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 アニメ 鋼の錬金術師
 
 現在スクエア・エニックス発行『少年ガンガン』連載中。
 原作が着実に大変な事に!せっせと毎月買っておりますとも!
 コミックスで集めるのが無難かなーとも思いますが、最近はDVDも集めようかなーとか、
悪なことを考えてもいます。

 ロイ・マスタング大佐
 ……焔の錬金術師。
    雨の日は無能と呼ばれ、部下にこよなく愛されている模様。
    女遊びが激しいらしいですよ?

 ヒューズ・マース中佐
 ……ロイと士官学校時代からの親友。
    ナイフ捌きはスペシャルに乙。妻&娘自慢が日課。

 エドワード・エルリック
 ……鋼の錬金術師。母親を蘇らせる為に行った人体練成のリバウンドで体の一部に義体を使っている。
    背が低いのがコンプレックス。


 三部作第一弾。
 ロイが大総統になった、一年後という設定です。




 
 加速


 あれほど、切実に願った大総統の椅子。
 ふわりと、疲れた身体を包み込むやわらかな皮の感触に目を伏せて、考え事をしている最中。
 ノックもせずに、入ってきた人影。
 もう時機、二十歳を迎えようという彼の背丈は私の背を、何時の間にか越えている。
 背中に抱えていた大きな薔薇の花束を、勢いも良く私の目の前に突き出した。
 「誕生日おめでとう!」
 「真紅の薔薇とは、まるで告白のようだね、鋼の」
 「今更だけどさ。愛してるよ、ロイ」
 ぴかぴかに磨かれた、私の机の上、ひょいっと腰をかけて、顔を覗き込んできたと思ったら、顎が拾われ
て、口付けが届いた。
 私が躾た口付けは、いつでも私を満足させる。

 身体、だけは。

 「今夜は一緒にいれるんだろうな?」
 「申し訳ないが、難しい」
 「ってく、これだよ。昔はさぼることばっかしだったのに。どうしてこんなに勤勉になったんだか」
 一番偉くなったら、もそっと一緒にいられると思ったのに、とぶつぶつ呟く、鋼のの頬に、手を触れる。
 「今から、三時間までなら」
 「って、ここでするんかよ!」
 「何度もしているだろう?旧知の客が来るから、と人払いをしておいたんだが」
 必要なかったかね、と囁けば。
 軽々と、私の身体が抱き抱えられた。
 「ベッドは譲れないぞ!」

 「君の好きにすればいい」
 今日、この日までずるずると関係を続けてきた、せめてもの贖罪になりはしないけれど。
 私なぞの身体で、いいというのなら。幾らでも君の望むだけくれてやるさ。
 「今日はロイの誕生日だろう?ロイの好きにしてやりてーよ。本当はさ。ゆっくり休ましてやりたいんだけど」
 「……近いうちに、のんびりできるさ」
 「ああ、確かに。大総統という地位がなくなるんだもんなあ」
 私が大総統になったその日から、今日までかかって。
 やっとのことで、軍政を廃止できた。
 今まで軍といわれていた組織は、細かく分けられて国家から民間の手に譲り渡される。
 いわゆる実行部隊は、それぞれの区域を守る自衛隊となり区民に奉仕。
 少佐以上の地位につく者は全て、組織から撤退させた。
 無論、軍政の象徴たる存在だった私も、その席を下りる。
 「この数年間で見事なもんだったよ」
 焔の錬金術師としての技を駆使し、軍政廃止のため、凄まじい戦火を上げた。
 国民の中には、私への恐怖から生まれた絶対的な忠誠が根付いている。
 軍部内の汚い勢力を、誰を殲滅するよりも派手に一掃したこともあって、逆らいさえしなければ、安全な生
活が保障される、と。
 大半の国民はそんな風に思っているはずだ。
 例え、私が大総統の地位を下りても、とってかわろうとする覇気のある人物はもう、いまい。
 第二のブラッドレイを作らぬため、全員私が手を下した。
 いつまで続くかはわからないが、しばらくの平穏が、病んだ国土と民を癒すだろう。
 「みなの、お陰さ」
 私が大佐と呼ばれていた頃の部下が、最後まで、私を支えてくれた。

