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  独占欲



 「ひ!あっつ!あっつあ!」
 押し倒されてからどれぐらいの時間が過ぎているのだろうか。
 「おねがっつ!もぉ。ゆる、してぇ」
 声が掠れている。
 彼が容赦なく突き上げてくる部分は、擦られ過ぎて痛みすら覚え始めた。
 自由にならない手を伸ばして、目覚まし時計を引き寄せようとしたら、手首をきつく縫いとめら
れて、より深くを、穿たれた。
 「ひ、うっつ!」
 「時間なんか、気にしちゃ、駄目」
 彼の手に弾かれた時計は、ごろんごろんと転がってしまった。
 うつ伏せになった時計では、時間の確認もしようがない。
 「でも、へらく、れすくっつ」
 「菊は、何も考えちゃ、駄目。俺のこと、だけ。考えていれば、いい」
 以前から、独占欲が強い印象がないではなかったけれど、サディクが絡むと穏やかでのん
びり屋の彼は、恐ろしい変貌を遂げる。
 「また、考えた」
 「ひんっつ」
 今度は性器を握られる。
 もう、何度も射精して今は項垂れるばかりの、それを扱き上げられて、悲鳴しかでない。
 「やっつ!そこっつやぁ!」
 「いいでしょ?」
 「んっつ。もぉ辛いの。出しすぎて、つらいのっつ、だから……中。中にしてっつ」
 「……中、イいの?」
 「ん、いいのっつ」
 正直中も辛い。
 けれど、性器を擦られるよりはマシだ。
 「じゃあ、中。いっぱい擦るね」
 「ん。擦って。いっぱい、シテっつ」
 情けなさ過ぎる自分の状況に、涙がぼろぼろと零れ落ちる。
 「……菊?」
 眦に唇が寄せられる。
 そっと涙を啜られて、薄目を開ければ、心配そうな愛しい恋人の顔。
 よりによって、抱き合っている最中に。
 こんな顔をさせたい訳ではないのだけれど。
 「ヨ、すぎて……泣け、泣けちゃうんです!」
 恥ずかしくて堪らない!という演出をしながら、彼の首に縋る。
 「なら、いいけど」
 まだ、少し心配の色を残す彼の腰に、何とか太股を持ち上げて絡めた。
 「……へらくれす、く?」
 「ん?」
 「頑張るから……私っつ、頑張るから」
 「うん」
 「もぉ、終わって?」
 震える指先を伸ばして、首に腕も回し、顔を引き寄せると額に口付けをする。
 身体が限界なのは確かだし、明日は来客予定もある。
 相手がサディクでないのは、良いが、ジョーンズとカークランドだ。
 カルプシとの仲は余り良くない二人。
 しかし、余り邪険にもできない二人。
 「頑張るのは、いいけど。やめるのは、どぉかな?」
 「お願いっつ」
 「明日の来客は、俺がちゃんと捌くよ?心配、しないで」
 確かに彼のマイペースは、二人を翻弄してくれるだろう。
 けれど。
 結局最後に帳尻を合わせる羽目になるのは、本田なのだ。
 「でもっつ」
 「……菊は、難しいコト。考えすぎ。ほら……溺れて」
 「きゃあああっつ」
 女性のような甲高い悲鳴を堪える余裕など残されていなかった。
 カルプシに、最後の追い上げとばかりに突き上げられた本田は、射精をしながら失神すると
いう、高等な技を一つ。
 会得する羽目になった。

 「んっつ」
 重たい瞼を上げれば、既に日が高く上っている。
 ヘラクレスは、何事もなかったように隣で寝入っているが、既にジョーンズとカークランドを
撃退した後なのだろう。
 「つ、しょっと」
 あちこち軋む身体を叱咤して、玄関へ向かい、郵便受けを覗く。
 予想したとおり、書類の入っているであろう封筒の他に、カークランドの手による手紙が入って
いた。
 『独占欲の強い恋人を持つ苦労はわかるが、もう少しどうにかしろ!』
 彼にしては乱れ気味の、しかし綺麗な筆致の英語での苦言。
 ジョーンズを恋人に持つ彼ならではの、コメントだ。
 「すみません。カークランドさん」
 でも、私。
 独占欲の強い彼が、可愛くて仕方ないのです。
 本人の前でも、駄目ですよって、言っていますけど。
 むしろ、彼からその独占欲がなくなった日には、私。
 彼と別れてしまうかもしれません。
 「……さ。朝食兼、昼食を作ってあげないと……やっぱり、オムライスがいいんでしょうかね?」
 本田の上に短い間浮んでいた、暗い微笑は誰に見られるでもなく、すぐさま年下の、手のかかる
恋人を思う柔らかな微笑に変化した。




                                                     END




 *珍しい菊さん目線。そしてまさかの、米英前提。
  攻めに苦労する、英と日が、こっそり愚痴溢しのお茶会を開けばいいよ!
  とかまで思います。
  日受以外は、ちららっと本文に出てくる程度になるんでしょうが。
  ぶっちゃけ、日さえ受けていれば、後はどんなカプでも!
  ……げふんげふん。
  好みが広すぎてごめんなさい。
                                                 2009/02/22
 



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