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  Prayer X 本田菊


 「……菊! わざわざ来てくれたのかい?」
 「ええ。アーサーさんに請われまして」
 「ああ……だから……」
 アメリカの中でも、静かな州と言う印象の強いアーカンソー州の片隅にある、こじんまりと
した別宅の中で、これだけは彼らしいクイーンサイズのベッドの上。
 訪ねて来た本田を見て、身体を横たえていたジョーンズは飛び起きてすぐ、力なくベッド
ヘッドに背中を預けた。
 「アーサーさんが、心配してらっしゃいましたよ? 全然食事をしないと、そう言って」
 「君も知っているだろう、菊。彼の食事は致命的にまずい。今の俺にはとんでもない拷問だ
  よ!」
 「はぁ。そんな事だろうとは思いました。食材を持って来ましたから、少し待っていて下さい。
  お肉は食べられそうです?」
 「うん! 大丈夫だよ!」
 以前本田の側を離れなかった時に良く見た、子供のように無邪気な笑顔が浮ぶのに頷いて、
キッチンへ向かう。
 カークランドとウィリアムズが交替で……どちらかと言えば、カークランドの頻度が多いよう
だが……面倒を見ていると聞いていた。
 キッチンは二人の性格もそのまま、きちんと整理されていて使いやすい。
 「私達国の化身も、人間と同じように。心も身体も満たされれば、他者に対して寛容になれる
  ものですねぇ……」

 三ヶ月前。
 アメリカ合衆国の五十州内、半分が独立もしくは、独立する州に合併される調印がなされた。
 アメリカ合衆国全土に広がった薬物汚染に対して、有効な打開策を見出せなかった国に
絶望した為だと。
 運動の中心となったテキサス州の州知事が声も高らかに宣誓している姿を、何度もテレビ
中継でみたものだ。
 最友好国とされた日本ではあるが、あくまで国の中での出来事と言う事で、独立する側、
される側両方からの圧力にも屈せず沈黙を守り通した。
 最中の世論調査では、この一件でアメリカの庇護を失っても良いという意見が八割を超えて、
驚かされたのはまだ記憶にも新しい。
 結局、日本としては今まで通り。
 しかし、首相は頃合を見て条約の改正を打診しており、今年中には日本に有利な条約改正
がなされるだろうと、豪語している。
 現実的に想定通りになるかは神のみぞ知る、という所だが、このまま行けば以前より日本に
有利な改正になることは間違いないだろう。
 独立には、金がかかる。
 独立された側は、それ以上に金が必要だ。
 日本の機嫌を損ねる訳にはいくまい。
 その一環としてなのか早々と、ジョーンズからの本田への訪問が禁じられた。
 本田がジョーンズを疎んでいたのは、両国の上司の間で有名だったからだ。
 彼は、暴れて喚いて大変だったようだが、既に力を失っている身では、上司の命令にも逆らい
ようがなかったようで、時間を置かずに今の家へ、言葉は悪いが幽閉されたと聞いている。

 病人というほどでもないが、体力気力が落ちているのは間違いない。
 本田は、何故か普段使われているだろう鍋と一緒に置かれていた土鍋で、ご飯をやわらかめに
炊き上げた。
 味見をすれば本田にはやわすぎる白米も、ジョーンズには好みの感触に仕上がった。
 つけ合わせに、ポテト、ニンジン、インゲンのソテーを作る。
 こちらは冷凍物を拝借したが、どれもウィリアムズのセレクトらしく、しっかりしたメーカーの
ものなので、問題ないだろう。
 スープは片栗粉でとろみを強くしたコーンスープ。
 クルトンと乾燥パセリを上に振り掛ける
 メインは和牛の厚切りステーキをレアで焼き上げて、そのまま皿の上に、どんと乗せた。
 ジョーンズは、自分で肉を切り分けるのが好きなのだ。
 「離れて三ヶ月弱くらいじゃあ、好みも忘れませんよね」
 こいつさえいなければ、と何度も思った。
こうして離れてせいせいする自分がいる。
 けれど。




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