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  ええ感触やね。



 愛しい恋人が日本の地からスペインへ飛んできて早三日。
 そろそろスペインのシエスタや日々五回の食事に抵抗が少なくなりつつある頃合。
 「や。良い事やとは、思うんよ?」
 珍しく菊より早く目を覚ましたカリエドは深い溜め息をつく。
 大きなベッドの上で愛しい人は小さな身体を、更に小さくするように丸まって寝ていた。
 規則正しい寝息を立てながら、ロヴィーノの腕の中にしっかりと抱かれる形で。
 「仲良き事は美しきかなってな……けどな。何でいっつもシエスタの時はロヴィに懐くん?」
 独り言めいた囁きは、珍しく眠りの浅いおい人を起こしはしなかった、代わりに。
 「そりゃ、俺の手がフェリに似てっからだろ。いっちょまえに妬いてんじゃねーよ」
 目を伏せたままのロヴィーノが返事をする。
 身体を起こそうとするが、温もりが恋しいのかもれなく菊の身体がくっ付いてくるのに、彼女
が起きている時には決して見せぬ、砂糖漬けのチェリーが入ったミルクチョコレートを美味し
そうに食べる時にとても良く似た表情を浮かべて、元の位置に収まった。
 確かに菊は、フェリシアーノを甘やかすことにかけては完全な別格扱いで、カリエドに対す
るよりも余程恋人同士っぽい態度を取ることが多い。
 それは、彼女の隣にフェリシアーノとルートヴィッヒしかいなかった時の名残だと菊は苦笑
するが、フェリシアーノは違う。
 だって、菊は俺の可愛い可愛いバンビーノだし?
 あ! 
 ちなみにルートがマードレね。
 つまりは、ルートヴィッヒが母親でフェリシアーノは父親。
 菊は二人の可愛らしい子供だと言い張るのだ。
 色々と突っ込みを淹れたいところはあるのだが、ある種恋人とは違う永遠に変わらぬ絶対
的な情を惜しげもなく菊に注いでいるのだと言っても良い。
 そんなフェリシアーノが、
 兄ちゃん、兄ちゃん! 
 菊は本当に可愛いでしょ! 
 ご飯を食べる時、美味しそうに食べるでしょ! 
と 幾度となく菊をロヴィーノに引き合わせるものだから、ロヴィーノまでも家族の一員として
陥落してしまった。
 意外かもしれないがロヴィーノは子供に滅法弱い。
 実に面倒見の良い兄気質で、特に楽しそうに食事をする子供が好みだった。
 菊は、普段は絶滅したと言われる大和撫子を地で行けるが、食事時になると本人曰く、
はしたないくらいに貪欲になってしまうのです……と、なる。
 不味い物でも、文句を言わず黙々と食べる菊だが、美味しい物を食べる時は、食べられた
食材も本望だろうと断言できる蕩けそうな顔をするのだ。
 それがとにかく、ロヴィーノの庇護欲をそそるらしい。
 この、三日間というものロヴィーノは菊を側から離さずに、せっせと世話を焼いた。
 最初は随分と遠慮をしていた菊も、素直に甘えた方がロヴィーノも喜ぶと知ってから、空気
読みの達人は、そんな風に空気を読むんだ? と関心するレベルで、ロヴィーノを喜ばせた。
 「いいじゃねーか。俺も会うの久しぶりだったんだし? 今日は二人っきりで闘牛見に行く
  じゃねーか。俺だって見たかったんだぜ、ちくしょーめ」
 「そやから、ちゃんとチケットは三枚取っておいたやろ? 仕事が入ってしもたら仕方ない
 やん」
 菊が、日本を発つ前から見たいとリクエストを寄越し、ロヴィーノが、俺も久しぶりに見たい
から一緒に行くぞ! と胸を張ったから、カリエドとて頓着なく、そやね。と言ってチケットを
取ったというのに、ロヴィーノは突然入った仕事で、菊が滞在する残りの4日間一緒に居ら
れなくなったのが悔しくてカリエドに八つ当たりする気満々だ。
 「ったく。マフィアの抗争ぐらいてめぇらで片付けろてんだよ!」
 「でも、トップ2がぶつかったんやから、ロヴィしか対処できへんやろ」
 国の化身であるロヴィーノを評価するマフィアは多く、彼はトップ10全ての組織に干渉
できる特異な立場にある。
 自ずから決してマフィアに近づくことがなく、何時でも冷徹なくらいの公正さで接する為に
信望者も多い。
 今回も、拮抗する力関係の中でもトップをひた走っている組織のドンに頼まれて、やっと
腰を上げたのだ。
 「そりゃ俺だって、菊が滞在してる時じゃなければ、ここまで荒れねーよ! せっかくベタ
  づきでうんと、甘やかしてやろうと思ったのに、このやろー!」



                             
       続きは本でお願い致します♪
                                 トニョさんをマタドールにしようか絶賛迷い中。
                         書くとなると時間を食うので覚悟しないとなぁ。




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