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 煩悩



 「……んあっつ……」
 大佐の背中が艶やかな弧を描いて撓る。
 高飛車で不遜な物言いは形を潜め、ただ俺の劣情って奴を煽る甘ったるい声が零れ落ちた。
 「……がね……のっつ」
 薄っすらと開かれた瞳の端、今にも溢れそうな水が溜まっている。
 この男の涙、なんて。
 どんな状況でも見ることなんてできないって、思ってた。
 「…も……るし……」
 縋るようにして爪をたてていた背中を掻き抱くようにして、深く繋がろうとする手馴れた淫乱具
合にもやられっぱなし。
 なんてーかさあ。
 女を知る前に男を覚えたのって、問題なんじゃないかなって気はするんだけど。
 この人を覚えたら、他の誰にも目なんかいかないや。
 ホント。
 恋人の欲目じゃなくて。
 ガキの稚拙な思い込みでもなくて。
 「……大佐……」
 耳朶を噛みながら呼べば、俺を銜え込んでいる箇所がぴくぴくと痙攣する。
 その絶妙でささやかな蠢きは、背筋を怖気だつくらいの愉悦を引きずり出してくれた。
 なるべく長い間大佐の中を感じていたいので、腰の突き上げはゆっくりで、いきそうになれば
容赦なく止める。
 ま、止めたところで、続きを促すように大佐が中を締め付けてくれるんで、あんまし効果はな
いんだけども。
 「んうん」
 また、俺が動きを止めた時の大佐の表情が艶っぽくってさー。
 犯罪的なんだわ、これが。
 
人形顔負けの睫毛に溜まっていた涙が、俺の腰の動きに耐えかねたように、ころころっと転
がる。
 頬から顎を伝って、真っ白くて、今は俺が散らしたキスマークがあちこちについているので、
赤い部分が目に付く首筋を滑ってゆく。
 日頃の仕事さぼり常習犯加減から察するに、軍人としての鍛錬なんかあんまりしなかったん
だろうなーとか勝手に思い込んでいたんだけど。
 いざ抱いてみると、アームストロング少佐のようにはいかないが(いってもらったら、それは
ちょっといただけないけれども)、つくべきとこに筋肉もついてて驚いた。
 士官学校時代には、せっせと鍛錬に励んだのかもしれない。
 俺の知る大佐からは、想像もつかないのだけれども。
 「…どう、した?」
 「ああ。こんなに綺麗な筋肉がつくほど、昔は一生懸命な人だったのかなーって思ったん
  だあ」
 「今だって……懸命だぞ?……ほ、ら」
 中が、俺の貧困な語彙では表わせない蠢きで、俺の肉塊を包み込みながら吸い出す感じ。
 「ちっくしょ……」
 堪えきれなくなって、大佐の中に注ぎ込んでしまった。
 「……若いよなあ」
 ぽんぽんと背中が叩かれる。
 労ってくれてるのかもしれないが。
 「早くて悪かったよ!!」
 嫌味にしか聞こえない。
 「そうかねぇ。早くて気持ち良いなんて、凄いことだと思うのだけれど?」
 頬に軽い、口付け。
 引き摺り落として、持ち上げる。
 全く、性質が悪いったらない。
 「数もこなせるし?私には向いているよ。君のSEXは」
 って、よくそんなつらっとした顔で言えるよ!
 つらっとお!
 「おやおや。本当、可愛いなあ。真っ赤な顔して」
 額に張り付いた髪の毛を指の先で払いながら、はははっと胡散臭そうに笑う。
 「大好きだよ。鋼の?」
 鼻先に届いた、唇。
 「……俺も……好きだ……」
 返すキスは、お互い微笑んだままの唇に。
 
 恥ずかしいことこの上もない、甘ったるい雰囲気に包まれて。
 こんなのもありか、とか思う自分自身の変化は、悪いもんじゃないだろう。
 まずい人に、掴まったなーってのはあるけどよ。
 この人が、俺のモンだって想像しただけで、嬉しくってしょーがねーんだ。
 これがさ。


                              
                                                        END  




 *エドワード×ロイ
  ひゃあ。甘い(笑)書いた本人もどびっくりの甘めテイスト。
  たまにはこんなのもいいかーと思いつつ。
  鬼畜も書かないとねんとか、邪妄想を抱き中。





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