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  酷いよ!



 いくらこいびとどうしとかいってもやっていいこととわるいことあるんじゃないですかねぇ
あるふれっど!

 思わず頭の中、読みにくいから、それ! とか、オタ仲間のボヌフォワ辺りから突っ込みを
入れられそうな言葉が、だだだだっと凄い勢いで並んだ。
 玄関を開けた時点で、嫌な予感がしたのだ。
 実にビックサイズなブーツが泥塗れで転がっていたから。
 修羅場明けせっかく綺麗にしたばかりの玄関周り、お香まで焚いても、汗と泥の臭いが強い
ってどうなの? とジョーンズのブーツに消臭剤をどこっと詰め込んで、玄関の隅に追いやって
から仁王立って廊下を見やる。
 ぴかぴかに磨き抜かれた廊下には、大きな足跡が定期的についている。
 大股だから数が少なくていいですね? なんて嫌味も通じないあの男。
 ぎりぎりと歯噛みをしながら、床に置いてあるお掃除ぴかぴか! という名前のペーパー
モップでもって、足跡の上を二往復。
 取り合えず、くすんだ程度になったので良しとして、恐る恐る彼が居ると思わしき茶の間を
覗き、がっくりと膝を折ったのだ。
 食べつくされた置き菓子。
 畳の上に転がったマグカップ。
 テーブルの上には、零したコーヒーにお菓子の屑と空き袋。
 長期の修羅場も明けて一通りの片付けも済ませ、のんびり楽しむつもりで買っておいた、
自分ご褒美な葛饅頭は一口食べただけで、絶賛放置プレイ。
 周りの葛が乾いてかそかそになっている。
 何よりこれに、腹が立った。
 「食べ物の恨みは恐ろしいのですよ、アルフレッド君」
 ふーふーふーふー、とジョーンズが起きていたのなら、窓をぶち破って逃げて行きそうな
不穏な笑みを浮かべた本本田は、腹をぼりぼりと掻きながら満足そうに眠っているジョーンズ
を冷ややかに見下ろした。

 「あー菊ぅ? やっと帰ってきたんだ。待ちくたびれたんだぞ! って、なんだいこれは? 
  もしかして新手のネタ集めかい?」
 「そう、思いますか」
 「それ以外に思いつかないだろう? っていうか、思いつきたくないね!」
 そりゃそうだろう。
 起きたら突然手足を拘束されて、畳の上に転がされていたら誰だってそう思う。
 「大丈夫。痛くはしませんから」
 「何だよそれ!」
 「だって、これ。お仕置きですから」
 「はぁ? 何で俺がお仕置きなんかされなくちゃならないんだい!」
 「は! この惨状を生み出した男が、そんな間抜けなセリフを言いますか!」
 本田は芝居がかった風に、ずびしっ! とジョーンズの額を指差してやる。
 一瞬だけ飲まれたようだったが、そこは本人曰く、あえて空気を読まない、ジョーンズ氏。
 「ずっと俺を放置してた君が悪いんだぞ! 修羅場が終わったのだって、フランシスから
  聞き出さなかったらわからなかったし! ちょっとぐらい拗ねたっていいじゃないか!」
 「せっかく綺麗に掃除した玄関と廊下を汚して、修羅場が終わったらゆっくり食べようと
  思っていたお菓子を全滅させたと思ったら、一番食べたかった葛饅頭を一口食べて放置
  プレイ? どこがちょっとなんですか!私の葛饅頭を返せ!」
 「君って、食べ物の事になると性格変わるよね……」
 はぁ、と悟りを開いたような深い溜息をつかれて、怒りは募る一方。
 「それがどうしたって言うんです? 今更何分かりきった事を言うんですか!」
 きしゃー! と攻撃の手を緩めずにいれば注がれたのは。
 「へーい、すとっぷ。俺が悪かった。葛饅頭は後で買いに行くから、とにかく手錠を外して
  くれよ。これじゃあハグもできない」
 駄々っ子を見るような眼差し。
 孫がおじいちゃんにそんな顔するんじゃありません! 
 萌ツボなイケメンでも、許せぬことはあるのです!
 「……葛饅頭はネット限定・期間限定の特売品。今じゃあどこ探しても手に入りませんです
  ことよ、ええ」
 「それじゃあ、代わりのお菓子!」
 「あの可哀相な葛饅頭の代わりになるお菓子なんて、ありませんよ」
 「きくぅ!」
 「貴方が今出来ることは、私のお仕置きを大人しく受けることです」
 彼にしては珍しく一応自分の非を認めたけど、まだ目の前に置いてある無残な姿の葛饅頭が
視界の端にある。
 怒りを引っ込める訳にはいかなかった。
 「はぁ……わかったよ! で、俺は何をすればいいんだい?」
 本田が梃子でも引かないのをやっと理解したジョーンズは、潔く綺麗な空色の目を瞬かせた。
 こういう時の彼は、実に愛らしい大型犬属性の雰囲気を醸し出す。
 これなら、受でも問題ない。
 少し前からBLで、大型わんこ攻が流行っているが、本田的には、大型だろうが小型だろうが
犬は、受が好みだ。
 「何も、しなくて結構です。じっとしててくれれば、私が全部致しますから!」
 「えぇ?」



                                     続きは本でお願い致します♪
                        ああ、久しぶりに文句なしにらぶらぶのアル菊だ。
               オタに理解のある彼氏っていいよね! そんな感じに。



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