メニューに戻るホームに戻る




  フラワーアレンジメント


 
 「君の国の華道も悪くはない。だが、イギリスのフワラーアレンジメントの方が遥か上だ」
 気がつけばベッドの上に拘束されていた本田が、望む言葉とは全然関係ないものを口に
されて、怒るよりも先に首を傾げる。
 本田には、一度懐に入れた人間を疑わないような、そんな懐が深いというか、お人よしの面
があった。
 カークランドはかの精霊大国イギリスそのものだ。
 今となっては本田も見る事が叶わない座敷ワラシをも見る事が可能な稀有な存在だったり
もする。古来より日本では、精霊が見えるのは心の清らかな人間とされていた。
また彼は英国紳士とは思えない口のきつさで話しかけてくるが、個人差もあるし、誇り高き
ヴァイキングの血が強いのだろうと推測すれば、その辺りも好ましかった。
 本田は、カークランドを親しい友人だと思っていたし、彼も自分を親しい友人と扱ってくれて
いると信じて疑わなかった。
 今、こうしてベッドの上に拘束されてしまう、その瞬間まで。否。拘束されてしまった、今と
なってもまだ。彼を信じていた。
 「あの、カークランドさん?」
 「……アーサーと呼べと言っているだろう」
 「……アーサーさん」
 「アーサーだ!菊は時々、無駄に学習能力がないな」
 顔をあわせる度に、現在では世界の大国となっているアメリカ相手に、傍から見れば痴話
喧嘩にも近い言い合いをする彼にだけは言われたくないセリフだ。
 「アーサー」
 「うん。それでいい。俺の名前を呼ぶ発音も、綺麗だ」
 「ありがとうございます」
 基本的に本田は、会議の際なども相手国の言葉を使うようにしている。
 媚びていると言われても、その方が駆け引きしやすいのが実際だったからだ。
 英語は意外にも面倒見の良いカークランドが教えてくれるので、新しい言語や最近流行の
言い回しなどにも精通している自信がある。
 ただ、カークランド自身が、貴族が使う正統なクイーンズ・イングリッシュに拘るので、人に
よっては堅苦しいと感じる人間もあるようだ。
 最も、本田自身『生真面目な国・日本』の印象が強いので、その古風な物言いも、らしい
よねーとヴェネチアーノやルードリヒ辺りは好意的に受け止めてくれた。
 「それで、あの。アーサー?一体どうしたんですか」
 「どうしたもこうしたも、君にフワラーアレンジメントの美しさを教授するつもりだが」
 「はぁ、そうですか」
 案外と物を教えるのが好きな彼が、突然世界に入るのには慣れてきたつもりだったが、
フラワーアレンジは、ベッドの上。しかも拘束されていてはできないと思うのだが。
 「しかし、ベッドの上で華道はしませんよ?」
 「アレンジも普通はしないな。だが、今は花瓶が菊だ。リビングのソファより、寝室のベッドの
  方が良いと思うぞ。菊がどうしても、というならソファの上でも構わないがな」
 「花瓶が、私って?はい?」
 ナニを言われているのかさっぱり理解できない本田に、カークランドは実に男臭く笑いかけ
た。
 「言葉通り、菊自身に花をアレンジするのさ?ま。実践すれば、すぐに君にも理解できる」
 言いながら、カークランドはいきなり、本田のズボンのベルトに手を掛けてきた。
 「ちょ!アーサー何をするつもりですか!」
 「華を、アレンジすると言っている。それ以外には、何もしない」
 しゅるんと引き抜かれたベルドは、そういえばカークランドから頂いた物だった。
 ブライドルレザーと呼ばれる手法で作られた革は、使えば使うほど光沢が鮮やかになるのが
綺麗で楽しみで、洋装で外へ出る時は必ずといっていいほど、つけていた。
 その、気に入っているベルトは無造作に、床へと投げられた。
 続いて、ズボンのファスナーが下ろされる。じじじっと、独特の金属音が、嫌に近く耳に響く。
 「止めて下さい!アーサー!」
 「何も、心配する事はない。君が想像できないほど、綺麗にアレンジするからな」
 「嫌です!やめてっつ!いっつう!」
 太股から足を動かして抵抗すれば、ぱん!と高らかな音がして、頬を張られた。
 衝撃は、じんわりと痛みというよりは熱が広がった後にやってくる。
 「これ以上、無駄に暴れるなら、足も拘束するが?」
 どうする?と、目の前に手錠をぶら下げられた。
 よく見ていないのでわからないが、恐らく手首を拘束しているものと同型であろう。
 これ以上、拘束が増えるのは避けたかった。
 「暴れない、な?」
 返事もできず、頷けもせず。
 それでも本田は抵抗する意志がないのを、消極的な瞬きで返した。
 不満そうに鼻を鳴らしたカークランドだったが、納得したようだ。
 「……たまには、色つきとか、穿けば色気も出るのに」
 「出してどうするんですか。貴方の国旗を模した下着のセンスは、個人的にどうかと思いま
 す」
 下着は清楚が一番と考えている為、白一辺倒のブリーフだ。
 そもそも男に色気を求められても困る。
 「ま。君はインナーに関しては、センスよりも機能を重視するからな。それに、脱がせば色気
  も出るし。問題もない」
 「え!待って!いやだぁっつ」
 抵抗しないと決めた本田の身体は、ベッドの上で跳ね、踊る。
 けれどカークランドは、ゴムに引っ掛けた指に一気に力を入れると、あっという間に本田の
下半身を丸裸にしてしまった。
 「やっつ。ひどいです!こんな、こんな、コトっつ!」
 長い上着を着ているので、局部が丸見えな訳ではないが、どの角度から見ても、下着すら
つけていないのは見て取れる。
 所謂チラリズムに自然、カークランドの口の端が上がった。
 「恥ずかしがることはないさ。これから、菊は、綺麗になるんだからな。後で俺に感謝する
  だろうよ?」
 拘束されて、衣服を脱がされて、どうやって感謝すればいいのかわからない。
 しかし、本田の頭には怒りよりも困惑が先に立った。
 「さぁ、菊。足を開け」
 「!」
 命令するのに慣れた口調。
 内容はききたくないものだったが、基本的に命令に対して従順な本田は、ゆっくりと股を開く。
 「もっと、大きくだよ、菊」
 本田の太股にカークランドの掌がかかった。
 さらりとして心地良い掌ではあったが、言う事を聞かなければ強引に開かされるのだと、
わかってしまった。




                                    続きは本でお願い致します♪
           他ジャンルを読んで下さっている方には、おわかりかもしれませんが、
                                       文体を変えております。
                      変え始めなので、拙いことこの上ないと思いますが、
                    日々戦いますので、生温く見守って下されば幸せです。




                                       メニューに戻る
                                             
                                       ホームに戻る