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  求められ、殺される。
 It is requested, and it is killed.



 
「あのっつ!アーサーさん」
 「んだよ?」
 「こんな、所では!」
 「誰が来るか、わからねぇってか? 上等だよ。来たら相手がドン引きするほど見せつけてや
  る」
 世界会議のホスト国だったカークランドは、恋人である本田を把握しつくしている空き部屋の
一つに引き擦り込んで思う存分キスを堪能していた。
 本田の薄い唇は弾力性に富んでおり、噛み応えもあるし食みやすいのだ。
 「んっつ」
 何よりどれだけしても溺れきらぬうちは、初々しい対応しかできない彼が愛らしい。
 「あ!」
 形の良い耳の裏を擽れば腕の中、驚くほど跳ね上がった身体の腰を擦って宥めながらキスを
続ける。
 怯えて逃げ惑う舌を引きずり出して啜る瞬間の、気持ち良さといったら堪らない。
 「お願いです。あーさー、さんっつ。せめて、鍵、を」
 キスに蕩かされ眦には涙まで滲ませているというのに案外と冷静でいるようだが、常なら忘れ
ない鍵をわざと閉め忘れたのには訳があるので、本田の言う事を聞く気はない。
 「閉めたらいいのかよ? ここでおっぱじめても。お前の、可愛いここに……」
 ズボン越しに生地ごと本田の尻を掴んでぐっと開く。
 下着の下では愛らしい蕾がひくりひくりと蠢いているだろう。
 その様を想像して尻を揉みながら、耳朶にのったりと舌を這わせる。
 目の端、彼の首筋に産毛が逆立つ様が映った。
 「ぶち込んで、がんがん突き上げても……なぁ?」
 「駄目、です! 私これから、約束……あ、んっつ」
 「キャンセルしろよ。大体俺のトコで会議が開催される
ってーのに、どうして他に予定なんか詰めるんだ?」
 「会議通達より前からのお約束だったんです! 今、スペインの闘牛は開催が限られてい
 て……」
 世界各国本田狙いの化身ばかりで腹立たしい事この上もないが、その中で一番嫌いな
男の国を上げられて、カークランドは特徴的な眉毛を歪める。
 「それがなんだってんだよ! 恋人との逢瀬より他の男との約束優先する馬鹿がどこの
  世界に居るんだ。大体お前は! 他国の文化に興味ありすぎだ、ばーか!」
 「極々普通の、興味じゃないですか! そりゃ、貴方の所の文化と来た日には、私の心を
  突き動かす素敵なものがたくさんありますけど……」
 「だったら、俺のトコだけで満足しろよ。お前が行きたいってんなら、どこだって連れて行って
  やるぞ?」
 抱き合う至福に勝てる事などありもしないが、本田がこの後の予定をキャンセルするという
のならば、望む場所に連れて行っても良い。
 カークランドとて本田を伴った外出は大変好ましいものなのだ。
 「貴方との散策は私とて、何時だってしたいものです。ですが! 今回はアントーニョさんと
  ロヴィーノ君との約束が先だったんです!」
 「……断れ!」
 「嫌です!」
 「ちっつ!」
 舌打ちしてキスを深くする。
 ディープキスをしながらネクタイをしゅるりと解いた。
 この音が堪らなく好きなカークランドは自ら厳選したネクタイを本田に贈っている。
 だから本田は、カークランドの贈ったネクタイしかしない。
 少なくともカークランドが同席する時には、必ず、だ。
 愛されているのだと言う実感が、ネクタイを解く度に湧き上がって来る。
 今もまた本田に対する愛おしさで胸が一杯だ。
 我ながらにやけているだろう顔を、襟元を寛げながら首筋に埋めたその時。
 「菊ちゃーん。親分が迎えに来たでー」
 聞きたくもない底抜けに明るい声と共にドアが蹴り開けられた。
 「大丈夫かよ、このやろー」
 続いてカリエドのいそぎんちゃくなロヴィーノがひょいとばかりに顔を覗かせる。
 「……人ん家のドア、蹴ってんじゃねぇよ。鍵はかかってなかっただろうが!」
 「それはすまんかったわぁ。わいもここ以外じゃ、足なんて使わへんのやけどな」
 もう一度、踵でドアを蹴り上げるとすたすたとこちらへ近づいて来た。
 「ほな、菊ちゃん。行こか?」
 そしてカークランドの腕の中にいる本田の腰を抱くと、カークランドの顔を鷲掴みにしたまま、
くるりと回転した。
 「おい!」
 半端ない力で締め上げてくる指を血の滲む強さで引っかいて拘束をすぐに解かせるが、本田
の細い身体はカリエドの手から既にロヴィーノに渡っている。
 「げ! キスマークがついてやがるぜ、stronzo!(くそやろう)」
 忌々しそうに舌打ちしたロヴィーノは、手馴れた手つきで本田の乱れた着衣を直してゆく。
 自分でできますよ? なんて本田の密かな主張は当然のように却下されていた。
 傍若無人な親分に子分も似るという事だろう。
 どうにもイタリア兄弟に弱いらしい本田は指を訳もなく動かしながらも、ロヴィーノを拒絶でき
ないでいる。




                                    続きは本でお願い致します♪
                                          大好きサンドです。
           いつかこの二人に挟まれる海賊モノで長編とか挑戦したいものです。




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