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  奪いましょう。



 男の身体を犯したのも、輪姦に参加したのですら初めてではなかった。
 自分の性器が大きいのもあるが、輪姦陵辱ならば最後が良いと常々思っている。
 ターゲットが処女なら少しは考えるけれど、経験のある場合はその方が断然楽だからだ。
 根本的にスプラッタが好みではない。
 血は綺麗なので、見るのが好きだけど。
 それに関する痛みや損失までを好む訳ではないのだ。
 受身を強制されるという時点で壮絶な陵辱だと言える。
 ならばせめて。
 快楽に爛れさせる事ぐらいは、しても良いのではないか。
 自分ではない誰かの手によって強引に蕩けさせられた体を穿つのは、そういう意味で嫌いで
はなかった。
 挿入もスムーズだし、泣き叫んでいた口で、甘ったるい嬌声を放つ相手を見れば、行為その
物が肯定された気分になる。
 実際、ブラギンスキに陵辱されたモノは大半が完全に屈服して、絶対の従順を違う。
 男は恐怖から、女は快楽からという理由もほとんど変動がない。

 ただ、何時の世も例外というものはある訳で。

 「そんなに、僕の事。嫌いなのかなぁ」
 口に出してみれば更に悲しみが深くなって、ブラギンスキは飲み始めて既に三本目となる
ウオッカの封を切った。
 「あれだけ、熱くなっていた体が。僕にされた途端。僕より冷たくなっちゃったもんなぁ」
 好かれているどころか嫌われているのは知っている。
 国としての関係も去ることながら、個として対峙しても彼には、優しく何てしてこなかったから。
 「だって、さ。菊の好む優しさなんて披露出来ないよ。あんなにたくさんの奴等から、甘やかさ
  れているんだから」
 自分への好意に鈍感な菊はその分、悪意には敏感だった。
 だから、できる限り悪役を演じていたのだ。
 少しでも彼の中に、ブラギンスキが残るようにと。
 「でも、あんな悲しい反応をされるくらいなら。もちょっと。時々優しくしてあげれば良かったか
 な?」
 彼の言う萌に確か。
 ギャップ萌というのがあったはずだ。
 普段冷たい者が優しくすると、その落差に印象づけられるという風な。
 「……イヴァン兄さん。ペースが早過ぎです」
 「ナターリャ……」
 何時の間に側に居たのだろう。
 近しい者でもわからない。
 もしかするとブラギンスキにしかわからない、困惑の表情で。
 ナターリヤはブラギンスキの隣の椅子に腰掛けている。
 我に返れば彼女が自分の近くに侍るのは今に始まった事ではないが、その気配すら感じさせ
ないのは珍しい。
 それだけ自分が、思考の迷路に捕らわれていたのだと解れば、出てくるのは溜息ばかり。
 「せめてつまみを召し上がって下さい」
 ウオッカの匂いしかしない大きな溜息を吐くブラギンスキの前に、ことことと器や皿が置かれ
る。
 料理上手ではない彼女の手による微妙な味付けのボルシチにピロシキ、シャシリクにペリメニ、
カーシャなどと共に用意された中、一番彼女の手が掛かっていないだろうと思われる塩ニシンの
燻製を最初に手にしたのを、どうか責めないで欲しい。
 ナターリヤの料理を一度でも食べたことある者ならきっと、わかってくれるだろう。
 ナターリヤに好意を寄せ、更には温和で知れているロリナイティスですら、口にすれば困った
顔を隠しきれないのだ。
 燻製にしてはしんなりとした食感のニシンを噛み千切って、染み出てくる塩味を楽しむ。
 こちらのニシンは低温でソフトに燻製していますからね! 
 やわらかくて食べやすいんです。
 貴方にじゃあ、ありませんよ? 
 好きだと言って下さったナターリヤさんに上げるんです!
 と言いながらも、どう考えてもナターリヤ一人で食べるには酷な量を贈って寄越した菊の、
ぽこぽこと怒っているような表情が浮び、早口な声が聞こえた。
 「あんなにたくさん贈って頂いたのに、もうなくなってしまいそうですね」
 「うん。僕と君と、姉さんとで随分たくさん食べたもんね」
 「一番頂いたのは、兄さんだと思いますよ……菊さんに、オネダリしてみたらどうでしょう?」
 「僕が言っても無理だよ! あらあらどのお口が、そんなずうずうしい事をおっしゃるんでしょ
  うねぇ?、って」
 「……兄さん。菊さんは、そんな露骨な物言いを決してされないでしょう?」
 交わす言葉の合間合間に己が作った手料理の味見をして、これは油を使い過ぎ、これは塩
が飛んでいない、これは甘さが控えめ過ぎと、実にブラギンスキの好みにあった味で的確に
評価をしてゆく。
 毎回熱心に検証もしているはずなのに、何故味付けが落ち着かないのかは疑問だ。
 その懸命な様子に心を動かされ、やっぱり彼女の手が比較的加わっていないと思われる
シャシリクに手を伸ばす。
 シャシリクとは、その家庭独自の調味料に長時間漬け込んだ肉の事を指す。
 ちなみに今日饗されたのは羊肉だった。
 色々なハーブを使ったらとんでもない味になってしまったので、ハーブ禁止令を出したら、
今度は酢がきつくなった。
 羊肉の独特の匂いを消そうと躍起になっている彼女を見てしまうと、文句も言えないんだけ
どね。
 しかも今回は黒胡椒を使い過ぎで、焼き過ぎだ。
 菊なら、香ばしさが最高ですよ、ナターリヤさん! と褒め称えるだろう。
 菊は、ナターリヤに滅法弱い。
 元々彼が大好きな、兄が大好きで仕方ない妹、という設定に加えて



                                    続きは本でお願い致します♪
                                   前向きな妹に、後ろ向きな兄。
                                   二人揃って菊たん、らぶです。



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