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  縋られて、絆される。It clings, and it ties.



 ぱちりと眼を開けば、自室の天井とは違う、しかし下手打ったらそれ以上に見慣れている本田
宅の天井。
 彼が通常纏う雰囲気同様、やわらかく、しかし掴み所のない色目をしている。
 「家が、主に似るなんて話。聞いたことがないんだぞ!」
 ぶーぶーと、我ながらどうでも良いケチをつけてしまうのは、本田の何もかもを知りたいと
思っているからだと、ジョーンズは本人意識しなくとも、理解している。
 大きな欠伸を一つして、隣を見た。
 あれだけ抱き合って、最後は失神までさせても本田は朝。
 ジョーンズより遅く起きることはない。
 「ちぇ! あんなにしても見れないなんて、酷いよ!」
 今日こそは、菊の寝顔を陽光の下で堪能しようと思っていたのだ。
 彼の真っ黒くて綺麗な独特の瞳が、ジョーンズを見て照れながら、おはようございます、と言う。
 その愛らしい額に朝一番のキスを贈る……と、どこかの少女漫画に出てきそうなシーンを実行
してみたいと長く思っているのだ。
 が、しかし。
 何よりも優先し、誰よりも大切にしている恋人はとても手強かった。 
 「アーサーの奴。絶対に嘘吐いてるよなぁ」
 目を細めてテキサスを探す。
 本田が邪魔にならないように避けて置いてくれたらしい。
 枕の側が定位置のティッシュボックスの上に、ちょこんと乗せられている。
 「……っていうか、君。自己主張しすぎじゃないの?」
 本田が好んで使うメーカーの箱ティッシュは、繊細な刺繍が施されたティッシュカバーに包まれ
ている。
 全く興味のないジョーンズでも、悪くないと思う配置で色鮮やかな菊と薔薇の模様が浮き上がっ
ていた。
 「寝室ぐらい、こーゆーのは勘弁して欲しいんだよね」
 溜息をつきたくなるくらい、カークランドの侵食は凄まじい。
 ジョーンズよりも本田宅を訪れる頻度が低いせいかもしれないが、やっぱり彼の性格だと思う。
 昨晩も、日本へ行くんだぞ! と報告すれば、今日は、菊が起きる前に起きれるといいな! 
 と嫌味を言われたのだ。
 ジョーンズの記憶では、カークランドの朝も早いが、本田を上回るほどではなかったと思うの
だが、カークランドは何時だって、本田より早く目を覚まして、彼が起きるまで、その愛らしいと
しか表現がしようがないという寝顔を堪能するらしい。
 一晩中起きてるんじゃないの? と言ったら、それとはまた別の話で、と返された。
 カークランドの本田への執着は半端ではないのだ。
 筋金入りとか、魂に刻み込まれていると言い替えても大袈裟ではない。
 ジョーンズとて、彼への愛情では引けを取らない自信はあるが、時々カークランドの執着の
凄まじさには、白旗を上げたい気分になった。
 「まぁ、ヒロインを守るのはヒーローの役目だからさ。絶対に負ける気はないんだけどね!」
 と口に出して言ってみたものの、なかなか気持ちが落ち着かず、ティッシュカバーをぷすぷす
と指差して転がす。
 「おやおや。起きていらっしゃるんなら、遊んでないで、服くらい着て下さい」
 諦めに近い溜息をついた本田は、ジョーンズからティッシュボックスを取り上げて枕の側、
仁王立ちをしている。
 何時の間に来たのだろうか。
 本田は時々忍者のように気配を消して近づく癖があるのだ。
 止めて欲しいんだぞ! と抗議しても、趣味ですから、とかわされる。
 基本は、相手が押したら素早く引くのが本田の信条だが、趣味に関して彼は一切の妥協を
許さない。
 オタク活動しかり、カークランドとジョーンズ二人を情人にしているのもしかり。
 こうした些細な拘りにまでも一歩も譲らなかった。
 「嫌だよ! まだ、全然したりないんだぞ! マイサンだって、ほら。見てくれよ!」
 朝勃起をした性器を、本田に見せ付ける。
 陽光の下で見るナニは、なかなかにグロテスクだ。
 「……せっかくの朝ご飯が冷めますが」
 じろりと憎憎しげにジョーンズを睨んだ本田の、耳朶がちょっとだけ赤い。
 「菊が、ぱっくんて、してくれれば、すぐ終わるんだぞ」
 そんな様子だったので、ご機嫌に言葉を続けてみたが。
 「朝からそんな濃ゆーいたんぱく質なんて取りたくありません」
 本田はつれなかった。朝から抜かずの三発に付き合ってくれる事もあるので、もう一押しして
みるも。
 「大丈夫だよ。昨日散々したから、今日はちょっとうふめらんらから」
 途中で、うにーっと、容赦なく両頬の肉を引っ張られて、気の抜けた口調になってしまう。
 「薄かろうが濃いかろうが、朝からフェラを強要する、恥知らずに付き合ってる暇はありま
  せん。私、お腹が空いているんです!」
 お腹が空きすぎているらしい本田には通用しなかった。
 ちぎー! と、どこかの誰かのように怒気を撒き散らしながら、寝室を出て行ってしまう。
 「ちぇー仕方ないか。マイサンには、俺のゴールデンフィンガーで我慢して貰おう」
 ジョーンズは、ふわわと顎の外れそうなあくびを一つして、全裸のままで風呂場へと向かっ
た。




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                                     三つ巴は楽しいですよね!
                   攻め同士が、物凄くいがみ合っている設定も大好きです。
                    




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