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 恋愛観

                                              
   「大佐……だいじょぶ、ですか」
 ゴム越しに出される感触までをも拾ってしまう淫らなのだろう身体も限界に達したのか、
へたっと、奴の胸の上に懐いてしまった。
 「あまり、だいじょぶ、じゃない…かな?」
 さすがに乗っかるには俺、重過ぎる身体ですからねーと笑って、騎乗位ばかりさせるので、
私はブレダの腹の上。
 一人腰を振る癖がついてしまった。
 男性同士のSEXで、ましてや挿入を望むのならば受身である私の方が大変なのだと常々思う
のだが。
 今も浮かんでいる汗は、奴の方が遥かに多い。
 元々綺麗好きの性質らしいので、汗の臭いなんかも全く気にならないし、全体的に肉付きの
良い身体は擁かれているという感が強くて、汗ばんだ胸の上に自分の身体を預けるのも案外
と気に入っている。
 「…すんません。何だか最近やり過ぎっすよね」
 「んぅ?まぁ、あれじゃないのか…慣れてきたからじゃないのか」
 むしろ欲しがり過ぎは私の気がする。
 これだけ汗まみれにさせてしまった日には。
 「それもありますけど、久しぶりってのも付け加えて下さい。俺、ハボ程盛っちゃいないと思い
  ますけど」
 「……どうしてこういう時に、他の男の名前を出すんだ?」
 しかも、昔の男の名前を!
 隠すまでもなく、私の過去の恋人達の存在はバレバレで。
 前の恋人であるハボックに至っては、ブレダの親友だった。
 「比較対照としてわかりやすいでしょう?」
 「……それは!……そうなんだけどなぁ?」
 普通はSEXのピロートークに、昔の男を持ち出しはしないだろうよ。
 嫌われる男の条件ではないのかね?
 とか、思ったりするのだが。
 こいつの感覚は、私とだいぶ違うのだ。
 あの二人は、大佐にとっては過去の男でも、大切な人には変わりないでしょう?と言う。
 恋人同士だった事も含めて、大事な人の話を無理に避ける事はないのだと。
 特にハボックは、復帰も有り得るのだから、と。
 極々普通の会話に組み込んでやりましょう、と。
 ヒューズは、私の親友で。
 ハボックは、ブレダの親友で、私の部下。
 肉体関係があった件に関しては、まぁ、大人の事情って奴で表には出さずに。
 俺達の生活の中に、居てもいいんじゃないんですか?
 と、言ってくれる。
 出来た恋人だ!と思うのが普通だが、こんな場面で持ち出されてしまうと、私への愛情を幾
許か疑う。
 「そうなんだけどなぁ?」
 「……ちょっと」
 「ちょっと?」
 「不満」
 「……不満ですか」
 腹の肉を、たゆたゆさせて笑ったブレダは、よっこらせっとばかりに私の腰に手を当てて、
持ち上げる。
 ちゅぽん!と思わず赤面しそうな、イヤラシイ音がして、ブレダのナニが私の中から抜け
出した。
 「このままだと、流れてきちまうんで。大佐は太ももの上で、もーっとしていて下さい」
 私の中に入っていた時は、天を仰いでいたモノも、今は元気を無くして、斜め45度ぐらいの
角度。
 ちょっと気を抜くと、ゴムの中から精液が流れ出してしまう。
 ぬるつくゴムを手早く抜いて、くるくると縛って、手を伸ばした先のチッシュで包んで、ぽい!
 こんな時には、手早くスマートに後始末をつける奴なのだ。

 「はいまんすぅー」
 両手を差し出してキスをねだる。
 「あのねぇ……まだ、後始末してる最中なんですけど」
 と、せかせか手を動かしながら、けれど私の頬をぐいと引き寄せて、くるっと舌を絡めるキスを
くれた。
 自分のアレについている残滓を、何時の間に準備したのかウェットティッシュで丁寧に拭き、
更にはティッシュで全体を拭う。
 「……照れるんですけど?」
 「構ってくれないんだから、見るぐらいいいだろう?」
 「本当にアンタは……寝付くまで、ずっと触られてないと気が済まないんだから……」
  困った人ですよ!
 と、言いながらも。
 伸ばしてきた指先が顎をこしょこしょっと擽る。
 私が今までコイビトだなーと思うくらいに嵌った相手は、特に男に関しては全員マメな奴だっ
たが。
 ブレダも実にマメな性質だ。
 最初は外見と、ハボ顔負けのやる気なさげな雰囲気で、そんな風に細やかな気遣いができる
奴だとは思わなかったけれど。
 今まで付き合ってきた女性ともこうだったのかと、ついついいらぬ嫉妬をしてしまうぐらい、
私を甘やかす。
 「今度は…何です?」
 いそいそと履き上げた、臍が隠れるたっぷりしたトランクスは、私のプレゼント品。
 柄はシンプルにストライプ。
 ボーダーにしなかったのが、私の愛情だ。
 ……それだと腹肉が、ぼてっとして見えるからな。
 「ん?お前は私をしみじみ甘やかすよなぁと、思って」
 「甘やかしてます?」
 「自覚なしか?」
 「んー女性相手の時とは勝手が違うから比べようがないっスよ。部下や同僚の軍人とも付き
  合ったことないのに、いきなり同性の上官ですからね。今でも手探りな観が否めないので」
 「じゃ、天然なのか?」
 この甘やかしっぷりは。
 「大佐限定って受け取ってください。人聞きの悪い。はい、今度は大佐の始末しましょ」
 しっかりと毛布の中に身体を隠しているのだが、ブレダは慣れたもので尻をふりふりさせなが
ら、頭から毛布に潜り込むと、私の太ももに手をかける。
 「はい、膝立てて。股、開いて下さい」
 毛布越しなので、少しくぐもった声。
 「ん」
 見えないとわかっていても、ついつい頷いてから、膝を立ててそろそろと太ももを開く。
 明かりは、そんなに強くはないが、毛布越しでも私の身体は十分によく見えるだろう。
 羞恥を煽られるが、奴の顔が見えない分幾らかマシだ。
 これがヒューズだったら、当たり前のように毛布をひっぺがして後始末をしたし、ハボックも
遠慮しいしい、私の反応を見つつも、直接明かりの下で作業する事を好んだだろう。
 が、ブレダは違う。


                       


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