前のページへメニューに戻る次のページへ




 「ふふふ。それはそうだけれども。入れる瞬間も、君に痛い思いをさせたくないんだ」 
 ホムンクルスの悲しい宿命で、痛みを人のようには感じられないらしく、その反動か私に痛
みを与えることに関して、必要以上に心配性になった。
 「痛みが、心地良い時もあります」
 「君にはただでさえ心の痛みを与えているんだ。身体ぐらい愉悦だけを与えたい」
 わかってくれるね?と言われてしまえば、やっぱり私には頷くしか出来ない。
 すぼまった場所の周辺を、生暖かい感触が這いずり回る。
 「や、そこじゃなくてっつ!」
 「直接して欲しい?でもロイは、こうやって焦らされるのもスキでしょうに」
 「それは!貴方が…!」
 好きだから、私も好きになった。
 というよりは、慣らされた。
 「そう、私がそういう身体にしたんだ。ロイの身体をね。焦らされてより感じてしまう身体に。
  ふふ。嬉しいね。自分の思う風に焦らされて、欲しがる君は、本当に可愛いよ」
 可愛いよ、というセリフはこの人の場合免罪符では有り得ないのだけれど。
 また、この人以外に言われたら、それこそ腹立たしいくらいなのに。
 この人に言われた時だけは素直に嬉しい。
 どころか……感じてしまう。
 「あっつんう」
 入り口に、ちょんと舌先が触れただけで、私は背中を大きく仰け反らせた。
 浮いた背中に手を回されて、しっかりと支えてくれる腕の力強さにもまた、安堵を覚えた。
 ちょんちょんと舌先だけで突付かれて、ゆっくりと開き出せば舌先が潜り込む様にして、
中に入り込んできた。
 「あ!入ってっつ、入って、来た」
 背筋に強い悦楽の一線が走り抜ける。
 また、漏れてしまいそうだ。
 「ロイ君?また、いってしまうのかね」
 「あんっつ。だって気持ちイイ…」
 「良かった。私も気持ちイイよ。君がこんなに私を欲しがってくれて。ああ……中、蕩けてき
  たね。舌に襞が絡み付いてくるよ」
 ホーエンハイムの舌は、人間のそれと違って硬くもやわらかくも出来る。
 こんな小さな部位まで、自分の思う通りに変化させられるのだ。

 だらしなく開いてしまっているだろう箇所に、やわらかな舌の根元までを差し込まれて、舐め
上げられる。
 ちゅ、ぴちゅんという恥ずかしい水音は、ホーエンハイムが私の中を懇切丁寧に解す為にわ
ざと吐き出している唾液だけではなく、私が女性のように分泌する体液も混じっているはずだ。
 音が大きく、高くなってゆくのは、私の身体が出す蜜の量が増えている証拠。
 とろとろと蕩けて、本来の舌が持つ硬度では足りなくなった頃を、その舌で感じるのか、ちょ
うどアレと同じくらいに硬くなってしまうのだ。
 指よりは柔らかく、舌よりは硬い。
 私を小さく穿つ舌は、ホーエンハイムが持つ、私を責める為だけの性器のようだ。
 「ん!あっつ。かたっつ、硬いっつ」
 「硬いの、好きだよね。指ほど強くはできないし、奥までも入り込めないけれど。その拙さも
  お気に入りだよね…」
 この人とでしか感じられない感触。
 抱き合う度に何度だって思う。
 もう、私はこの人以外では満足できないのだと。
 身も、心も。
 全部。
 ぬるっと、舌先がイイ所を押してくる。
 「あ!そこ、やあ。ダメっつ。ダメぇ…」
 気持ち良過ぎて、自分が、どこかへ行ってしまいそうな喪失感に、怯えて。
 必死の面持ちで、続きを。
 先をねだる。
 「もう、欲しいっつ。貴方が、欲しいよぅ」
 えくえくと喉が鳴った。
 SEXが良くて、泣くなんて、私の生涯で経験できるなんて思ったことは無かった。
 「そうだね。もう、大丈夫かな?」
 舌を抜き取って、ほっとする間もなく、へその窪みをちゅっと吸われる。
 「やっつ!」
 跳ねて、浮いた腰を拾い上げられて、その下に枕が押し込まれた。
 頭を乗せれば沈んでしまいそうな、ふこふこの弾力は腰にも優しかった。
 「……ロイ君?見えるかい」
 ホーエンハイムが入ってきやすいように、太ももから大きく足を広げる。
 枕が入って高く上がった腰の向こうに、巨根としか表現しようが無い隆々としたホーエンハイ
ムの勃起したそれが見えた。
 懸命に首を持ち上げれば、肩の後ろに回された手が不安定な私の身体を支えてくれる。
 「はい。見えます。大きいのが、私のアソコに入ってくるのが…よく、見えます」
 瞼の上に落ちた確認の口付けに、小さく頷けば、ホーエンハイムの先端がずくっと、入り込ん
できた。
 「ああっつ!」
 挿入される様子を見て、射精してしまうなんて。
 私は一体どんな、淫乱だ?
 目を閉じて首を振れば、それ以上入ってこないホーエンハイムが、顔中にキスの雨を降らせ
てきた。
 「私のが……そんなに…欲しかったんだね。ふふ。焦らしすぎたから、無理もない。さぁ、全
  部をロイ君の中に入れたいよ。見ていてくれないと?」
 射精の余韻を唇を噛み締めて逃がすと、そろそろと目を開ける。
 「いいかい?ゆっくりするから、ようく、見ておいで」

 本当は見たくない。
 恥ずかし過ぎる上に、見ているだけで感じてしまうから。
 正直、挿入の際に『見ろ』と強要するのは、相手に羞恥を煽るためだけだと思っていた。
 少々被虐趣味のある……まぁ、女性とは得てして、そんな面を持つ人が多かったのだ……
女性向けに囁かれる言葉だと。
 実際、女性の膣の中に差し入れて、ピンク色の中身が自分のソレに絡み付いて離さない様
は、優越感めいたものを引きずり出してはくれたのだが。
 「ロイ、君?」
 ホーエンハイムの大きな、大きな肉の塊が自分の身体を深く侵食してゆく様を見せ付けられ
て、羞恥よりも愉悦が勝ってしまう自分がいる。
 「あっつ、あんっつ。入って、きた」
 ずるっと、一番嵩の張った場所が収まった。
 「どうだね?いいかな」
 「……ち、イイ」
 締め付けるのに、ちょうど良い形。
 意識せずとも、やっと入ってきてくれた安堵感のままに、きゅうきゅうと締め付けてしまう。
 「よく、聞こえないよ」
 くすくすと笑いながら目尻の端に溜まった涙を啜られた。
 快楽が度を越して、また泣いてしまったらしい。
 


 
                                         前のページへメニューに戻る次のページへ
                                             
                                             ホームに戻る