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  雪肌



  なんてーか、こう。
 自分でも色惚けだなーとか、思うんだけど。
 「……ごめん」
 俺の腕の中、瞬間呼吸をとめたまま崩れ落ちた紅葉に頭を下げる。
 「やっぱ。あれだよな。ぬかずの三発ってーのは、こたえるよな?」
 しかも、深夜まで人殺しに励んでいたその身体に与えた日には。
 快楽を通り越した暴力って奴だ。
 「……まあ、ね」
 目を閉じたまま、激しく胸を上下させて喘ぐ唇が、かろうじて返事をくれる。
 「俺もさー。もそっと会えれば、セーブできると思うんだけどなあ」
 例えばこうして抱き合わなくても。
 二人で、や。
 いっそ何人かいたって。
 くだらない話をして、ビデオ鑑賞をしてみたり、徹夜麻雀あたりをやるとかっ
て、いうんでもいいんだ。
 せめてもう少し。
 一緒にいられる時間があれば。
 「無理、だよ」
 「わあってるって!……言ってみただけだ」
 拳武館を卒業したからといっても、暗殺業から足を洗えるはずもなく。
 鳴滝の目が届く大学へ入って後も、真面目な紅葉は学業に、人殺しにと日々
忙しい。
 幾らなんでも、大学について行くわけにもいかねーし。
 暗殺を手伝うなんてーのは以ての外。
 せめて二人きりの、僅かな時間。
 紅葉にゆっくりして欲しいよなーとか。
 思うには思うんだけど。
 いざ、紅葉を前にしてしまうとそうもいかない。
 今だってそうだ。
 もうほとんど眠りに落ちかけて、特有のもったりとした話し方になった紅葉に。
 ほとんど無理強いの唇を寄せて、行為に挑んだ。
 それもいきなり……連続三発で……。
 人様から聞き及んで、んなものできるかっと叫んでしまった、抜八(抜かずの
八発!)だって、紅葉相手ならできるんじゃないかなーとか?
 ……ほんと、駄目駄目だよなー。もう。
 「そんな、情けない顔。しないで欲しいものだ、ね……」
 「紅葉」
 「僕だって、できる限り。君と一緒にいたいと思ってるよ…」
 どちらかといえば、人が嫌いで。
 ひーちゃん以外には決して懐こうとはしなかった紅葉が、無茶苦茶としかいえ
ない俺の無謀に近い愛情って奴を、流しもせずに真っ向から受け止めてくれる
時点で、紅葉が、俺を。
 自分の都合なんかよりもずっと、ずうっと大切にしてくれてる。
 ……なんて事がわからないほど、俺も無神経な人間じゃあない。
 「京、一?」
 「ん?……ああ、情けない顔をしてたのは。何でせっかくこう。紅葉と二人っき
  りでいられるのに。もっとさ。のんびり……休ませてやりたいんだけどよ。
  どーも俺が突っ走るからさー」
 あんまりのお馬鹿さ加減に嫌われたりしねーかなー。なんて。
 怖くて言えやしない。
 「何を、馬鹿な」
 「馬鹿っ?」
 一応俺的には、紅葉さんの身体のこととか思っていってるんですけど!
 俺の紅葉に対する、真剣な部分まで、馬鹿扱いされた日にはさすがに黙っち
ゃあいられない!
 ……と、息を大きく吸い込んだ唇は、そのまま紅葉に塞がれた。
 しかも、結構。
 濃厚な奴。
 根元から舌を絡められて、思い切りもよく吸われる。
 極めつけ。締めに、上目遣いで。
 舌先を、ちくっと噛まれた。
 あーもう。俺が何もかも悪かったです!ってなもんで。
 ふにゃんとばかりに骨抜きだ。
 「君といる時が、僕の安らぐ時なんだと。口に出していわないとわからないの
  かな、この人は」
 実はまだ入りっぱなしだった、それが、きゅっと締め付けられる。
 「でもって、こうやってSEXしてる間も。落ち着くって」
 俺を感じさせる意図を持って揺らめく腰の動きってーのが、また。
 たまらない。
 快楽に溺れきって、無意識下で貪欲に振られる腰も逸品だけど。
 こうして、俺の目を真っ直ぐに見詰めて。
 「だって、SEXは他の誰でもない、君としかできないからねぇ」
 微笑まれたらもう。
 「紅葉っつ!」
 やるしか、ねぇよなあ?
 「ちょっ、京一」
 そいやっとばかりに、紅葉の身体を再びベッドに静める。
 スプリングも優しいベッドと肌触りが心地良いが、ふやんと俺の暴挙をやわら
かく抑える。
 途中。
 ぬちゃ、と交接音が滴るように響いた。
 「ったく…………しょうがない、ね」
 覆い被さる俺の額に、唇が触れる。
 「へへっ」
 口の端を上げたまま、瞼を伏せた紅葉にお返しのキスをすると。
 四度目の到達に向けて、紅葉の艶やかな肌に指を滑らせながら奥底を貪り
始めた。




*京一×壬生
 あ、あれ?短い(泣)
 もっと続くはずだったんですけど。
 っていうか、入ったままだったんですか!
 やるなー京一。
 そして伝説のぬか八へ……やれやれ。                            




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