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  迫られて、落とされる。It is urged, and it is dropped



 「……ヴェスト」
 「……何だ、兄さん」
 ここしばらく憑かれている堂々巡りの思考に落ちていたら、バイルシュミットがルートヴィッヒ
の背中を肩を叩いた。
 ふん! と忌々しそうに鼻まで鳴らされる。
 「悪い事ぁ言わねー。とっとと、当たって砕けて来い」「そうは、言うが!」
 いい加減、愛想もつきたぜ! と突き放される物言いにも、そこまで愚痴を聞かせ続けた経緯
もあったので仕方ないと思いつつ、一応反論を試みるルートヴィッヒだったが。
 「お前も限界だって、わかってんだろ? 日常生活に支障が出るほど、追い詰められてんだか
  らよ。どっちに転ぶとしても、感情の蹴りはつけた方が良い」
 バイルシュミットの冷静な言葉に、ぐうの音も出ない。
 「んな、面すんな。俺の愛弟子は情が強い。お前が、真摯な態度で挑めば、きっちり答えを
  くれるだろうよ」
 「……わかっている」
 それでも、今まで一歩が踏み出せなかった。
 今の関係も、物足りなくなってしまったとはいえ、かなり良いものだったからだ。
 本田は多くの存在から好意を持たれる不思議なフェロモンを持っている。
 それは恐らく、彼の数少ない逆鱗に触れさえしなければ、稀有な穏やかさを常に保っている
せいだろう。
 誰も見たことがない地獄を見、そこから生還した経験を持つからか、どんな弱さをも決して、
真っ向から攻めることがないというスタンスもレアだ。 
 生真面目過ぎる性質が災いしてか、弱音を吐けないルートヴィッヒの苦悩を、本人も気付かぬ
搦め手から忍び寄り、気が付けば存分に吐き出させてもくれた。
 手離せない存在だと思ったのは、第二次大戦時。
 フェリシアーノが戦線を離脱して敵に回り、二人きりで世界を敵に回した時分。
 それが恋なのだと気が付いたのは、もっと遅く。
 本田がジョーンズの情人だと囁かれるようになって、年単位の時間が流れてから。
 以来。
 ずっと、悩んでいたのだ。
 「はぁ……お前の『わかってる』も、聞き飽きた。で。恋愛上手のトーニョとフランから、アドバ
  イス貰ってきたぞ」
 「……どんな?」
 上がった名前に、眉根を顰める。
 「俺様が、キューピットになってやる!」
 嫌な予感が当たった。
 彼等は、バイルシュミットの悪友。恋愛事には自分並みに疎い兄を揶揄って楽しむ悪癖が、
遥かに昔からあるのだ。
 「気持ちは嬉しいが……」
 「うんうん。どうせ、お前がそやって遠慮するから先回りして手配しろって、フランが!」
 ボヌフォワへの対策は、カークランドに頼むことにしよう。きっと彼は快諾してくれるだろう。
 本田を通じて付き合ってみれば、案外と生真面目な性質には好感が持て、俺様仕様な面
ですら、バイルシュミットで慣れていたので、抵抗は少なかった。
 こちらが好意を持って接すれば悪い気はしないらしく、何かと贈り物が届くようになって、
随分な時が経つ。
 また、ジョーズ溺愛暦が長かった彼らしく、年下の者に頼まれ事をされると、ケチを付けつつ
も最終的に面倒を見てしまう傾向にあるらしい。
 お前の為じゃないからな! と言いながら、ルートヴィッヒに都合よく手配をしてくれた事も、
そろそろ指折って数え切れなくなってきたくらい。
「だから、お前が菊に折り入って二人きりで話があるから、都合つけとけ! って電話しといた。
 そしたら明日から三日ばかり、大丈夫だとさ」
 「何だって! そういう事は、もっと早く言ってくれ!」
 「言ったら、お前。その日までぐだぐだしまくるだろ」
 「その通りだが、明日出発では手土産の手配する時間もないだろう!」
 「ふーふん。それも大丈夫。既に手配済み! うちからジャガイモ、フランとこからワイン、
  トーニョんとこからトマトを送っておいたぜ」
 ワインはさて置き、ジャガイモとトマトはどうなのだろう。
 料理上手な本田なら喜んでもくれそうだが。
 「んで。向こう着いたら当然、告白だ! 俺の為に毎日、食事を作ってくれ! で完璧やで! 
  ……ってトーニョが言ってたぞ」
 このご時世、妻だけに料理を押し付けるようなプロポーズは、駄目だろう。
 せめて、自分も一緒に作るぐらいのアピールをしないと!
 ……ではなく! 
 バイルシュミットからのアドバイスならいざ知らず、そんな腑抜けたアドバイスを寄越すカリ
エドは、もしかしたらボヌフォワより性質が悪いのかもしれない。
 カリエドの抑制はロヴィーノに頼むことに決める。
 ルートヴィッヒからの頼み事など、鼻で笑って断るだろうロヴィーノだが、事、本田が絡むと
話は別だ。
 彼も本田には最高に甘いのだ。
 渋々引き受けたとしても、きっちりと仕事をしてくれるに違いない。
 「告白の言葉ぐらい、自分で考える」
 「だよなー。さすが俺様の弟! っつー訳で、仕事諸々のスケジュール調整は俺がすっか
  ら、今すぐ行け!」




                                    続きは本でお願い致します♪
                              全く以ってギルがでばってすみません。
                                   本当書きやすい人なんですよ。
                 独と伊を出す時は、ロマと普が必ず出張っちゃうんですよね。



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