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 悪夢
 

 「っつ! ひっつ」
 自分の声に驚いて、目を大きく見開く。
 一瞬真っ白だった視界は、すぐに元通りとなり私を抱えて眠る男の胸を映した。
 なるべく小さな安堵の息をついたのは、大きく身じろぎをすれば勘の良い恋人が目覚めて
しまうと思ったからだ。
 そっと上目遣いに伺えば、碌な手入れもしないのにふわふわの金髪が嫁にも鮮やかな年下
の恋人は、満足気に私の体を抱えて眠っている。
 すーすーという穏やかな寝息を聞いて、私はもう一度そっと息を吐き出す。
 悪夢に魘されると喉が渇くという格言もそのままに、喉が風邪を引いた時のようにびりびりと
痛んだ。
 自分の身体をがっちりとホールドしている彼の手の中から抜け出すのは、至難の業だったが、
今日は成功した。
 どうやら、恋人の……ジャン・ハボックの眠りは珍しく深かったらしい。
 理由は、夜勤が一週間続いた後の濃厚なSEXのせいだろう。
 そう思えば、自然頬が赤らんでしまう。
 欲しがったのは何もハボックだけではなかった。
 首を振りながら足音を殺してキッチンへと向かう。
 冷蔵庫の中には、マメなハボックが作り置きしてあるレモネードがある。
 私の好みは炭酸入りなのだが、今日は生憎と炭酸が切れていて割る事が出来ない。
 それでも十分美味いのだが……と、氷を入れもせずよく冷えたレモネードをグラスに適量
注いで、一息で飲み干した。
 「ふー」
 嫌な汗が一気に引いてゆくようだった。
 う一杯の飲もうかとしばし考えて、やっぱり止めた。
 こういった飲み物は、後と一口! と言う所で止めておく方が身体にもいいのだ。
 一人頷いて、冷蔵庫のドアを閉めグラスをシンクに置きに行こうとした、その時。
 「また、魘されたんですか」
 不意に背中から抱き締められた。
 反射的にびくつく身体を宥めるように、しかし強く抱き締めてきたのは、起こさないようにと
懸命の注意を払った大切な恋人。
 「……すまない。起こしてしまったか?」
 「アンタが腕の中にいないと、落ち着かなくてね。寂しがりーな恋人ですんません」
 「や。私こそ。何時も魘されてばかりですまないな」
 「今日は、うんとしたから眠っててくれると思ったんですけどねぇ」
 もしかして、足りんかったです? と首筋を舐められる。
 「馬鹿を言うな! 足りないはずがないだろう!」
 「本当に?」
 「ひゃあっつ」
 容赦なく乳房を揉み上げられて、甘ったるい嬌声が喉の奥をついて出た。
 続きを欲しがっていると思われても仕方ない縋る声音だ。
 「ほら。こんなにいー声。ここで、しちゃいます? シンクに手ぇ付いて貰って立ちバック」
 ふわっと持ち上げられたのは、コットンのネグリジェ。
 ハボックの好みで着せられているが、こんな簡単にセットされてしまうのでは、パジャマの
方が幾らかマシがもしれない。
 「いい! しなくていい! と言うか。するな! 明日仕事にならなくなるんだ!」

「ええ。いいじゃないですかー。俺アンタの分の仕事もしちゃいますよ」
 下着に指が掛かって、駄目だという前に手早く降ろされる。
 足首まで脱がさすに膝裏辺りで止まっているのが、また。何とも言えずにイヤラシイ。
 「明日は、演習があるだろう! お前は現場を。私は全体を監督しないと! ひんっつ!」
 勃起した奴の先端が入り口にあてられたと思ったら、驚くほど呆気なく、性器が根元まで
入ってきた。
 「あー。やわっけー。さいこー」
 「ばっつ! おまっつ!」
 「入り口でもそっと梃子摺るかなーとか、思ってたけど。平気だったスね? やっぱりロイ
  も欲しかったんだ」
 「そんな事っつ! あ、やっつ!」
 ずるずるずると引き抜かれて、中がきゅうと締まる。
 どうしようもなく浅ましい女の性。
 ハボックと付き会う前まではなかったはずの癖。
 「ああ。いい締め付け。そーゆー風に締めると……」
 「ひうううっつ」
 「奥まで入れるのがきっつくなるってーのに。締めるのやめられねーんだよなぁ、ロイは」
 「や! しないでっつ。も、しちゃ駄目っつ」
 指で掴まれているだけのに、自分の思うように身体が動かせない。
 ハボックの良いように揺さ振られて、突き上げられて、爪先が空に浮く。
 「あ! あ! あ! あ! あああっつ」
 何度されても耳に汚い、ケダモノのような声。
 必死にころそうとすするが、ハボックはそれを許さない。





                                 続きは本でお願いしますって。
                        鋼でも新刊プレビューを始める事にしました。
          どうにもヘタの更新ばかり優先してしまうので、これもありかなーと。


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