 リザ・ホークアイ大総統補佐官。
 地位も名誉も望まなかった彼女は、いつでも私の側にいて、剣となり盾となり働いてくれて。
せめて良縁を!と数多見合いの設定なぞをしてもみたが、彼女が諾ということは一度たりともなかった。
今朝も鋼のが来るまでは私の側にいて、式典の説明や礼服の準備をして。
 『遅れないで下さいね』と、いつも変わらぬ言葉をくれた。
 今の地位を失っても、美しい外見と切れすぎる頭脳、鮮やか過ぎる射撃の腕を持った彼女を欲しがる組
織は、幾らでもあったのだが。
 彼女は誘いの全てを丁寧に断り。
 『最後まで、大総統のお側に』と、静かに微笑んだ。
 プロポーズでもされている心境だったが、私は曖昧に返事を保留している。
 
 ジャン・ハボック大総統副補佐官。
 私を庇って下半身付随に陥った彼も、今は杖を使えば歩行ができるほどに回復しているのが、何よりも
嬉しい。
 二度と、軍の狗に戻るつもりはありません、と言い放った彼に、土下座をして復職を請うた。
 例え体が不自由でも、見た目に寄らず切れるその頭と部下に慕われる性質と、何より信頼できる部下が
私には少なすぎたから。
 どれだけ長い時間床に頭を伏せていたのだろうか。
 肩を叩かれて頭を上げてみれば、泣きそうに歪んだ表情のままに私の体を、動かぬ足の上軽々と抱き
上げて。
 『俺結局、あんたにはべたべたに甘いんですよね。そんな顔してお願いされた日には、無視できるわけ
 がないんすよ』
 肩の上、こつんと顎が乗せられて。
 『以前のようには、絶対無理ですができる限りのことはしましょう。それでいいっすか』
 『ああ、ありがとう……よろしく頼む』
 『yes sir!』
 これだけはちっとも変わらなかった、小気味良い返事が耳をくすぐった。

 ヴァトー・ファルマン大総統秘書室長(中将相当)
 外出の多いホークアイ補佐官、足が自由には動かないハボック副補佐官の手の届かないとこ
ろを、丁寧かつ迅速にフォローしたのは、彼だ。
 最新式の端末に勝るとも劣らぬ膨大な知識量と記憶力。
 またそれを有効に使える頭脳を持った彼にも、随分助けられた。
 同じ情報機密系を扱うフュリー通信技術情報部室長よりも、裏に密着した情報を取り扱っても
表情を動かさない性分は特に重宝したように思う。
 退役後は、歴史を教える大学教授になるというのも、全く以ってらしい。
 彼ならば、虚構に彩られた一部の人間に都合の良い歴史ではなく、闇に葬り去られた忘れて
はいけないイトオシイ物をも、若い世代に伝授してゆくだろう。

 ハイマンス・ブレダ大将
 高級官僚と呼ばれる地位に早々とつきながらも、私の手足のように前線を駆け抜けたのは、
どちらかといえば一見鈍い印象を持たれがちな体躯の持ち主。
 まれに見る軍略家で、付き合ってきた深さ故に、ヒューズのように、とまではいかなかったけ
れど、常に私が望む通りの戦闘を展開してくれたものだ。
 私も認める三国一の美女(……その後の付き合いで、気立ても良い)と華々しく結婚式を挙
げた時の、にやけた顔はとても。
 とても幸せそうだった。
 妻の実家でもある大手三社と呼ばれる銀行に副頭取としての就任が決まっている。
 とりあえず、部下だった人間に預金は、ブレダの銀行を使えと言い渡してある。




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