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  俺にまかしとき?




 「さて、私は一体全体何故こんな所に居るんでしょう」
 思わず呆然と囁く羽目に陥ったのは、今が締め切り三日前。
 それも割増料金確定でデッドラインをまるっと超えた、最終締め切り目前だったからだ。
 残っているのはやってできない量じゃない。
 だがしかし!
 展開に詰ってしまった為に、どうにも筆が進まない。
 そんな状況。
 ……なもんで。
 つい、一緒に戦ってくれていた恋人に、愚痴ってしまったのだ。
 何でもいいから、私に萌をっつ!
 そう。
 愚かな私は、どん詰まりを吹っ切る何らかの切っ掛けが欲しいと思ってしまったのだ。
 このぎりぎりの土壇場で。
 徹夜を続けていたので、船を濃いでいた恋人の、一体どこにスイッチが入ってしまったのか
解らない。
 ぱちりと大きく目を見開いて、すっくと立ち上がったカリエドは、己の胸を叩いて言ったのだ。
 「よっしゃあ、いこか!」
 「どこへ?」
 と尋ねて、返事がなかった時点で拒否すべきだった。
 「うん。今更何を後悔しても遅いんですけどね」
 気がつけば、スペインのカリエド宅に拉致られていた。
 途中は、あやし上手のカリエドによって寝かしつけられていたらしい。
 記憶が全くない。
 幾ら国の化身とはいえ、一週間連ちゃんの徹夜は無謀過ぎたのだ。
 「お! 起きたんか。ほな、行こか」
 どこへ、と言う気力もない。
 ベッドの上で呆然としていた手をしっかと掴まれて、急かされるままに向かったのは。
 「ダンスホール?」
 大人しく座っとき! と二つ並べられたイスの片方に肩を押し付けて座らせられ、しかし
大人しくなぞできもせずきょろきょろと周囲を見回す。
 「あ!」
 「チャオ。菊」
 「ロヴィーノ君!」
 ポケットに片手を突っ込んで、白いスーツを着こなしたイタリア男の格好良さに思わず、
ほかんと口を開けて彼を見上げれば、珍しい……何と言うか、こう。
 男臭さ全開の笑みを見せて。
 「久しぶり」
 と、額へキスを贈られた。
 それはもぉ。
 フェリシアーノ真っ青の熱烈ハグ付で。
 あわわと間抜けなくらいに真っ赤な顔をして動揺する本田に、眦を撓ませつつどっか
と隣のイスに腰を下ろしたロヴィーノは、珍しい上機嫌。
 ナンパ以外でにこにこ笑う彼はレアだ。
 フェリシアーノとそっくりの笑顔に励まされ、しかし、慎重に話しかける。
 「あの。ここはどちらですか?」
 「ん? ああ。そういや説明しといてやーって言われてんだったわ。まずは、今から
  カリエドが見せるパソドブレは、菊の萌え補完の為だけにやるんだそうだ。で、ここは
  それ専用のダンスホール」
 「ぶふ!」
 何ですか、それ?
 「本当トーニョの奴。お前にベタ惚れだよなぁ。相手は奴の上司だぜ」
 「ぐは!」
 ラテン系の迫力のある美女が、頭の中。
 ぽんと浮ぶ。
 あの人の踊る姿はさぞ美しかろう。
 カリエドよりも余程。
 戦いの踊りが似合う方だ。
 だが、しかし。
 本田の為だけに、引っ張り出されたと知ったら、どんな顔をされるのか!
 「奴が人前でやるのは久しぶりだから、実は俺も便乗しちまった。悪りぃな」
 「いえ、そんな! 全然」
 ぶぶぶっと、首を振ればロヴィーノは機嫌も良く言葉を続ける。
 「この後は、上司をエスコートしてくれって言われてるしな。俺、トーニョの上司大好きでさ」
 確かにロヴィーノ好みなのかもしれない。
 何せファリシアと二人、美女に弱いのは有名だ。
 そしてどちらかと言えば、包容力のある自立した女性に惹かれるらしい。
 「それに、奴のパソも……大好きなんだよ」
 大好きなんだよ、の部分にはかなりの照れが入っている。
 トーニョには言うなよ! のおまけ付には、自然にやけた。
 うん。
 良いツンデレです。
 これでもぉ。
 萌えは充分補完できましたとも!
 「まぁ、今回は菊の我侭に感謝だ。上司も喜んでた」
 「え! 理由を、知っていらっしゃるんで?」
 「ああ。あの人。菊みてーなタイプすっげぇ好みらしくって。仕事が立て込んでて身体を
  動かしたかったから、一石二鳥ね! って言ってたぜ」
 「大変恐縮です! 実にすみません!」
 嫌われてはいないのは雰囲気で感じ取っていたけれど、好かれているとまでは思わな
かった。
 そうか、あの強引な物腰は、気に入った相手にするものだったのか。
 さすがは情熱的で知られるラテンの女性。



                                    続きは本でお願い致します♪
                              いきなり上司とか出してすみません!
             とある、素敵動画でトニョさんのパソ相手が上司さんだったので。

                 迫力のあるラテン系美女ってうっとりですよねぇ。



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