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  Prayer W アーサー・カークランド



 「お前さぁ。ぶっちゃけ、どっち取んのよ。ギルには啖呵切ってたけど。実際問題、どっちも
  選ばないってのは不可能でしょ」
 ボヌフォワの冷静なコメントに、カークランドは無言で立ち上がるとサイドボードに足を向け、
その中から取って置きのスコッチウィスキーを取り出す。
 ストラスアイラ。
 スペイサイドおよびハイランド北部で最も古い蒸溜所とされている所で造られたものだ。
 ここのスコッチは仕込みの水に、泉の水を使用している。
 昔から泉の精が住んでいると言う噂があって、実際住んでいる。
 水の精霊は四大精霊の内でも、美しい妙齢の女性として描かれる事が多いのだが、
この泉に住む彼女も美しい。
 長い髪は艶やかな光を放つプラチナブロンドで、瞳はペリドットを思わせる淡いグリーン。
何時訪れても、十代後半の若々しい肢体をしている。
 今年はわざわざ、泉を離れてカークランドの元を訪れ、良いスコッチが出来たと持ち込んで
くれたのだ。
 一ダースあった内、二本だけを出して、後はワインセラーで寝かせてある。
 程よく寝かせたスコッチの味は逸品だが、出来たてもなかなかの風合いなのだ。
 「あーもー。お酒入らないとしゃべれない訳?」
 「そんな事はねぇけど……」
 「全く……美味い酒なんだろうな」
 「そりゃ勿論。泉の彼女が直々に持ってきてくれたんだからな!」
 「……はいはい。大変結構なお話でございますよ!」
 妖精の話をすると、普段から邪険な物言いをするボヌフォワの口調が、一段と酷いモノになる。
 昔はこいつも見ていたはずなのだが。
 菊的言い回しを借りるとそれは、黒歴史、なんだそうだ。
 さっぱりわからない。
 「貴様は本っつ当。妖精絡みの話が嫌いだよな」
 「うん。聞く度に何だか、物悲しい気持ちにさせられるかんね」
 「言っとくけど、菊も見れるぞ、妖精」
 「すっごいよねぇ。だってさぁ。普通バージンしか見えないでしょ、妖精とかって。げふあ!」
 菊を侮辱する言葉と頭が認識した途端。反射的に回し蹴りを放っていた。
 奴は、大好きなコミックスに出てくるキャラクターのように、くるくると景気良く空中を舞う。
 「おま! 手加減しろっつ」
 「菊を侮辱する、お前が悪い」
 「侮辱なんかしてないって! バージンじゃないのに、妖精の類が見えるって事は、それだけ
  心が純粋なんだって、事だろ?」
 「ああ」
 「ほら、褒めてるじゃんか!」
 「は! お前の言い方がイヤラシイのが悪い」
 彼女は処女にしか見れないと言われるユニコーンが見られるどころか、触れて、乗れる。
 しかもユニコーンは菊を背中に乗せてとても嬉しそうだった。
 曰く、ここまで心根が澄んだ方は珍しいです! と言う事だ。
 争いを厭い、血の匂いを嫌うユニコーンに、そこまで言わせる存在は、かなりレアだ。
 しかも、菊自身の日常を考えれば、ユニコーンが穢れたと考えるのが定石だろう。
 菊は処女どころか、ジョーンズに犯され、バイルシュミットとルートヴィッヒに抱かれ、ヴァル
ガスという恋人を持つ。
 肉体的な面ではとても清純とは言えまい。
 だがしかし。
 ユニコーンはどこまでも、正常で。
 彼女はきっとどこまでも純粋なのだ。
 肉の欲に溺れても尚、清廉な精神を保っているのだ。
 口では珍しく怒気荒く、憎悪の感情を露にしても。
 ジョーンズへの憐憫を捨て切れない所は、バイルシュミットが言う所の、聖母マリアのよう
にも見える。
 誰にでも、自分を虐げるモノにですら、慈愛を忘れない至高の存在。




                                    続きは本でお願い致します♪
                                やっとこさ、アーサーのターンです。
                   エロが入るか入らないかは、筆の向くままに。




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