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  狂月



 菊。
 我の愛人。
 お前は、我だけを見ていればいいあるよ?

 世界会議が終わり、本来そのまま解散となる所を、たまには親交パーティーでもしよう! 
と言い出したのは、美国だった。
 突然の提案ではあったが、大半の国が特に急ぎの用事を抱えていなかったらしい。
 普段は、あまり親交のないモノ達とも語り合えるので、親交パーティーは誰が申し出ても、
こんなに急であっても出たがる者は多かった。
 そんな中で、彼だけが。
 静かにその場を立ち去ろうとする。
 「き!」
 声をかけようとしたが、それよりも先に美国が本田に声をかけた。
 「菊ー!君が居なきゃ駄目なんだぞ!」
 すたすたと歩いていってそのまま、その身体を捕獲。
 べたべたする奴には腹が立ったが、菊を足止めしたのは褒めてやっても良い。
 我が止めても、逃げられた可能性は高いあるからな。
 「……すみません。私、少々具合が悪くて……」
 「それなら、俺が部屋まで送ろ!」
 「結構です!」
 ぴしゃん!と常ならぬ勢いで、美国の手を跳ね除けた本田は大きく体勢を崩しながらも、
彼と距離を取った。
 「王、さん」
 そして、我を呼ぶ。
 「何あるね?」
 「お願い、します」
 「……こんな時だけ、我を頼るあるか」
 内心の喜びを表には出さす、ふんと鼻を鳴らしてやる。
 「……哥哥……」
 昔は当たり前に呼んでいた、その呼び方で縋られて、我はようやっと菊の手を取る。
 「おいっつ!菊っつ」
 「……うるさいあるよ。菊は今、発作を起こしてるある。久しぶりだからな付き合いの長い我しか、
  対応できないあるよ」
 「そう、です。ジョーンズ、君。すみませんが、私は。王、さんと退出、させて頂きます」
 「でもっつ!そいつじゃ、菊を運べなっつ」
 王を指差して言い募ろうとする非常識な美国の目の前で、本田の身体を軽々と抱き上げた。
 ほかーんと、間抜けな顔を晒す美国に、冷ややかな眼差しを向けてやる。
 外見で判断する危険を本田で知り尽くしたと思っていたが、本当に馬鹿のようだ。
 「我も、パーティーは欠席させて頂くある」
 言い切って、何やら言いたげな美国以外の全ての目線をも無視して、王は本田を己の部屋へ
と運んだ。

 「やっつ。もぉ……王さんっつ。我慢っつできませんっつ」
 昔、昔。
 本田にかけた深く複雑な暗示。
 満月の夜にだけ、王が側に居ると発情するように施した、呪い。
 「我慢できないのなら、どうすればいいか。わかっているあるな?」
 「はぁ、いっつ」
 本田は、はあはあと荒い呼気を紡ぎながら全裸になった。
 月明かりに照らされた久しぶりに見る裸身は、仄かに闇から浮き上がって見える。
 立ち竦む王の足元に近付いてきて、その袖口をくいくいと掴む幼い仕草に、頷いて、寝台
に座り、股を開いた。
 とととととっと、ついてきた本田は、すとんと腰を下ろして手早く王の衣服を脱がしにかかる。
 民族衣装とは違い、スーツのズボンは脱がしにくいようだ。
 本田は迫り来る快楽の強さにだろう半泣きで、ベルトを抜き取った。
 下着を膝まで引き摺り下ろし、喉を鳴らしながら王の性器を舐め始める。
 自ずから設定した呪いにも関わらず、腰の引ける淫乱具合だ。
 我慢できないらしく、王の性器を丁寧に愛撫しながら、己の性器も扱きたてている。
 「菊?我より先にイくならば、お仕置きあるよ」
 「っつ!」
 実際イく寸前だったのだろう本田は、大きく身体を震わせると己の性器を扱いていた手を
離した。
 その空いた手を今度は、王の性器を扱くのに使う。
 扱かれながら舐められる快楽に、さして早くはないのを自負している王も、呆気なく放った。
 もっと先伸ばしても良かったのだが、本田がそろそろ限界のようにも思えたから。
 「んっつんっつ!」
 口の中に勢いよく吐き出した精液を、本田は掌にとろりと溢して見せた。
 そうして、掌に乗った液体を己の蕾に塗り込める。
 ベッドの上に、のそのそと上ってきて、王に向かって尻を高く突き出した。
 「おくまで、おかしてください。や、お、さっつ」
 枕に顔を埋めて、恥ずかしそうに腰を振る本田の耳朶を噛みながら、ゆっくりと圧し掛かる。
 一度出しただけでは萎えない性器は、本田を喜ばせることだろう。
 「好きなだけ、狂え?」
 「あああっつ!」
 入った瞬間に、また射精した本田の中は、絶妙な蠢きで王の性器を絞る。
 耐える為に見上げた目の端で。

 大きな丸い月が、静かに輝いていた。
 
 


                                                     END




 *王さんは長く生きているので、気が長いのです。
  今回も偶然、菊たんを抱けましたが、実に何年ぶりとかいうレベルです。
  どうしても我慢できなくなると自ずから菊を呼び寄せます。
  勿論、満月の日に。
  でもって、この菊は枢軸辺りとラブ関係だと思います。
  しかし、王に呼ばれると、やっぱり足を伸ばしてしまう程度には、
  王に捕らわれています。
  そんな中日。
                                                 2009/03/08
 



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