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  漫画 幻惑の鼓動(やみのこどう) 

 現在も徳間書店発行・耽美雑誌『キャラ』にて好評連載中。
吉原理恵子・原作/禾田みちる・画。@〜J巻まで発売されています。
和テイストの超能力モノ?前世設定も有。
 
 天野晃一(あまの こういち)
 ……「邪眼」を持つ高校三年生。黒髪と額の傷痕に萌。少々ブラコン気味。

 塔谷一臣(とうや かずおみ)
 ……武道に優れた一族の中でもダントツの腕前。晃一と同じクラス。
    前世でも深い因縁有。

 最新刊に出てくる、天野の「こいつの背中ってこんなに大きかったけ」のセリフ
で、めろりました(笑)




 
背中(せなか)
  
                                     
 ただ、一人。
 俺が縋れる相手。
 前世など、関係もなく。や、それすらもひっくるめ、超越して。
 今、俺が、信用できる、唯一の存在。

 「ん?どうした呆けた顔をして」
 手渡してくれる、俺専用のマグカップに並々と注がれたコーヒーにはたっぷりミルクが入っていて、
苦笑を誘う。
 本来はブラックしか飲まない俺の、朝から何も入っていない胃を心配してくれているのだろう。
 まだ面映い優しさを、なるべく、嬉しいと思うようにしている。
 ソファのスプリングが軋み、ことんと塔谷の頭が俺の肩に触れた。
 波立つコーヒーに慌てて、口をつけると。
 「あち!」
 淹れたてのコーヒーは、思いの外熱くて、俺の舌をびりびりさせる。
 「ん?熱かったか?どれ、見せてみろよ」
 すっと伸びてきた手が、マグカップを浚い。
 反対の手が俺の頬を軽く摩り、唇に触れてくる。
 薄く開いた口を覗き込むようにして。
 「あ?少し火傷したかもな」
 するっとなんの断りもなく、口の中に入り込んできた指の腹が、そっとざらつく舌を撫ぜた。
 「ほって、おけば治るよ。大丈夫だ」
 「そうか?」
 常日頃から、暴走しがちな俺に心を砕いてくれているのはよく、わかるのだが。
 少々過保護かもしれない。
 ……などと言おうものなら『お前の弟に対する態度よりはずっとマシだぜ?』と悪態をつかれそ
うだ。
 「ただでさえ、生傷がたえねーんだから。気を付けないとな」
 普通なら、俺に気をつけろ、というだろうに。
 塔谷は自分が、気づけばいい、と笑う。
 
 「ああ、俺も気をつける」
 「……良い子だ」
 くしゃっと髪の毛を掻き混ぜられる、子供にするような仕種につい眉根が寄ってしまったが。
 ここの所、塔谷の俺に対するスキンシップの度合いは上がっている。
 恋人でもどうだろう?と思う親密さ加減じゃないかと思うけど。
 何より、俺自身がうっとしいどころか、心地良いと感じるのだから問題もないのだろう。
 そんなには変わらないはずなのに、何故か広く感じる背中に寄りかかった。
 「少し寝るか?随分と、疲れているもんな」
 じんわりと身体の隅々まで浸透してゆくぬくもりは、気だるい睡魔を誘う。
 「そう、だ。な」
 「おいおい。眠るんなら、ベッドに行け。ソファじゃ風邪ひくぞ」
 「あ……あ。わかって、る」
 空調が整っているとはいえ、本格的にベッドに入る睡眠と転寝では格段に違うのは、頭の片隅で
認識しているけれど、身体が動かない。
 安堵感とぬくみは、益々眠気を呼んだ。
 「仕方ねーな。よっと」
 ゆら、と身体が揺れた。
 そうやら塔谷が俺の身体を抱き抱えたようだ。
 手と足の先がぶらぶらと振り子のように揺れるのが、遠く感じられた。
 「ほいよ、と」
 ふかふかのベッドに沈み込んでゆく俺の額に、濡れた感触。
 「おやすみ、天野」
 「…す、み…とーや……」
 意識を手放しかける寸前、額に残されたのがキスだったような気がして、問いかけようとした意識
も、眠気の前にぐずぐずと崩れ去って。
 消えてしまった。



                                         END



*塔谷×天野

 バリバリの18禁仕様とか、書いてみたいですねー。
 難につけても月刊連載で、休載も多いので早くコミックスが読みたいものです。
 逆視点でエロエロ版も挑戦してみたいデス。                              




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