってしまうのだから不思議なものだ。
 「何回目かは分からないけどな。とりあえず……あけましておめでとう、紅葉。でもって今年
  もよろしく」
 背中に向かって、こつんと額をあてて新年の挨拶をした。
 「…それじゃあ、駄目だよ」
 喉で笑った紅葉は、まだ身体をふらつかせつつ、俺の正面に向き直って丁寧に正座をする。
 着物は気怠げに着崩れたままだったけれども。
 背筋をぴしと伸ばすと淫らがましさが失せるから、日本の作法とはなかなかに面白いもんだ。
 「あけましておめでとうございます。本年もまた、よろしくお願いいたします」
 深々と三つ指までついて頭を下げられてしまった。
 「紅葉もそーゆーとこ。折り目正しいよな。先刻まではあんなに奔放さんだったのにさ……」
 「緋勇…」
 「あーはいはい。もー言わないから!苗字で呼ぶのは勘弁して」
 居住まいを正してから、俺も床に指先をつけて作法通りに頭を下げる。
 「本年もまた、よしなに」
 顔を上げると満足そうな紅葉が、華やかに笑った。
 それこそ新年に相応しい、鮮やかな笑いって奴だ。
 目の端がおっとりしているのは少し眠たいせいだろうが、それがまた艶っぽくって照れる。
 俺が照れてもしょうがないんだが、照れでもしておかないとまた、獣になってしまいそうだったので。
 大人しく照れておく。
 「さて、そろそろ行こうか?」
 ようやっとバランスをとりながら緩慢な動作で以って立ち上がった紅葉が、肌をさらして着物を
整え出す。
 長着を脱いで長襦袢姿になってから紐を結び直した。
 「紅葉―俺のは?」
 「僕のを直したら、ちゃんとにしますよ」
 捌きにくかったのか紐の端を口に銜えながら調節して、お母さんの前で着替えた時よりもずっ
と手早く素肌を包み直している。
 「…紅葉…?」
 見ていると当然のようにちょっかいをかけたくなる。
 ついつい足首を掴んだら、すげなく足先で払われてしまった。
 「退屈なら、後片付けでもしていてください?」
 とっても冷ややかな眼差しに、しぶしぶ肩を竦める。
 「はいよう…」
 気が進まないのは今更だが、紅葉の体が冷え切ってしまってはまずい。
 これ以上邪魔をしたら風邪をひいてしまう可能性もあった。
 新年早々寝正月なんて情けないこと、この上もないので努めて避けたい所だ。
 「あーそうそう、紅葉?」
 「ん?どうかしたのかい」
 「帰ったら、ちゃんとに着物脱いでやろうな、姫初め」
 汚れたティッシュなんかをビニール袋にせっせと詰め込みながら、立ち姿で着物を整えてい
る姿を見上げる。
 「本当に……困った人、だよね……龍麻って、さ」
 息を吐きながらの言葉は、遠回しの承諾の返事。
 俺はにやりと笑って、片付けの続きにと従事した。




 *主人公×壬生
  いやー長かったです(笑)
  古い作品だったので、データがなかったのも手伝ってちくちく手直しをいれながら打ち直
  したんですけど、しみじみ文章変わってますね。
  少しは上手くなったのかどうか、自分では判断がつきかねます。とほん。
                                                                         



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