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 魂の浄化


 
この世で一番大嫌いな男に身体を開かれて、この世で一番大好きな男の夢を見る。

 「んっつ。っと!もっと!しなさいっつ」
 「……いいですよ。貴方の望むままに。幾らでも」
 ぬちゅぬちゅっと、狭いテントの中に響く交接の音。
 ああ、気持ち悪い音。
 これじゃあ、見張りに立つ兵士が可哀想だ。
 今度、見張りはいらないと言ってみようか。
 私を抱き犯す男も、私自身も他人に聞かれて見られて喜ぶ性質でもないのだし。
 「あんっつ。じぇいっつ?」
 「……なんです?」
 「みはり、いらないって。かっかに、いおうか」
 「……駄目なんですって。以前にお願いしてみたんですけど。私が、貴方を抱き殺すかもしれ
  ないから、必ず置きなさいって、言われたんですよ」
 盲目的に、私に溺れる、この男が。
 私を殺す訳がないだろうに。
 ましてや、私はこの男が、誰にも害なさぬよう。
 こうして、身体を好きなだけくれてやっているのだから。
 「ばかな、かっか」
 「全くです。私が貴方を抱き殺すなんて、とんでもない……ねぇ。ロイさん」
 「んっつ!あああっつ。そこっつ」
 「ここ?」
 「んっつ、そこっつ」
 「好き?」
 「ん、好き」
 好きかと聞かれて、何度でも好きだと繰り返す。
 この臆病な男は、決して。
 絶対に、私が嫌がる質問をしない。
 好き?と言う質問に、好き…と答えさせたいが為に。
 私が誰を好きなのかを、重々承知していながらも。
 「貴方が好きなだけ。幾らでも、何でも、あげますから……私を、棄てないで下さい、ね?」
 「んっつ!すてない……すてないからっつ……あんしん、して!」
 もっと、私を貪れ。
 私が狂気の淵に沈んで、あの人に抱かれているのだと、錯覚できるように。
 「……酷い人。貴方の思い人と、私はどこも似てないでしょうに」
 確かに、似ていない。
 何もかも。
 だが、一つの共通点があるとするのならば。
 私に、どうしようもなく甘い所。
 「ああ、そうか。結局、貴方のオネダリを聞いてしまう所が、似ているんですね」
 この男は、馬鹿ではない。
 むしろ頭の回転はいいだろう。
 それも、恐ろしく。
 紅蓮の錬金術師の名は、爆弾魔という穢れた称号に隠れてしまってはいるが、その功績は
凄まじい。
 錬金術は素養も必要だが、それ以上に独自の錬成をする為の膨大な知識が必要なのだ。
 この男は、誰にも師事せず独自で国家錬金術師の地位を手に入れた、まさしく天才。
 「いいですよ。誰の代わりでも。貴方の大切な人の代わりだと言うのならば、むしろ光栄な
  くらいですね」
 「あんっつ。あ!いいっつ」
 言い様キンブリーが、私の好きな場所をがんがんに突き上げてくる。
 直に私は、忘我の淵へ落ちる事が出来る。
 あの人の妄想に抱かれる事ができる。

 この、至福。

 私は、例え。
私がただ一人敬愛する、ノックス先生が歪んだこの関係を止めろと言っても、もぉ止める事が
出来ないだろう。
 この男の腕の中は、とても。
 そう、とても。
 ……心地良いのだから。
 




                                      END



 *あっさり終わってしまったのですが、どの辺が魂の浄化なのか(泣)
  ノックス先生が大好きだけど、キンブリーとしか寝れない、珍しいロイさん。
  そして、勿論。キン様はロイにめろめろです。
      2009/01/27
 


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