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 アニメ 鋼の錬金術師
 
 例によって、マイナーカプ推進委員会雑務係が頑張ります。
 大きくなったエリシアたんとロイが結婚する話を読みました。
 今までロイを、おじさま、と読んでいたエリシアが結婚を期に照れた風に、ロイ、と呼ぶ。
 これを萌えずして、いかなものに萌えろと!
 ってな感じです(苦笑)
 そうさ、私はクラリスが大好きなのさあ(暴走中)




 登場人物

 ロイ・マスタング大佐
 ……焔の錬金術師。
   ヒューズの代わりに父親めいたものができればなーとか思ってます。
   彼女のためにならないとわかっていても、べたべたに甘やかしてしまう今日この頃。

 エリシア・ヒューズ
 ……10歳ぐらいにしておきましょうかねー。人の心なんかも気になり出すお年頃ってトコで。
    ロイはパパでもあり、一番大好きな人でもあり。
    特別ってーのが現時点で擁いている感情。まだラブではありません。




 このお話は、エリシアにせがまれて、二人で薔薇園を訪れた時のお話。短めに。





 薔薇園

 
 「エリシア!そんなに走っては危ないよ!」
 私が贈った淡い桃色をしたシフォン生地のスカートを翻して、エリシアが勢いも良く走ってゆく。
 彼女は、私がどれほど忙しい仕事についているか、幼いながらにも理解している。
 どこかへ連れて行って欲しいという、エリシアのおねだりはまれだ。
 だから、実に一ヶ月ぶりの休暇も彼女のために使うのに惜しいとは思わない。
 きっと、ヒューズもそうしただろうしな。
 グレイシアに許可を貰い、列車に揺られて一時間ほどでその場所に着いた。
 観光地としても有名らしい薔薇を市の紋章にもあしらっているほど誇りを持っている、手入れ
は鮮やかなほどに完璧だ。
 英国式庭園と呼ばれた造りは、入った瞬間から、目を奪われる。
 遠景で見るからこそ分かる、計算し尽くされた庭園は、歴史を感じさせるもので、整備も機械
的過ぎずに抑えてあった。
 中央を数十メートルに渡って黄色い大輪の薔薇が、真っ直ぐに二列植えられているのが目
に付く。
 薔薇といえば、赤。
 もしくは、ピンクといった印象を持つが。
 ここにくると、それだけではないのを思い知らされる。
 淡い紫、目の覚めるような白、驚くほど葉の色にも似た緑、中央が僅かに薄い橙。
 またそれぞれが微妙にグラデーションがかったり、見事に交じり合ったりして、それこそ百花
繚乱。
 多種多様の色合いが楽しめる。
 エリシアは、淡い桃色の薔薇が気に入ったようだ。
 座り込んで、じっと飽きる事無く眺めている。
 「それが気に入ったのかい?」
 「うん。この薔薇およふくの色を似てるでしょう?ロイにもらったふわふわのスカートに」
 「ああ、そうだね。とても似た色合いだ……クイーン・マルガレーテという名前らしい」

 そんなに気に入ったのなら、鉢植えでも買ってあげるとしよう。
 きっとグレイシアが花を育てる楽しさを教えるだろうから。
 「エリシア。奥の方に、その薔薇を売っている場所があるよ。行ってみるかい」
 「うん!行く!」

 体全身で喜びを現わして、きゅっと私の手を握ってくる。
 私も出来る限り優しい微笑を浮かべて、エリシアの歩調に合わせてゆったりと歩いた。
 仕事を頭の隅から追いやって、のんびりと歩くのはどれぐらいぶりだろうか。
 順調に出世を重ねているとはいえ、大総統の地位にはまだ、遠い。
 走り続ける体力も気力も衰えてはいないが、時折、無性に怖くなる事がある。
 私は本当に、大総統になれるのか、と。
 「ロイ。このばらも、綺麗ね」
 「そうだね。やわらかい紫色で変わってる。お母さんにお土産にするのもいいかもしれないよ」
 そんな、時。
 ヒューズの忘れ形見である、この少女の存在がありがたい。
 確実に、両親の優しく人好きする性質を受け継いで、私の心配までもしてくれるようになっ
た、エリシア。
 こうやって、少女が何時か女性になってゆくように。
 私も、着実に高みへ近づけると、そんな風に思えるから。
 「あ、ちょうちょだ!」
 「……アゲハ蝶だ。大きいね」
 「こっちも、あげはちょう?」
 「これは、モンシロチョウじゃないかな」
 「ロイは、物知りさんだねー」
 「この手の知識は、マースの方が凄かったぞ」
 幼い頃二人、日が暮れるまで野山を駆け回った際に、皆ヒューズが教えてくれた。
 懐かしいな。
 ……お前が側にいないのに。
 懐かしいと、思えるようになったのは。
 私の心がお前の死を、ちゃんとに受け入れているからなのか。

 「うわーたくさんあるねぇ!」
 全貌を見渡せるゆるやかな階段の上には、大きな花屋。
 恐らくは、この薔薇園に植わっている全ての薔薇が置かれているのだろう。
 「んーとね。これはママに買ってあげるの」
 明るい朱色が優しいレディ・ローズは、確かにグレイシアによく似合う。
 さすがは、娘。
 自分の母親を、大切な人間をよく見ている。
 「ああ、グレイシアが喜ぶよ」
 「これは、エリシアに。自分に買っても良い?」
 指し示されたのは、クイーン・マルガレーテ。
 余程気に入ったらしい。
 「イイよ。私が買ってあげる」
 「後ね!これ!」
 シャルルドゴール。
 何ともいかつい名前だが、綺麗な発色の紫の薔薇。
 「これは誰に?パパにかな?」
 蕾もついた小さな鉢植えを、エリシアが私に手渡して寄越す。
 「んんー。これはロイに。えーと。いつもありがとうございます」
 ぺこんと頭を下げて。
 首から下げている小さなポシェットから、財布を取り出して、店主にお金を払っている。
 「エリシア?」
 「いっつも、忙しいのにエリシアのワガママをきいてもらってるから。んーと。お礼!」
 何時の間に、こんな可愛らしいことの出来る子供に育っていたのだろう。

 ああ、ヒューズ。
 子供の成長とは、本当に早いものなんだな。

 私はエリシアの身体を抱き抱えて、頬にキスをする。
 「ありがとう、エリシア。とても嬉しいよ」
 「うん。よろこんで、もらえて。エリシアもうれしい」
 お返しのキスは額の上に。
 「さ、ママの分とエリシアのお花も買おうね」
 「はーい」
 良い子の返事をして、綺麗にラッピングが施されるのを面白そうに眺めるエリシアを見つめな
がら、私は二人分の花代を支払った。
 気が付かぬ内に目の端に浮かんだ涙を、そっと指先で払う。
 
 ヒューズ。
 お前の代わりに、ずっと。
 育ってゆくエリシアを見つめ続けるからな。
 私が、お前の所へ、胸を張って行けるまでは。




                              
                END




 *エリロイ&ヒュロイ?
  ロイが大好きなエリたんを書きたかったですよ。
  でも、ロイたんはヒューズのことばかり。
  切ない片想いだね?エリたん。
  ……って、そんな話じゃないだろうが(泣)





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