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 元気はなくとも、元々結構な大きさのあるそれ。
 ハボックのものと比べると元気はないし、大きさも劣るが何よりこのナニは私を喜ばす術
を知っている。
 ……きっと、ハボックよりも。
 「ん、ふうっつ」
 銜えているだけなのに、自分のそれが固くなっているのがわかる。
 フェラチオながら、自分のを大きくできるなんて我ながら、とんだ淫乱だと思う。

 男なら誰でも感じる場所を狙って舐めて、噛んで、吸い上げる。
 私は、まぁ、男は二人しか知らないが、感じる場所はだいたい似たり寄ったりだったりするが、
それぞれの場所での感度が違う。
 ハボックなら、舐めた方がいい場所を、先生は噛まれることを好んだりもする。
 SEXは結局のトコロ、相手の快楽をどこまで引きずり出せるかという部分が重要だ。
 ありきたりの愛撫で相手の反応を見ながら、徐々にオリジナリティを加えてゆく。
 古い話とはいえ、目を閉じても体のラインをなぞれる親密さで浸透していた。
 先生のイイ所を思い出すのに時間は掛からなかった。
 私に飲ませるミルクが吐き出される小さな穴を、舌先で広げて後に吸い上げる。
 腰がぶるっと大きく揺れて、私の髪の毛を梳いていた指が震えた。
 「ったく、がっつくなって」
 「早く、飲ませて頂きたいもので」
 完全に勃起したナニは、それでも射精には遠いだろう。
 元々が、かなり遅い方だった。
 それに年齢が嵩んだら一体どれ程焦らされるのか。
 「そー言うがな。俺はお前さんほど、若かぁねーんだって。どうせ飲むんならこっちの口で
  飲んでくれや。その方が好きだろう?」
 不意に身体を折り曲げて、爪の先で私の尻の肉をぐっと掴む。
 「好き、ですよ。でも上の口でも飲みたいです」
 「……どんな面して、んなセリフを吐くんだ」
 はぁ、と溜息がつかれる。
 呆れられたのかと、上目遣いで見上げれば、私を見下ろす目は蕩けるように優しかったの
で、取り合えず胸の内、ほ、と安堵の吐息を零した。
 「上は、次の機会にしておいてくれや。それまでにはまぁ。もちっとお前さんに合わせて、
  体力を作っとくさ」

 「体力をつける、ですか?先生が」
 ズボラな人ではない。
 案外マメで世話焼きな性分を良く知っている。
 ただそれは人に対するモノであって、自分にはほとんど向けられない。
 一人身ならば、どんな過酷な状況でも淡々を過ごしてしまえる人だ。
 私の為にだからこそ、そんな事を言ってくれたのはよくわかるし、うれしかったりもするのだが、
どうにも似合わない。
 「何もんな、すっとんきょうな面するこたぁねーだろうが」
 ぺしん!と指先が私の鼻を叩く。
 「まー間抜けた面は、おもしれぇがな」
 脇に腕を入れられて、どっこらせっとの掛け声の後。
 膝の上に引き上げられた。
 「入れても、いいですか」
 「……相変わらず淫乱だなー昔っからお前さんが、SEXの下準備をしてるの、見たことねぇや。
  何時でも準備万端だな?」
 「女性とは違うはずなんですけどねー。慣らされると濡れる、らしいですよ」
 先生の利き腕の手首を取ると、中指の先を銜える。
 歯で軽く噛んで、ちゅっと口付けてから喉の奥まで迎え入れた。
 ディプスロートでもやって差し上げたいところだが、口腔の中ではいきたくないと言うのならば
仕方ない。
 指で、我慢しましょう?
 先程とは違う感じる位置を的確に摩ってくる先生の指先を、先回りして押し留める。
 唾液を絡ませるように、吸って甘噛みすれば、先生の指がだんだんとふやけてきた。
 「俺の指は旨いんだろうがな。も、十分だろう。どれ。腰を上げてみな」
 シーツの上に膝立って、先生の指が動きやすいように股を広げる。
 真正面から、つっと裏筋へと指を滑らせて収縮を繰り返す場所へ、指先が潜り込んできた。
 「んあっつ!」
 演技では出せない切羽詰った音。 
 全く、私はどれだけ先生を欲しがれば気が済むのか。
 「まだ、第一関節も入ってねーぞ。そんなにがっつく程、欲求不満だったんか」
 「自慰には限界が、あるんですよ」
 「自慰ねぇ……若いなぁ」
 「先生は、しないんです?」
 「……全くしねーわけでもねぇが。ま、以前よりはやっちゃいねーさ」
 明け透けな会話。
 この、気安さがたまらなく好きだ。
 「先生がして、くだされば、しないですみますよ」
 「ふふん。一人上手な方が、なんぼかマシかもしれんぞ」
 指は、それ以上の進入を果たしてくれない。
 焦らすように周辺を擽っているだけだ。
 それこそ皺の一つ一つを撫ぜるような愛撫は、無駄に熱を煽り立てる。
 「焦らされないって、点ぐらいですよ。マスターベーションのイイところなんて」
 「そー言うけどなぁ?お前さん、焦らされるの好きじゃないか」
 爪だけが潜り込んできて、内側を掠めるように引っかく。
 まるで女性のように濡れて、先生が欲しくて蠢いているのなんか、百も承知して、この人は
焦らしてくる。
 ハンカチの端をきりきり噛み締めたい程度には、苛つく。
 「焦らせば、焦らすほど。イイ声で鳴くだろう」
 違うのか?と真正面から瞳を覗き込まれる。
 その子供のように無邪気な、何と言うか好奇心の塊の眼差しは居た堪れない。
 「限界は、あるんですよ?」
 腰を揺らして指を深く銜えようとすれば、指はすっと素早く引いてゆく。
 「まだまだだと、思うんだがなぁ」
                 
 眦を落としたままで、唇が重なってきた。
 キスなんて『一万回のキスを!』なんて恋人同士の謳い文句をクリアするんじゃないかと思
うくらいしてきた。
 女性の甘い悲鳴が、体内で響くのも嫌いじゃなかったし。
 ハボックには、上官だとか年上だとかプライドを刺激されて、奴の唇で己の嬌声を塞ぐのな
んて日常茶飯事だった。
 SEXの前戯ともいえる濃厚なキスもすきなのだが、こうやって。
 先生が走る私を抑えるように宥めてくれるキスは、好きキス・ベスト三に入る。
 目を伏せて、軽いキスをくれる先生の目元の皺が、離れていた年月を思わせた。
 不意に、イトシサがこみ上げてきて、先生の両頬を掌で包み込む。
 以前よりは、かさついた、肌。
 でもこの人は、こんな風に着実に年を取っても、私を抱き締めてくれる。

 ああ、まずいなぁ。




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