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  懐かれて、乱される。
   Because the bosom withers, it is disarranged.



 「今日は俺の日!」
 「……ハーク。良い子だから、聞き分けて下さい、ね?」
 「嫌、です」
 本田の太股をぎゅうと抱き込んで離さない。離れれば奴の下へ行ってしまうのだと知っている
からだ。
 「仕方ないでしょう? サディクさん。風邪をひかれてしまったんですから。お熱が三十九度も
  あるんですって」
 「知らない」
 「部下の方が、ご連絡下さったんです。あの、律儀な方が直接連絡下さらないなんて、余程
  ですよ?」
 「……あの馬鹿は、熱でなんか絶対死なない。むしろ、死ね」
 良い機会だ。
 菊を独占できる。
 とっとと死ねばいい。
 高熱では死ななくともあの男。
 本田が見舞いに来てくれないと、嘆き死にはしかねない。
 「もぉ、ハーク!」
 ぺしんと優しく頭を叩かれる。
 本田にしてはかなり怒っている所作であるが、この程度の怒りなら、彼をここへ留めておける
かもしれない。

 『ハークとサディクさん。私はどちらか一人を選ぶことはできません』
 二人の告白を受けて、静かに言った菊に。
 『ならば、両方取れば良い。俺はそれで構いやせん。アンタが罪悪感を持っても尚、俺を愛して
  くださるってんなら、むしろ歓迎しやすぜ?』
 と、間抜けこの上もない返事で笑ったのはアドナン。
 二人の視線を受けて、カルプシは目を伏せて、随分と考えて後に言い放った。 
 『菊がどちらかだけを特別扱いしないと、誓ってくれるのなら。嫌だけど……俺だけを愛して
  欲しいけど、了承する!』
 まさかそんな答えがあるとは想像もしなかったのだろう、おろおろする本田をその場で二人、
散々に貪った。

 怒涛の展開を経て数年。
 本田はアドナンが言うところの罪悪感を常に抱いているのだろうか、見事としか言いようが
ない均等さで二人を扱った。
 年間通してのイベントとて、どちらもの意向を聞き、納得行く形に納めてくれる。
 今回は、アドナンの急病というイレギュラー。
 アレは本田が絡んだ時に、嘘を吐くほど馬鹿じゃないとは知っている。
 カルプシより余程、本田に迷惑をかけることを嫌う男だ。
 大嫌いで、常に死ねばいいと心底思っている相手だが、そこを疑ったことはなかった。
 相手がアドナンでなければ、カルプシも快くとは言わずとも、素直に相手に本田を譲っただろ
う、けれど。
 奴が相手だと、どうにも納得がいかない。
 「ふぅ……本当に貴方ときたら本当に困った人ですね! サディクさんは、貴方が同じ事に
  なったら、もっと素直に引いてくれますよ?」
 「アレと比べちゃ駄目だ!」
 「病人の、しかも私の恋人をアレ呼ばわりする方の、子供じみた我侭を聞けるほど私。寛容で
  はないのですよ」
 一段下がった声音に、そっと様子を伺う。本田はカルプシを視界に入れてもいなかった。
 惚けた眼差しでどこか遠くを見詰めている。
 マズイ。凄く、怒ってしまった。
 「だって、菊。ア……あいつの所行ったら絶対にSEXするし」
 「私としては致さない方が宜しいとは思うのですが、貴方もサディクさんも、それが一番適した
  熱を下げる方法だとおっしゃいますからね。無論、最善を尽くさせて頂きますよ」
 私としては、それで本当に熱を下げてしまう貴方方にはびっくりなのですけどねぇ、と苦笑する
本田の声から僅かに、険が取れた。
 自分に有利な交渉が出来る最後のチャンスかもしれない、とカルプシはアドナンを疎ましく
思う心を押さえ込んで、わざと甘えた声を出す。
 「じゃあ、俺にも最善を尽くして。あいつより先に、いっぱいして」
 「あー。やっぱりそう来ましたか」
 「駄目?」
 「……フェラだけじゃ駄目ですよね」
 「うん。フルコースで三回は譲れない」
 三回ですか……と、乾いた笑いを零す本田の後頭部に掌をあてて、ぐいと強く引き寄せる。
首をこきりと鳴らした本田は、従順に唇をくれた。
 本田の唇は薄くて、キスがしやすい。
 傍から見れば何だそれは? と思われるだろう、本田の唇を己のそれで挟んで擦り合わせる
のが大好きだ。
 「んっつ! ふ、く、ちゅ」
 答えてくれる都度に増えてゆく、濡れた音が嬉しかった。
 「……菊?」
 もっと、もっと! と舌を差し入れたら、強く噛まれて拒まれた。
 彼らしくもない強めの拒絶に唇を離せば、本田は拳で腰の辺りをとんとんと叩き始めた。




                                    続きは本でお願い致します♪
                   愛されサンドは何時でも、菊たんの体が心配になります。
                                 腰は大事にしようね、お爺ちゃん!
                    




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