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  愚者



 「ねぇ。どうしてそんなに、怯えるの。僕は君の大好きなアルフレッドに良く似ているだろう?」
 本田菊は、ウィリアムズ・マシューが初めて愛した人だった。
 「君が好きだって、思ったから。結構、僕。無理して頑張ってるんだけどなぁ」
 ウィリアムズからの拙い告白に、まさか頷いてもらえるなんて思いもしなくて、その日の夜は
有頂天だった。
 勢いも良く押し倒して、散々楽しんで。
 本田に、そんな人だと思いませんでした!と、ぽこぽこと可愛らしく怒られたのも。
 今となっては懐かしく、どこか寂しい想い出だ。
 「私は、貴方が、好きなんですよ?マシューさん。ジョーンズ君には、逆らえないだけで。好きな
 訳ではないのですよ?」
 怯えた目は、彼がジョーンズに時折見せる眼差しと一緒で、ウィリアムズを満足させる。
 「良いんだよ、菊。僕には嘘を言わなくて」
 頬擦りをすれば、以前は嬉しそうに擦り返してくれたのに、今はがくがくぶるぶると歯の根も
合わないほどに震えるだけ。
 「僕は、菊が誰を見ていても。愛しているからね」
 本田が、ジョーンズを好きなのだとわかったのは、余りにも彼の話題が多かったから。
 性格は違うけど、僕と彼の容姿は良く似ている。
 皆に愛される菊が僕みたいな存在を好きだって言ってくれたのは、アルフレッドの身代わり
だったんだ!……と思って、納得した。
 だけど、残念なコトにジョーンズはカークランドに、身も心も溺愛されている。
 ウィリアムズの前で、事に及ばれたことだって何度もあった。
 その偏執的な愛情に、自分はカークランドに愛されなくて良かったと、しみじみしたものだ。
 だから、どれ程本田が思いを寄せても、ジョーンズは本田を受け入れることができないはず。
 カークランドも本田をかなり大切に扱っているが、その恋心が知れたなら何をするかわから
ない。
 それならば、と。
 ウィリアムズは、本格的な身代わりを買って出ることにしたのだ。
 カークランドが、ジョーンズを溺愛しているように。
 ジョーンズの仕草を徹底して真似て、本田を愛そうと。
 「お願いですっつ!もぉ、止めて。以前のマシューさんに戻って!」
 ほろほろほろと綺麗な涙を溢して懇願する本田に、ウィリアムズはにっこりと笑う。
 「心配しないでいいんだよ?この、僕で。ちゃんと菊を満足させてあげるからね」
 そう言って、射精を止める為に根元をきつく縛った性器の、小さな穴に入れた尿道用のバイブ
をゆっくりと動かし始める。

 大丈夫。
 素直じゃない君の、本当の心を拾って。
 僕は、ずっと。
 君の大好きなアルフレッドを演じきるからね?
 だから、菊もずうっと、僕を好きでいてね。




                                                     END




 *うわー鬼畜英米前提。って我ながら、どうなの?
  日受以外いかん!という方にはごめんなさいです。
  そして、白黒入り混じりマシューさん。
  この人は、徹底して白か、絶望的な黒が似合うと思っていましたけど
  感情は白で、行動は黒っていうのも、いいあなぁと今回掻きながら思いました。
                                                 2009/02/22
 



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