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  愛人


 僕が好きなのは、君。
 君が好きなのは、半身。
 半身の好きな人は、相棒で。
 相棒の好きな人は、君。

 綺麗な三角関係の泥沼の中、僕が喜んで飛び込んでいったのは、例え僕の
望む形ではなかったとしても、君が手に入るからに他ならない。

 「ひ、すい」
 君が僕の名前を呼ぶと、驚くほど綺麗な音に聞こえるのが不思議だ。
 「……っとっ」
 もっと、して。
 と。
 頬をほんのりと染めて顔をうつむいたままで、僕にすがり付いてくる姿を見
るにつけ、手放せないなと苦笑する。
 僕の肉塊を目一杯銜え込んで、尚性器への愛撫をねだってくるのは決まっ
て、君が慈しんでやまない半身と会った日の夜。
 「翡翠?」
 「ん?」
 「何を、考えているんです?」
 「僕はいつでも君の事しか考えていないよ」
 「……でも……」
 「ああ、すまないね。触って欲しかったんだっけ」
 根元から扱きあげて、体液の珠を浮かべた先端を親指の腹で擦れば、透明
な体液が後から後から溢れて、親指から人差し指、掌までをもべたべたにして
しまう。
 「こうやって擦ると気持ちいいんだよね。ほら、掌もべたべただし」
 うつむく頬に人差し指を走らせれば、粘つく透明な体液は蝸牛が這ったような
跡を残す。
 「ナカ、も。すっごく締め付けてくる」
 動かない僕に焦れて、僕の指の動きに合わせて腰を振る紅葉の中は蕩けそ
うに熱い。
 すぐに出したいのを、ぐっと堪えて動じない振りを演じるのは、紅葉の嬌態を
もっともっと見ていたいから。
 「……って、翡翠、動いてくれない、し」
 「こんなに元気に動かしているよ?好きだろう。こうやって根元から擦りあげ
  て、ぬるぬるの掌で先端を撫ぜるの」
 零れた吐息を拾いあげるようにして、口付けをすれば、指先の愛撫に感じる
のか、口腔がやわらかく蠢動する。
 「ん、ちが、う」
 「指を動かして欲しいわけじゃないのなら、どこを動かして欲しいのか、きち
  んと口にだして言ってくれないとわからないよ」
 「……翡翠ぃ……」
 「駄目だって、そんな可愛らしい顔をしても。言えるだろう?何を動かして欲
  しいのか」
 直接口に出すのを恥ずかしがって懸命に反らすまなざしを、両手で頬を上
げさせて、真っ直ぐ瞳を覗き込んで固定させてしまう。
 「ん?」
 優しく、優しく微笑んで。
 額に唇を寄せる。
 微かな動きで僕の肉塊が、紅葉の中をそっと穿った。
 「ね、がい」
 大きく見開かれた目が、羞恥を少しでも飛ばそうと、きつく閉じた。
 「紅葉?」
 「し、て」
 ぎゅうっと肩を掴んで、囁かれる。
 小さな、小さな声。
 「何を」
 「動かして。ナカに入ってる翡翠の……おっきいの」
 「僕のは、そんなに大きくないと思うけどね?」
 「僕よりは、大きいでしょう?」
 「形は君の方がいいじゃないか。ここの反り具合とか?」
 裏筋を中差し指の腹、押し付けるように触れた。
 「や!もう、お願い。動いてっ!奥まで入れてぇ……」
 「抱っこしたままじゃ、これ以上は奥まで入れないよ。ただでさえ狭いんだから、
  紅葉の、ここは」
 僕を銜え込んでいっぱいいっぱいの秘所を、指先だけでなぞる。
 「駄目、そこは触らないでっ!」
 ずりあがって逃げを打つ肩を押さえつけて。
 最底をえぐった。
 「んううううっ!」
 「ほら、言ったろう?一番奥に届いても、僕のは全部入らない。これ以上は無
  茶を言わない約束だったね」
 女性の膣のように、全てを銜え込むには未成熟な個所に無理やりねじ込んで
も、なかなか満足してはくれない。
 「だって、全部欲しいっ」
 「もう。仕方ないな、君は」
 入れたままの状態で、僕はごろんと寝そべる。
 「つ、あんっ」
 体を強引に動かしたことによって、少しだけ未知の領域を犯したのか、甘った
るい悲鳴が零れ落ちてくる。
 「はい。これで、紅葉の好きなように動けばいい。もしかするともっと奥まで入
  れるかもしれないからね」
 自分で調節ができる体位では、無茶をするには限界がある。
 こうでもしないと、僕は紅葉を壊してしまうのだから、仕方ない所。
 紅葉が僕を欲しがってくれる以上に、僕は紅葉が欲しくてどうしようもないの
だから。
 一晩中入れていれば、腰を振りつづけていれば、龍麻を忘れられるというの
なら、喜んで殉じるのだけれども。
 「ん。翡翠、手を、貸して?」
 僕が差し出した両の掌に、自分の掌をしっかりあわせて、指を深く絡めると、
バランスを取りながら紅葉の腰が貪欲に蠢きだす。
 くち、ぬちゃと接合部分から聞こえる音がお互いの性感を煽り立てる。
 腰を押し付けられて、味わうようにゆったりと前後に揺れる度、益々硬くなって
ゆく僕の肉塊の形を覚えこもうこもうとするのか、中までもが繊細な動きを繰り
返す。
 堪えるのは本当に厳しいが、どれもこれも紅葉のため。
 紅葉が始終目を閉じているのを良い事に、僕は人には見せられない情けない
顰め面で射精を先延ばしにする。
 前後に振れる時は、動かずマグロ状態で紅葉の痴態を楽しむが、上下に貪り
かかってくる時には、タイミングがずれないように突き上げた。
 



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