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  Prayer T フェリシアーノ・ヴァルガス




 
毎日の祈りの中。
 思う相手はただ一人。

 上司が降服を受諾したその前夜。
 フェリシアーノは最前線の片隅にある小さなテントの中で、恋人である本田と睦み合って
いた。
 遠くでは、爆撃の音や人の絶叫がしている。本来切羽詰っているとはいえ、こんなにも甘い
時間を過ごせるはずは無いのだ。
 フェリシアーノがこうして、本田の体に唇を落とす今も、撤退しきれていない自国の民や、
撤退を許されていない本田の民が殺されている。
 だがしかし、不謹慎極まりないとわかっていても。
 フェリシアーノは本田の甘い身体を手離せなかった。
 次に何時会えるのか、生きて会えるのかすらわからない状況だったから。
 せめて少しでも。
 否。
 できるだけ多くの本田を覚えておきたかった。
 テントの外ではルートヴィッヒが、見張りをしてくれている。
 大好きで頼りがいのある友人だ。
 フェリシアーノや本田を、幾度となく守ってくれた。
 本田は体こそ女性ではあるが心が強いので、精神的にフェリシアーノやルートヴィッヒを
守ってくれてもいた。
 けれど。
 明日からは、フェリシアーノだけが、除外される。
 ルートヴィッヒと本田の二人だけが助け合うのだ。
 それを、許されるのだ。
 撤退をする己に非があるのを承知で、フェリシアーノはルートヴィッヒが憎かった。
 それぐらい、本田を愛している。溺れてもいた。
 本田を、フェリシアーノと同じように好きなルートヴィッヒに、懸命に堪えても漏れるその蕩ける
ような嬌声を聞かせても後悔しない程度には。
 「……菊。声、殺さないで……」
 艶やかだった唇も、今は随分と荒れ果てている。
 己は少々食べなくても死にはしないからと、追い詰められた状況の最中、それでも国民より
マシな配給のほとんどを国民に返してしまう本田だ。
 完全な栄養不足なのだろう。
 元々細かった身体も、酷く華奢になってしまった。
 ほろほろと崩れてしまいそうな儚さは、いざ。
 こうして抱いてみなければわからない。
 「お願い、菊。声、聞きたいよ?」
 それこそ甘い声でも聞いていなければ、自分が悪い事をしているようにしか思えないほど、
本田の身体は病的に薄いのだ。
 「駄目ですっつ。ると、さんにっつ。聞こえちゃいますっつ」
 フェリシアーノの激しい抜き差しに、しゃくり上げながらも本田は、ルードヴィヒを気にしている。
 彼女が恋人として愛しているのはフェリシアーノだと自負して疑わないが、ルートヴィッヒや
この場にはいない、彼の兄ギルベルトに対しても家族愛のような物を抱いていた。
 誰しも、兄弟や父親にSEXの痴態など見せたくないものだろう?
 堪える本田の声は必死に頑なだ。
 「ルートもきっと欲求不満だよ? 俺達よりしてないと思うし。菊の良い声ぐらい聞かせて
  あげないと……おかずに、して貰おうよ」
 「ふぇりしあっつ。あなたっつ。なにを、ばかっつ」
 「馬鹿なことじゃないよ! 馬鹿な事じゃないんだっつ」
 証、を。
 証が欲しい。
 自分がいなくなっても、本田が自分だけを愛してくれると言う証が。
 絶対に、フェリシアーノ以外に身体を開かないという確約が。
 どうしても……欲しいのだ。
 「……フェリシア? 何をそんなに不安がっているんです」
 痩せ衰えているとはいえ、まだふくよかな胸の膨らみを静かに上下させながら、本田の
ほっそりとした腕がフェリシアーノ首筋から、両頬へと移動する。
 かさかさの掌は、それでも十分フェリシアーノの頬に優しかった。
 「大丈夫です。大丈夫ですよ? 絶対にまた、会えますから」
 「本当に?」
 「ええ! 貴方の倍以上生きるお婆ちゃんの言う事を信じなさい。国の情勢がどれほど
  おかしくなったとしても。お互い思い合っていれば何時か。そう。何時かまた。会えます
  から」
 腰の動きは一切落としてはいない。
 限界が近い凄まじい抜き差しに、何時もなら喘ぐだけの本田は、時折愉悦を堪えかねる
ように腰を振ってフェリシアーノの熱に応えながら、常よりもゆっくりとした噛んで含める
ような口調でフェリシアーノに慰めの言葉を紡ぐ。
 「だから貴方は、一足先に、ね。安全な場所で私と待っていて下さい……必ず。貴方を迎え
  に行きますから」
 「ふふふ。格好良いね、菊。迎えに、来てくれるんだ」
 「……ええ。必ず。迎えに行きますよ。だから……今ぐらいは、そんな悲しい顔をしないで?
  私が会いに行くまで、何時でも貴方の笑顔を思い出せるように……笑って?」
 そういって、埃塗れの涙を舐め上げた本田は、くいくいっと腰を突き出してきた。
 閨では、若い貴方をどれだけ楽しませられるかわかりませんよ? と笑ってい本田は羞恥
を忘れないままに、けれどフェリシアーノが喜ぶと知っているので、最中は殊更奔放に
振舞ってきた。
 今もまた。
 己の嬌声を周りに散らさないように、フェリシアーノにディープキスを仕掛けながら、中を締め
付けてくる。
 性器を食い千切らんばかりの締め付けと、裏腹の包み込む襞のやわさに、フェリシアーノは
喉の奥、獣のような声を上げる。
 舌を啜り上げて、きゅぽんと音をさせつつキスを終わらせると、本田には厳しい角度で腰を
打ちつけながら、唸った。
 「菊っつ。菊っつ。菊っつ。愛してる。愛してる。愛してる! Io l'amo!」
 汗がばたばたと本田の唇の上に落ちて、滑る。
 本田はその、汗を全て綺麗に舐め取って、大きく息を吸い込んだ。
 「貴方だけを……永遠に……お慕いして、おりますよ……愛して、おりますよ……Io l'amo」
 囁かれる母国語での愛の言葉は、脳が沸騰しそうに興奮した。
 必死に目を開けて、フェリシアーノの顔を覚えておこうとする本田に、笑顔でなく獣のような顔
しか見せてやれなかったのが、後悔と言えば後悔だったのかもしれない。

 「フェリシアーノ!」
 「ロヴィーノ兄ちゃん? どうしたの」
 今日も今日とて菊と約束した安全な場所で祈りを捧げるフェリシアーノを、ロヴィーノが訪れる。




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                      もそっと白いフェリにしておかないと。
                                       白フェリ白ふぇり……。




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