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 その都度、引き攣る指先が愛しかった。
 「中、イけしてみろよ?したら、中。たっぷり濡らしてやるから」
 本当は俺の突き上げに溺れながら、漏らすのがダイスキなのを知っている。
 だからこその、鬼畜な命令だ。
 『ん』
 頷く気配と同時に、動きが自分の愉悦を高める物に変化した。
 絡んでいた指が離れるので、目を開ければ。
 必死に目を閉じたまま、己の射精寸前のアレをきつく握り締める媚態が見て取れた。
 こうしとかないと、中でイく前に漏らしちまうからな?
 我ながらイヤラシく笑ったが、目を瞑るロイには見えないだろう。
 散々汚いものばかりを見てきた人生だ。
 せめて今後は、綺麗な物をたくさん見せてやろうって。
 思っていたんだけどな。
 こんな面じゃなくて。
 アンタが好きだって言ってくれた、屈託のない笑顔で終始。
 いるつもりだったんだけどな。

 本当、上手くはいかねーな?

 俺の人生そんなもんかと、思う反面。
 ロイの人生はそんなもんじゃ困る、とも思う。

 目の前では、ロイが必死に中イけしようと頑張っている。
 感じやすい場所ばかりを狙っては、俺のアレを上手に使って励んでいる。
 自慰にしか見えなくて、笑えた。
 それでも、乱れるロイの中は最高で。
 俺は必死に眉根を寄せながら、迫り来る喜悦の波に耐えた。
 ロイの白い首筋が綺麗に仰け反る。
 アレを押さえつけてる指先が震えて、中はイった後の収斂をみせた。
 体中を痙攣させながら、ほろほろと涙を流す。
 涙は、涙腺が壊れたかのように大量に容赦なく溢れていた。
 
 何がそんなに、つらいんだろう。
 悲しいんだろう、と。
 
 間抜けた思考を、壊れたレコードのようにくるくると回転させながら俺は何の断りも入れずに、
体勢を入れ替えた。
 一番手馴れた正常位に持ち込んで、ロイの手首をシーツに縫い付ける。
 そして、約束を果たす為だけに、腰を振った。

 俺の射精を受け入れたロイは、長い放出が終わり、俺がナニを引き抜いた途端、意識を
失った。
 頬をぴたぴたと叩くが反応はない。
 錬成に成功したとはいえ、アレは体力気力をごっそりと持っていかれるものだ。
 そもそも限界だったのだろう。
 大きな溜息をついた俺は、ロイの体を綺麗にする為に準備をする。
 「温いお湯とタオルと、新しいシーツとタオルケット……それから…」
 ロイの逃亡を防止する為の、錬金術も整備しなければならなかった。
 狂気の内にあれば良いが、正気のロイならばここからの逃亡は容易い。
 ヒューズさんの姿を追い求めて、どこかへ消えてしまいそうな危うさが今のロイにはあるのだ。
 どんなにロイが、俺の知るロイでなくなっても、手離す気などなかった。
 「愛してるよ、ロイ。愛してる」
 心地良さそうな寝息を立てるロイの、額に、頬に、瞼に、眦に、顎に、唇にキスをして囁く。
 「お前だけを、愛してる」
 鼻先に囁けば、幻聴が聞こえた。
 『私も、愛しているよ。エドワード』
 何度も告げられた睦言。
 もう二度と聞くことはできないかもしれない、けれど。
 それでも。

 「ごめんな、ロイ。俺は、お前の心がヒューズさんにあっても、やっぱり。どうしても、ロイじゃ
  なきゃ、駄目なんだ……」

 捨ててやれればいいのだろう。
 ヒューズさんを連れ戻して、二人のささやかな生活を見守れるようになれば。
 俺、以外は。
 幸せになれるのだろう。

 「でも、俺は。ロイと幸せになりたいんだ……なりたいんだよ……」

 それが、できない相談だと頭のどこかではわかっているけれど。
 それでも、俺は。
 ロイを手離さないと誓う。

 俺だけが、ただの道化師だったとわかった今でも。
 ロイの側に、ずっと。
 あり続けるのだろう。





                                                     END 

 *長かった!やっとこさ終わりました。
  可愛そうなエドだ。
  そして、この後更に不憫な子になるんだ。
  ヒューロイメインだから仕方ないのなぁ、とも思いつつ。
  幸せなエドロイは別の場所で。
  次回、ヒューズ視点の『無邪気』で補完完了となる予定。

                              2008/09/21




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