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  遠慮なんて。



 近くで、何か不穏な気配を感じてぱちりと眼を開く。
 アドナンと一緒にいる時。
 側にカルプシが居ると良く感じる雰囲気だったので、目覚めは素早かった。
 また、カルプシがどこから聞きつけてくるのか、菊がアドナン宅に遊びに来ているのを聞き
つけて、押しかけてきたのだろうと思ったのだ。
 しかし。
 「……どこです、ここ」
 最後の記憶は、アドナンが丁寧に淹れてくれたトルココーヒーを飲んだら、何故か急激な眠気
に襲われて。
 彼に勧められるまま、そのがっしりした太股の上に頭を乗せて寝入った所。
 「っていうか、サディクさん。何処です?」
 カルプシを撃退に行ったのだろうか。
 にしては、雑多な雰囲気が微塵も感じられない。
 アドナンは自分が膝枕をされるのを好む以上に、自分が菊に膝枕をすることに耽溺している。
 している最中は、余程の事がなければそのままの体勢で居るし、何かあったとしても菊の
視界が届かない場所へ行くことはないのだ。
 「おかしいですね……う、わ。なんで、す。これっつ!」
 首を傾げた時。
 耳元でしゃらんと聞き慣れない音がした。
 何の気なしに耳に手をやれば、繊細な細工のイヤリングが下がっている。
 「え? う! はい? え、ひゃあああ!」
 そこまで全く気が付かなかった自分は、迂闊以外の何物でもないのだが。
 菊の身体は、装飾過多なまでに豪奢な衣装と貴金属で飾られていた。
 「これって、もしかしなくても、アンクレット? こっちは、うわ。初めてですねぇ。サークレット!
  鏡っつ! 鏡はありませんかねっつ」
 見回せば、部屋の奥に女性等身大サイズの姿見が置かれている。
 菊は寝かされていたベッドから勢いも良く飛び降りると、己の姿を映した。
 「け、しょう……してなくても、これですか。恐るべしオリエンタル衣装効果」
 そこに映った女性は、菊が見ても菊には見えない妖艶な女性が映っている。
 記憶を探ればベリーダンスの衣装が一番近いだろうか。
 赤と金色で華やかに織られた布で作られた衣装は、大胆なデザインやスパンコールにビーズ、
クリスタルなどをふんだんに使ったデザインのせいか本田の貧相な身体を、豊満に見せている。
 足にはアンクレット、額にはサークレット。
 どちらにも使われている赤い石はルビーだろうか。
 宝石に詳しくない菊でも、高価なものだとわかる色見の深さと鮮やかさ。
 開いた胸元にはチョーカーとネックレス。
 こちらも赤い石。
 どこぞかの美術館に所蔵されていそうな逸品に、眩暈がしてきた。
 腰には何重にも回ったベルトもたぶん十八金。
 最初に気付いたイヤリングにも小さな赤い石がついている。
 だが、指輪だけがシンプルなプラチナリング。左の薬指に一つだけ嵌めてあった。
 立ち上がって下がってきた頭から下げられているベールを跳ね上げて、今度はぐるりと周囲を
見回す。
 アラビアンナイトに出てくる寵姫が住まうような、豪奢な部屋だ。
 普通の女性が好みそうな装飾に、豪奢な調度。
 菊の好みでいけばもっとシンプルなタイプが好ましいのだが、この部屋には似合わないだろう。
 きらびやかな世界にしばし眼を奪われていた菊が、そこに気が付くには随分時間がかかって
しまったのは無理もないだろう。
 「……この部屋。窓がありませんね……」
 菊の勝手な印象だがこの手の部屋には、陽光を一杯取り込めそうな大きな窓が嵌められて
いるイメージがあったのだ。
 南国風なら尚更。独特の心地良い風も取り込む為に。
 「しかもこの部屋。内側からは鍵。開けられない仕様ですし……」
 どう考えても、ここは日本的に言えば大奥。
 王さん的表現で後宮。
 ここの雰囲気に合わせて言うのならハレム。
 「もしかして、私の記憶が飛んじゃったんですかねぇ」



                                    続きは本でお願い致します♪
                         
  さぁ、めろめろに菊をするサディクさん登場。
                                   女体でのドえろを頑張る所存。




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