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  The different world




 「私は、バイルシュミット・ギルベルトの恋人です。この先の生涯彼だけを愛してゆくでしょう」
 以前から、子供じみた執着を見せてきたブラギンスキを警戒してきた本田だった。
 だからこうして今、日本宅で。炬燵の中から引きずり出されて押さえ込まれても動揺は微塵
もない。
 「どうしても? ギル君が良いの」
 「ええ。私、恋愛って尊敬する面がないと駄目なんですよね。昔から筋金入りでして」
 バイルシュミットが初めての恋人だ何て言えるほど、国の化身の立ち居地は甘いものでは
なかった。
 過去には強制された行為に泣き叫んだこともある。
 数多の女性を愛もなく侍らせたりもした。
 現在における普通の恋愛をようやっと許された当初、漠然と決めた己に対する制約の中に。
 恋人は、尊敬できる面を持っている事というものがあった。
 今では恋愛における一番大切な戒めとなっている。
 本田に取って恋愛を長く続けるための必須条件なのだ。
 「……ああ。ギル君は君の、師匠なんだよね」
 「はい。あの方は、私が唯一人師匠と呼ぶ方。そして敬愛できる方」
 「だから、恋人なの?」
 「それだけでもありませんが。私兄属性の方に弱いですし」
 「僕も、兄属性だよ」
 「でも、弟属性でもあるじゃないですか」
 案外と面倒見が良いのは知っている。
 幾度も絡まれればそれを回避しようと相手を調べるのは本田の習性のようなものだ。
 根本にある感情が『皆、僕の物になればいいのに!』と公言して憚らないブラギンスキだけに、
誤解されやすいというか、誤解しかされていないのが、少々不憫でもあるのだが。
 彼は自分の手の内に囲ってさえしまえば概ね寛容になる。
 相手の感情が邪魔をして素直には受け入れないことの方が多いようだが、ブラギンスキな
りに情の篭ったちょっかいを出しては、慈しんでいるのが見て取れた。
 「それに私。貴方のことは尊敬できないと思います」
 本当を言ってしまえば、探せないこともない。
 だが、本田は唯一の敬愛はバイルシュミットに捧げると決めている。
 揺るがない感情こそが至高の愛情だと信じる本田は、誰に何を強制されてもバイルユミット
へ愛情を変化させることはない。
 それだけ、溺れている。
 「ふーん。そうなの」
 「ですから、無駄なことは止して下さい。貴方と鍋を囲むくらいはしてるんです。これ以上する
  なら出入り禁止にしますよ」
 国同士の関係が以前より幾分かやわらいだせいか、胸の奥からこみ上げてくるような彼への
憎悪はめっきり薄らいでいる。
 アポなしで訪れてくる鬱陶しさはジョーンズと大差ない。
 ブラギンスキが本田好みの食材を土産に持ち込んで居座ってしまうからだという言い訳も、
する気も起きないくらいに繰り返されてきた結果。
 炬燵の上には、鍋の用意がされた今の状態がある。
 「出入り禁止は嫌だなぁ」
 「じゃあ、さっさと退きなさい。鍋の具が煮えすぎます」
 「……じゃあ、さ。菊君」
 「はい」
 「ギル君がいなくなっちゃったら、僕を恋人にしてくれる?」
 「まさか!」
 ブラギンスキの恐ろしさは骨身に染みて知っている。
 だからこそ、本田は間髪入れずに鼻で笑い飛ばしたのだ。バイルシュミットに決して害が
及ばないようにと。
 「そう……居なくなっても、関係ないの」
 「って言うか。あの人。私を置いて逝かないって約束してくれましたから」
 国の化身足る者。
 何時如何な理由で消滅するか分からない。




                                    続きは本でお願い致します♪
                                   何故かイヴァン様→菊たん風。

            最近密かな露日ブームですが、この話はあくまでギル菊ですよ。

 


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