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  慣れてくれ。




 「お前さぁ、平気なんかよ?」
 何処かのハンバーガー命のお子様とまでは行かなくとも、勝手に家に入り込み寛いでいる、
本田がただ一人師匠と仰いだ男は、ぽち君の頭を撫ぜながら、本田に何とも複雑な目線を
向けてきた。
 「何がですか」
 オタク活動中にしている間抜けなぐるぐる眼鏡をかけて、ネームを切っている最中に話し
かけられ、作業を中断する。
 そろそろお茶を飲みたいと思っていた頃合なので、ちょうど良いタイミングだったのかも
しれない。
 眼鏡を外した本田は、いそいそとお茶の準備を始める。
 「ギルさんは、お茶飲みます?」
 「んあ? じゃあ、コーヒー」
 さして考えるでもなく紡がれた言葉に、本田はそっと溜め息をついた。
 バイルシュミットが生息している時は、何時だってサイフォンの中に出来たてコーヒーが
たっぷり仕込まれているのだ。
 素で気遣いの達人であるバイルシュミットは、基本的に本田の手を煩わせないようにして
いる。
 サイフォンも、パーティーで当たったんだぜ! とバイルシュミットが自分で持ち込んだ物
だった。
 「もぅ。胃を壊しますよ!」
 「わあったよ。それじゃあ……ほうじ茶で良い」
 だから、こうして。
 本田が口を出せば、その好意に甘えてもくれる。
 一般的には不憫属性にカテゴライズされる彼だが、本田の中では騎士属性に分類されて
いた。
 大切な恋人であるルートヴィッヒも、騎士属性なのだが、如何せん真面目すぎる。
 もう少し、あと少しでいいので、本田に甘えてくれないかなぁ、と常々思っているのだが、
これが大変難しい。
 「お! 茶柱」
 湯呑みを覗き込んで子供のように喜んだ彼は、ぽち君にまで茶柱を自慢していた。
 無邪気に輝く紅い瞳は、何時見てもじっくり観賞に値する。
 「んだよ? 俺に見惚れてどーするよ!」
 けせせせ! と朗らかに笑ってくれるから、はしたない観賞も遠慮なく出来るというものだ。
 「だって、ギルさんってば、時々。すっごく私好みに可愛くて格好良いんですもの」
 「……お前は、色々と問題あっけど、良い弟子だよ。俺を、可愛いとも格好良いとも言う奴
  なんて、他にはいやしない」
 「おやまぁ、ルートさんがいらっしゃるじゃないですか。私、あの人が頬を染めて、貴方を
  可愛いとか、格好良いとか言ってるの、何度も見ましたよ?」
 本当に仲の良い兄弟なのだ。
 他の化身に一番理想の関係だと羨ましがられるのは、ツヴィンクリとリヒテンシュタイン兄妹
だが、男兄弟と限定したならばまずは、この二人が上げられる。
 ちなみに対極、一番なりたくない兄弟は、誰もが頷くカークランドとジョーンズ。
「そっか! 俺様は自慢の兄貴だもんな! あ。勿論ヴェストも自慢の弟だぞ! すっごくドS
 だけどな」
 「私には優しいですよ?」
 「んー。やっぱそうなんかぁ……アレだろ? SEXには緊縛とか持ち込んでないんだろ?」
 「げふう!」
 突然下ネタを振られて、思わずほうじ茶を噴出してしまった。
 混乱して布巾でテーブルを拭きまくる本田の背中を、ああ、いきなり悪かったよ、とバイル
シュミットが撫ぜてくれる。
 「なななな、なんですか、いきなり!」
 「だから、悪かったって言ってんじゃねーか……俺もな心配なんだよ」
 「ルトさんが? 私が?」
 「どっちもだ。何せなぁ、菊。ヴェストは、これだけは俺。育て方間違っちまったんかなぁと
  思うぐらいの壮絶、ドSなんだ!」
 何かと大袈裟なバイルシュミットだ。彼は時々、真剣な顔をして大嘘を吐く。
 ルートヴィッヒと二人で散々騙されたので、少々疑い癖がついてしまったのだが、今回はどう
にも違うらしい。
 「だからな……所謂、普通の恋人同士がする温いSEXしか、してないって聞くとな……我慢
  して我慢して我慢してる不憫な、ヴェストがな? 何時か、ぶっちーんと切れてよ。お前が
  壊されるんじゃないかと……お師匠様は心配なんだよ」
 体格、体力差を十分考慮に入れながらも若さ故という奴か、それはもぉ随分と頑張って下さっ
ちゃうルートヴィッヒなので、例え行為自体は正常なものでも、終わった後の疲れ具合は、
十分に異常だったりもする。
 それこそSMも真っ青の疲労度なのだ。本田的には。
 「って言うか。今でも十分壊れ気味なんですが」
 「あー。お前、爺ちゃんだもんな。ヴェストと違って」
 「これでも頑張っているんですけどねぇ……緊縛ぐらいならOKした方が良いんでしょうか」
 日本にも素晴らしい緊縛文化があるにはある。
 今でも縄師という職業は、大変レアだが存在もしているのだ。
 「……お前。そーゆートコ。無駄に寛容だよな。普通、緊縛っつたら、ドン引きすっぞ」
 「緊縛も上手い方がすれば、痛くないと聞きますし。お上手なんでしょう? ルトさん」
 「上手いぞ。痛くない縛り方もできんじゃねーの? 痛い縛り方してんのしか、見たことねー
  けど」




                                     続きは本でお願い致します♪
                                      すみません、すみません!

                        またギルさんが出張ってしまった。
                                           最近もしかしたら、
                           とんでもなく自分はギルさん好きなんじゃ! 
                                     という自覚が出てきました。





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