メニューに戻るホームに戻る




  大丈夫、大丈夫。



 お兄さんの、恋人は。大変、好奇心が強い。

 「ふらんさぁん」
 修羅場も絶好調の五日目。
 睡眠時間は平均三時間。
 直近で睡眠を取ったのは三十時間前。
 十秒くらい落ちるのを睡眠に入れないといけないならば、五分前にも十分前にも寝ている
けれど。
 「んー?」
 「わたくし。もぉ、ねむりたいです」
 「駄目だって。今バイク便呼んだトコだろ。来るまで待ってって。菊お気に入りでしょ。あの、
  細身眼鏡」
 「でも、あのひと。おっぽいついてないもん。ほそみめがねには、きょにゅうがおぷしょん
  なんだもん」
 原稿時にしかかけない眼鏡を投げやりにテーブルの上に置いた本田は、睡眠不足から
来る涙目でボヌフォワを見上げた。
 頭がくらくらする艶っぽさに思わず股間を押さえながら、本田を咎める。
 「何言ってるんだって。菊たんのお好みは貧乳でしょ」
 「きほんてきには、そうですけど。ほそみめがねには、きょにゅうなんです!」
 テーブルをばんばん叩きながら、きょにゅーきょにゅーと騒ぎ立てる本田の足元に
、ぽち君がやって来た。
 心配そうに、きゅわん! と鳴かれた本田は涙目のまま、ぽち君を膝の上に抱え上げる。
 「すみませんねぇ、ぽちくん。ばいくびんがきたら、ごはんあげますからねぇ」
 よしよしと頭を撫ぜるも、本田の体温がかなり熱いのだろう。
 ぽち君は上目遣いに本田を伺ってる。
 本当に頭の良い子なのだ。
 犬の扱いに長けているルートヴィッヒやツヴィンクリも、ぽち君の利口さ加減は手離しで
褒めている。
 「しかし、ぽちくんはあったかくて、ふこふこもふもふで、きもちよいですねぇ。いやされます
  ねぇ。じいはいますぐにでも、すこーんって、すこーんって!」
 すうっと、今にも眠りに入りそうな本田の肩を慌てて揺さぶる。
 ごめんねぇ? とぽち君に目を向ければ彼は、きゃわ、と小さく頷いて本田の膝から降りて、
部屋を出て行った。
 「ああ! 待って。私の癒し! 戻ってきてぇー、ぽちくうううん!」
 両手を畳に付いて、よよよと泣き崩れる本田の肩をぽんぽんと叩く。
 修羅場中の本田も手に負えないが、修羅場終了直後の本田も、違った意味でコマリモノ。
 「もそっと我慢してね。バイク便がそろそろ……」
 と、ボヌフォワが玄関を見やった所で『本田さーん! バイク便でーす!』と言う元気な声が
響く。
 どうせ、付けた所で誰も鳴らしてくれないんですもん! と、本人がチャイムの音に気が
つかないでゲームや原稿をしているのを棚に上げて、チャイムを外してしまったのを熟知
しているバイク便の兄ちゃんは慣れたもので、それはもぉでかい声を張り上げてくれる。
 「ほら! 来たよ! 原稿持って。直接渡さないと終わった気がしないんでしょ!」
 何度か気を使って、ボヌフォワが渡したら責められた。
 私に細身眼鏡を堪能させないつもりですか!
 原稿を直接渡さないと、入稿した気にならないんです!
 しょーがないから、コピ本作っちゃいますよ!
 の、三連コンボでコピー本の製本まで付き合わされるデススパイラル。
 以降は引きずってでも、本田を玄関に連れて行き、本人にバイク便のお兄さんと対峙
させるようにしていた。
 「おお! ほそみきょみゅうめがね!」
 本田は、虚ろな目に輝きを乗せるという、高度な技を発揮しながら原稿の入った封筒を胸に
抱えて、ふらふらと玄関に向かって行った。
 「さて。これで入稿完了だから……」
 何を優先しようかと、ボヌフォワは腕組みをする。
 とりあえず、何かを食べさせようか。
 それとも、風呂をセットしてこようか。
 二人仲良く蒲団にバタンキューで、心行くまで睡眠を貪ろうか。
 「俺としてはねー。疲れ魔羅をどうにかしたいんですけどねぇ」
 成人男性の生理は、国の化身にも適応されるらしい。
 本田より睡眠時間を取っているとはいえ、普段よりは余程追い詰められた状況だ。
 本田を愛しすぎていなければきっと。
 玄関で討ち死にしているかもしれない本田の服を引っぺがして、そのまま三回射精するまで
バックで犯しまくるぐらいはしそうな切羽詰り具合。
 「でもまぁ。俺ってば、菊たんにめろらぶだから、レイプなんてしませんことよ」
 一人でボケと突っ込みを入れていることに、気がつかないボヌフォワもかなり疲れている。
 こんな時悪友のどちらかでもいれば、冷静な突っ込みが入って幾らか自分を取り戻すの
だが。
 片割れのカリエドは、自国で行われるアニメイベントの裏方で忙しく、来る予定だったバイル
シュミットは、日頃真面目な弟が、仕事のし過ぎで倒れた為に代打で仕事をこなしている。
 まぁ、二人きりの修羅場なんてそうそうあるもんじゃないから、本当に、あれこれそれそれ
致したいんだけど。




                                     続きは本でお願い致します♪
                                  フラン兄さんは、書きやすいなぁ。

            つい、甘やかし描写と食事描写を入れたくなるのが難点ですが。




                                       メニューに戻る
                                             
                                       ホームに戻る