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  ただ、奪いたい。



 忙しいです! とプライベートになった途端、八橋を使わなくなる恋人の首根っこを捕まえて、
アメリカの別宅まで連れて来た。
 本宅に連れ込むと漏れなくカークランドが嗅ぎつけてくるからだ。
 別宅でもばれそうな気がしないでもないが、ここは菊を恋人にすると決めた日に買った家。
 ニューヨークのリッチモンド郡スタテンアイランド区にある。
 自然が多く、都心部へも出やすい。
 観光客も多いが住宅地ともなれば、長閑な風景が広がっており、住みやすい地域でもあった。
 「すっごい量なんですけど……」
 テーブルの上に並べたアメリカ料理は、菊の為に野菜を中心にしたヘルシー仕様だが、
菊には量が多過ぎるらしい。
 魂が抜け出しそうな溜め息をつかれる。
 「君が食べられない分は、俺が全部食べるから安心すると良いよ。俺だって勿体無いおばけ
  に襲われたくないからね」
 安心させるようにと、ばちーんと、ウインクをすればやれやれと首を振られてしまった。
 「俺のオススメは、サブマリンサインドイッチとクラムチャウダー。最初はバッファローウイン
  グを食べること」
 ジョーンズが皿を指差して説明すれば、菊の瞳がきらきらと輝き始める。
 サブマリンサンドイッチはローストビーフをメインにしたものの、トマト、キュウリ、ピーマン、
タマネギ、ピクルスなどの野菜をふんだんに使ってある。
 三本あるそれはそれぞれ三十センチ程度あるので、食べたい分だけ切れば良い。
 パーティーなどでは何メートルにもなるサンドイッチが並ぶのだから、これなどは可愛いもの。
 クラムチャウダーはニューイングランド風で白いクリームスープ仕立て。
 中身は日本ではあまり流通していないホンビノスガイをメインに、タマネギ、ニンジン、ジャガ
イモをたっぷり。
 本当はベーコンも入れたかったのだが、ぐっと我慢した。
 「私。バッファローウイング食べるの初めてです」
 「だよね。だから並べてみた。君は俺と違って酸っぱいのも辛いのも平気だからね!」
 「普通ですよ。貴方がお子様味覚なだけですよ」
 「恋人を捕まえて酷い言い方なんだぞ! まぁ、俺はヒーローだから許してあげるけどさ」
 口を尖らせながらも、菊の取り皿に肉を二本とセロリ、ブルーチーズのドレッシングを乗せる。
 「一本目は、ドレッシングなしで、二本目はドレッシング付で食べてみるといいんだぞ。俺は
  絶対にドレッシング付じゃないと無理だけどね」
 「それでは遠慮なく……いただきます」
 両手を合わせて、こっくんと頭を下げた菊はバッファローウイング……と言っても実は、鶏の
手羽を揚げた物……を口に入れた。
 「っつ! 確かに、酸っぱ! 辛っつ!」
 「だよねー」
 「お酒が欲しくなる味ですねぇ」
 「うん。だから前菜扱いなんだよ、この料理」
 「なるほど……あ! でも、ドレッシングつけると随分マイルドに」
 「ブルーチーズ駄目だと悶える羽目になるけど、平気ならやっぱりこっちだよ」
 「私は、どちらも捨てがたいですね。ああ、日本酒飲みたい。この辛酸っぱさには、きりっと
  冷やした日本酒があうと思うんですよ!」
 拳を握り締めて力説する菊は、かなりの酒好きだ。
 そして強い。
 彼女の酔っ払った姿が見たいと挑戦する輩は多いが、共に撃沈することに成功したのが
王とブラギンスキのみという凄まじさ。
 ちなみにジョーンズは外見年齢未成年につき、飲酒を許されてはいないので論外だ。
 「残念! ビールとコーラしか置いてないんだぞ!」
 「……コーラはご遠慮申し上げたいって! どうしてビールが常備なんです?」




                                    続きは本でお願い致します♪
                    まだ、米と英を仲良しさんにするかしないか迷ってます。




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