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  大丈夫だよね?


 「ブラギンスキさん……もぉ、本当に」
 少しでもグラスが空けば酒を注がれ続けて早、数時間。
 酒の強さには自信があった、本田のプライドはあっさりと砕かれかけている。
 「ええ!もぉ駄目なの?これからじゃないの」
 にこにこと笑いながら、本田のニ倍近くの酒量をこなすブラギンスキは、全く顔色を変えて
いない。無論、
 態度もそのままだ。
 笑顔で、強引。
 微妙に強引の度合いが悪化しているような気もするが、本田の思考は現在かなり覚束無い
のでイマヒトツ自信が持てない。
 「すみません。いい加減。限界です」
 「うそぉ。顔色こそ赤くなってきたけど、事場とか全然普通じゃない」
 「無理、してるんです」
 「じゃ。無理ができなくなるまで、飲もう?ね」
 「ちょ!ブラギンスキさっつ!んっつ」
 テーブルの上に置かれた本田のグラスを手にしたブラギンスキは、ぐいと本田の唇にグラス
を押し付けてくる。
 「ほら。飲んで?」
 「んっつ!」
 顔を背けようとするが、強引に向きを変えさせられて、グラスを傾けられる。
 恐ろしい強引さに背筋が怖気だった。
 「あーあ。歯を食いしばっちゃ駄目じゃない。こんなに溢しちゃってさ。勿体無いと思わないの?」
 確かにそれは、本田が用意してきた高級日本酒だ。
 たまには、一緒に飲もうよ。
 二人きりでさぁ?
 と、実に珍しいブラギンスキからの連絡があった。
 プライベートな連絡を取り合うほどに、親しい間柄ではなかったから余計に。
 何かあるのかと勘繰っても見たのだが、お国の情勢も宜しくない昨今。
 彼の誘いを断るのは得策ではなかった。
 会議の為に日本を訪れていた彼を、自宅に誘っても良かったのだが、どうにも気が乗らな
かったので、彼の泊まるホテルを訪ねた。
 国賓扱いなので、著名ホテルのスイートルームに座っている彼は、まるで、そこが自分の
部屋のように手馴れた風に振舞って、本田を迎え入れてくれたのだが。
 気が付けば、執拗に酒を勧められていた。
 もしかして、彼は酔っ払うとこうなるのかもしれないが、そんな彼は見た事がなかった。
 世界会議の後の酒宴で、王と二人黙々と恐ろしい量の酒を過ごしても顔色も言動も変えた
ことがないというのに。
 「ほら、歯を開けて」
 「何をっつ!」
 一体彼は何がしたいというのだろう。ブラギンスキが本田の口の中へ指を入れてきたのだ。
 「うわ……あったかぁい」
 「ひゃめて、くらさひっつ」
 しかも根元まで入れた中指で、口腔をなぞるようにして動かしてくる。
 「ん?何を言っているのか、わからないよ」
 「ぶらひん、ふきはん!」
 「……イヴァンって、呼んでみない?」
 いきなり、何を!と言いかけて。
 不意に見たことないような複雑な眼差しで、本田を見ている様子に気が付いた。
 この眼差しはどこかで……ああ、カークランドさんだ。
 カークランドさんが、ジョーンズ君と私が話をしている時に見せる目つきにどこか似ている。
 何かを訴えたがっているような。
 「……ひヴぁん、さ?」
 「もう一度」
 あ、指が抜かれた。じっと見詰めてくる瞳の真剣の色が少し怖くて。
 肩を竦めながら囁く。
 「イヴァンさん……」
 「うん。やっぱりいいな。僕。君にはイヴァンて呼ばれたいみたい」
 「……そうですか」
 釈然としないものはあるが、酒から話がずれたのはありがたい。
 「そうなると、本田君…じゃあ違うよね。菊君って呼ぼう!」
 良い事を思いついた!というように、掌を叩いているブラギンスキをちらりと眺め、本田は
大きな溜息をつく。
 「お好きになさって下さい」
 さして親しくない相手に下の名前を呼ばれるのは、好ましくないのだが。
 そうも言ってはいられない。
 否定された日には、何を言われるかわかったものじゃないしね。
 「じゃあ。親しくなった証に。まだ、飲めるよね?」
 ああ!忘れてくれていたと思ったのに。
 「ブラ……イヴァンさん。私、本当に、お酒は……もう」
 「……仕方ないなぁ」
 ブラギンスキは、手元にあったウオッカの瓶を持ち上げて、ぐっと煽る。
 ああ、やっと諦めてくれた、と思ったその矢先。
 「んんっん!」




                                    続きは本でお願い致します♪
                       どうにもこの二人には、愛が薄くなりそうで困ります。
                                      頑張って愛のある鬼畜を!




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