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  俺ならでは、でしょ?



 そりゃ、アーサーが俺んとこにアポなしで来るのは、良くある事で。
 お友達が居ない奴の、たぶん唯一の悪友って立場の俺は寛大だからさ。
 あいつが来れば、それなりに歓待はするんだよ。
 今日だってさ。
 せっかく菊が遊びに来てくれてて、すわ、ランチ! って時に奴が着たから、優しい俺は
アーサーの分の料理を追加で作ってやった訳よ。
 まぁ……菊が三人で食べたら、もっと美味しいですよ?  私、フランシスさんの美味しい
ご飯をアーサーさんとも分け合いたいです! ……なんて、可愛く言われたからってーのが、
一番の理由なんだけどさ。

 「でもね、これは、俺。やり過ぎだと思うんだぁ」
 いそいそとリビングに追加のランチ皿を持ってきたボヌフォワは、がっくりと肩を落とす。
 「うるせぇよ! 髭は黙っとけ!」
 「駄目ですよ。アーサーさん。フランさんがせっかく、料理して下さったのに。さぁ、起きて
  一緒にランチを頂きましょうね」
 「奴の飯より菊の膝の方が美味しいからな……あと少し、いいだろ?」
 「あらあら、まぁまぁ。こんなお婆ちゃん相手に。貴方も物好きですねぇ」
 菊はカークランドを自分の膝の上に乗せて、優しくその髪の毛を撫ぜている。
 カークランドは目を閉じて、気持ち良さそうにしているのが、腹立たしい。
 どうせ、カークランドが無理やりに強請ったんだろうが、ボヌフォワとて滅多にして貰えない
のだ。
 膝枕なんて。
 「……菊ちゃん。ランチ終わったら、俺にも膝枕」
 「ええ。良いですよ。美味しいランチを作ってくださったんですもの、それぐらい!」
 「ご褒美じゃないと、俺には膝枕してくれないの? 恋人同士なのに」
 「あ! そうですね。失礼致しました。何時でもフランシスがしたい時にしますよ、膝枕」
 予想通りの返答ににこにこしつつカークランドを見れば、苦味潰したような顔をしている。
 菊がボヌフォワの恋人になってかなりの時間が経つのだが、まだ菊への恋心を捨て切れない
らしい。
 基本装備がロマンチックな奴なので諦めてもいる。
 恋人でなくとも菊は、カークランドを甘やかすのが大好きだ。
 その関係が崩れるかもしれないリスクを犯して、カークランドが告白できないと踏んでいる
から。
 奴との付き合いは長い。
 行動パターンを読むことには自信があった。
 どうして菊だけがそんなにも、カークランドに幻想を抱いているのかはわからないが、彼女に
取ってカークランドは王子様のようなものらしい。
 確かにカークランドは外見だけなら王子様を地でいけるが、如何せん中身に問題が有り
過ぎる。
 特にあの酒癖の悪さ! あれを見れば菊も少しは考えを改めそうな気がするのだが、奴が
醜態を晒す頃には、菊も出来上がっている事が多い。
 酔うと笑い上戸になる菊は、他人に対して普段よりも更に寛容になる。
 どんなに酔っ払っても、菊に直接被害を与えないカークランドを見て、まぁ、アーサーさん
たら、あんなに酔っ払っても、私に気を使って下さるんですね? となってしまうのだ。
 また、泥酔状態になると誰でもめろめろに甘やかすから問題だ。
 正直カークランドの駄目っぷりを見せるにまで至れないことが、ほとんどだったりもする。
 菊本人には、そんな意図は全くなく。
 ただ年の離れた子供や孫を可愛がる心持なのだろうが、相手はそんな風に思わない。
 特に、ブラギンスキがやばい。
 日頃から、奴だけが例外的に冷たくされているので、隙あらば菊を泥酔させようと、虎視眈々
と狙っている。
 最初のうちはいいのだ。
 菊に、イヴァン君は良い子ですねぇ、と頭を撫ぜられて満足している。
 しかし時間が経つにつれ、洒落にならなくなってくるのだ。
 菊を、自分だけのモノにしたくなってしまう。
 ナターリヤを連れてくるようになってから、惨事には繋がらなくなったが、何度かロシアまで
拉致された事もあるのだ。
 しかもブラギンスキは、菊を酒漬けにしていた。
 自分をずっと甘やかして貰う為だけに。
 何とか、菊を日本まで連れ帰ってからも、軽度のアルコール依存症を治す為に菊共々苦労
したのは苦い思い出だ。




                                    続きは本でお願い致します♪
      
しまった! 久しぶりに菊たんを、めろめろに甘やかすイヴァン様が書きたい。
                ……って、思ってから書き出すまでが長いんだよなぁ、自分。   





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