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  貴方の為ならば。



 

 「……ああ。やっぱり討ち死にされてるみたいですね」
 恋人同士になったその時に貰った合鍵で本田の家の奥まで入り込み。
 修羅場中につき立ち入り厳禁! と達筆で書き込まれた木のプレートが揺れている襖を
そっと開ければ、そこには本田と数人のオタク仲間が寝そべっていた。
 幾度も見ている状況なので、驚きはしない。
 だがしかし。
 本田の身体を抱えて寝入っているバイルシュミットの、細身だが筋肉質な体を引き剥がし、
本田の足首を掴んでいるボヌフォワの指先も一本一本取り外し、本田にキスでもせんばかり
の位置で寝息を立てているカリエドの顔をずらすのは忘れなかった。
 「ん。これで良し……と」
 本田の身体だけを彼等が入り乱れる場所から抱き上げて、寝室へと運ぶ。
 起こさないようにと気遣わなくても、すっかりロリナイティスに心を許した本田が、目を覚ます
事はない。
 本田を寝室へと寝かしつけたその足で、ロリナイティスはキッチンへと足を運んだ。
 修羅場明け、たっぷりの睡眠を取った本田は、普段の数倍は食べるのだ。
 ちなみに、他の三人はもっと多くを食べる。
 こんな事だろうと食材を多めに持ち込んだが、足りない気もした。
 恐らく食べ物の匂いに敏感な性質のボヌフォワが起きてくるだろうから、彼に買い物を頼めば
良いだろう。
 ボヌフォワはきっと、悪友二人を引き連れて、センスの良い買い物をこなしてくれるはずだ。
 豚の血を使って麦や小麦粉を混ぜ込んで作るソーセージ・ヴェーダレイやサワークリームや
ソースと一緒に食べるジャガイモのお餅・ツェペリナイといった、母国の料理を事の他喜んで
くれるルートヴィッヒは、今回のメンバーではない。
 生真面目なロリナイティスは本田に教授してもらい和食の腕前もかなりものなので、今回は
和食中心の食卓にしようと決める。
 冷蔵庫と冷凍庫の中を覗けば、かなり新鮮な食材が詰っていた。
 どうやら、今回の修羅場はそこまで長い物ではなかったらしい。
 「さつまいもの炊き込みご飯、鮭の粕汁、かぶのえび餡かけ、里芋と葱の卵とじ、がんもどき
  と白菜の煮物と後は……」
 「肉っけがないよね……」
 「ボヌフォワさん!」
 匂いがする前に起きてきた所を見ると、どうやらかなりお腹が、減っているようだ。
 寝癖もそのままに、冷蔵庫を覗き込んでいる。
 「んーと。豚肉のしょうが焼きと鶏肉のから揚げ甘酢がけでどうだ?」
 「いいですねぇ」
 「日本は野菜が美味いのがあっからなぁ。どっちにも生野菜のサラダもつけとくか……
  お兄さんも手伝うよ」
 ほわわわ、と大きな欠伸をしたボヌフォワは、キッチンの片隅にかかっているエプロンを
手にする。
 「ほらよっつ!」
 「ああっつ! すみません!」
 投げてくれたのは、ロリナイティス専用のエプロン。
 本田の家には、他にもボヌフォワ、アドナン、王専用のエプロンがある。
 食道楽の本田は、世界三大料理の称号を持つ彼等と、特に懇意にしていた。
 「先にご飯と味噌汁の下拵え頼んでいいか? で、終わったらこっちを手伝って貰うってコト
  で」
 「了解です」
 和食にはちょっと自信のあるロリナイティスだが、やはりボヌフォワには遠く及ばない。
 段取りは丸投げして、示された作業に手をつける。
 どちらも作り慣れた料理なので、戸惑う事もない。
 「今回の修羅場は短かったみたいですね?」
 冷蔵庫の中から、大根、人参、板こんにゃく、油揚げを取り出して切り揃えながら尋ねる。
 「そうだね。俺等が参戦してたのは三日前だよ」
 付け合わせの生サラダを冷やしたいのだろう、それから準備を始めたボヌフォワが苦笑
しながら返事を続けた。
 「菊は、一週間前からかかってて、その前は原稿の元ネタのゲームをやりまくってたからさぁ。
  途中、何度もめろめろになってたっけ」
 そういえば、以前に訪れた時にはロリナイティスを放置して、噂の18禁ゲームをせっせと
攻略してたっけ。
 あんまり長い時間放って置かれたので、ついついゲームのアレなシーンと同じ事をお仕置き
をしてしまったのを思い出す。
 「そういやあ、今回。エロシーンが無茶苦茶気合入ってたぜ? この体験は、ぜひ生かさ
 ないと! って言ってたけど」
 と、によによ顔で囁かれてしまう。
 勘の良いボヌフォワは時々、凄く苦手だ。
 「んあー? トーリスやん。何時来たん?」
 キッチンでのざわつきが聞こえたのか、カリエドが髪の毛を掻き混ぜながら、キッチンへ
入ってくる。
 「……食べるなよ? 飲むだけにしとけよ!」
 「ええ! ちょっとぐらいええやん」



                                    続きは本でお願い致します♪
                                            初書きのトリ菊。
                 オタ菊シリーズは、特にマイナーカプに力を入れたい所存。



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