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 アニメ(小説) マリア様がみてる 

 現在は集英社・コバルトにて連載中?あれ書き下ろしでしたっけ!
 何にせよ続刊中です。現在プレミアムガイドブックをあわせて21冊発売中。
 アニメ絵は個人的に、どうよ!と思ったのはここだけの話。
 コミックスは、文庫の挿絵で慣れてしまったのであれな感じ。
 乙女の園な世界は色々と楽しいです。
 薔薇様制度も悦なので、一部(愛しの聖様が卒業する前)だけでも読んでみてくださいませ。

 この小説って、ちゃんと時間が経過してゆくのが凄いなあといつも思います(キャラが永遠
に年を取らないって、結構あるじゃないですか)
 一番好きだったキャラが卒業した途端、興味が薄くなった自分にびっくり!
 まだ文庫は買ってますけどね。
 

 登場人物

 佐藤 聖(さとう せい)
 ……元、ロサ・ギガンティア様。現在は大学生活満喫中。
    同性愛者らしいんですが、それっぽい描写はあっても直接的な描写は薄いです。

 福沢 祐巳(ふくざわ ゆみ)
 ……現、ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン。この普通な性格に癒されるんだろうなーと思います。
    近くにいたら、確かに楽しそうだ〈笑〉


 まだ、聖がロサ・ギガンティアであった頃の話。
 衣替え初日。
 聖は苦手な、温室にて。
 


 

 七部袖
 
                                      
 温室は、好きじゃない。
 植物に都合良く作られた世界だというのも気に入らないし。
 何よりも、ここには栞の想い出が多すぎる。
 愛しかった人。
 今でも、たぶん、誰よりも、イトオシイ、少女。
 ふと、昔に思いを馳せかけた時、足元の辺りで声が聞こえた。
 私が苦手なのを押して、捜しにきた少女の声だ。
 「わー。こんなにいっぱいあるとどれにしようか迷うなー」
 声の聞こえる方に、そっと足音を忍ばせれば、ツーテールの髪の毛がぴょこぴょこと揺れて
いる。
 祥子に頼まれて、薔薇の館に飾っておく花を選びにきたのだ。
 温室を管理する園芸部は、そんな理由であれば、丹精こめられた薔薇の数本を切られるく
らい、快諾するだろう。
 自分達が育んだ花が、薔薇の館に飾られ、山百合会の皆様の目を楽しませるに至っては、
恐悦至極……なんてことを、真剣に思えるのだ。
 リリアン学園の一般生徒達は。
 まあ、確かに山百合会には美人も多いし、一芸に秀でている人も少なくない。
 けれど蓋を開けてみれば、実際一般生徒とさしたる変わりはなかったりするのだ。
 特に、真後ろ仁王立つ私に気がつかない、少女なぞは。
 「やっぱり、これね!お姉様の花」
 喜びの悲鳴を上げて、鋏をあてたのはコウシンバラ。
 ロサ・キネンシスの学名だ。
 「綺麗だし。良い香りもして、本当、お姉様みたい」
 うっとりとした表情のままで、祐巳は薔薇の花弁に花を近づけて芳香を楽しんでいる。
 「確かに、祥子は品の良いコロンを使ってるけどね。祐巳も負けてないわよ」
 「ひゃあ!」
 ああ、やっぱりいいわね。
 この反応。

 耳の裏に息を吹きかけるようにして囁けば、ツーテールをくるるんと回す、これまたド派手な
コケっぷりを披露してくれた。
 なんて言うか、天然で、笑いが取れる子だよ。
 「せ、聖さま〜?」
 「そうよ、ハニー」
 ばちこーんとウインクを一つ投げつつ、手を差し出す。
 おずおずといった風に手を差し出してくる辺りが、また面白い。
 まだ何かされるんじゃないかと、勘繰っているわけで。
 それに乗るのも癪なので、ここは素直に手首をしっかりと掴んで持ち上げる。
 「……ありがとうございます?」
 そこで、どうして疑問系なのか。
 まあそれだけ警戒されてるっていう話なんだけど。
 彼女が真剣に嫌がることは、あんまりしてないんだけどなぁ。
 「あら、私に助けて欲しくなかったの?」
 「いいえ!そんなコトは……は!薔薇!!薔薇は無事ですか!」
 スカートの埃を叩く間もなく、自分が見ていた場所に目線を走らせる。
 転げた拍子に傷つけてしまったかと、心配しているのだ。
 自分の、綺麗にまあるく泥で汚れてしまったスカートよりも、祥子の薔薇の様子を伺うのだ。
 全く、どうしたらこんな愛らしい性質の子ができるだろうか。

 もし、この子が私と同じ年で。
 私の隣りに立つ存在であったのなら、私はきっと栞と共に永遠の楽園に行けただろう。
 
 聖と栞の好きにすればいい。

 と。
 私が当時唯一望んだ言葉を祐巳ならば贈ってくれただろう。
 生真面目な栞も、彼女と一緒にあったのなら、私を受け入れてくれたと思う。
 一見普通に見える祐巳の、最高の美点が、これ。
 本人意識もせずに、人の心を寛げさせることができる。
 激しすぎる私の愛情を、祐巳という存在が緩和して、栞に伝えてくれただろうと。
 人生に、もし、がないとわかっていても、頭の片隅で考えてしまうことがあった。
 栞が大切で。
 今でもどうしようもなく焦がれていて。
 離れたのが正解だと苦笑するくらいに、執着したままではあるけれども。
 祐巳やその周り。
 激しさはなくとも、穏やかな感情で見守ってやれればいいと、そんな風に思う自分も確かにい
るのだ。

 「無事よ。薔薇は。だいたい薔薇を損なうほどに、貴方が突っ込んだら棘で傷だらけよ?」
 「は!そういえばそうですね!」
 懸命に薔薇を見つめていた瞳が、私を映して、嬉しそうに細められた。
 「衣替えしたばかりだというのに、こんなに汚して。おしり、真っ黒」
 「ええっつ」
 あわあわと後ろを振り返り、おそるおそるスカートの裾を摘み上げて、ひゃあっつ!と山百合
会の一員としては考えられない、素っ頓狂な悲鳴を上げた。
 「それに、やっぱり腕に擦り傷があるわよ?」
 夏服特有の七部袖から覗く健康的な素肌を晒す細い腕に、薔薇の棘がつけた傷が血を滲ま
せるまでには至らないが、一線すうっと蚯蚓腫れのように走っていた。
 「後で消毒しておいた方がいいわ」
 昔、やはり栞の肌を傷つけた薔薇の棘。
 あの時私は栞の傷に、唇で触れた。
 「はい、そうします」
 どこも似てはいないのに、どこかにている少女は私の言葉に、今度は純粋に頷いた。
 「……やっぱり、私も一緒に医務室へ行くから、手早く薔薇を切ってしまいなさい」
 「え、でも……」
 「よくよく考えたら、利き腕の傷に消毒薬を塗るなんて、器用な真似が祐巳にできるはずない
  ものね?」
 「そんなコトは……ありますね。頑張って薔薇を切りますので、少しだけ待っていて貰えます
  か、聖様」
 「んん?そんなに気が長い方じゃないからねぇ。あんまし待たせると、舌でぺろんと嘗め上げ
  て、動物的治療方法をしちゃうかも」
 「……大急ぎでします!」
 何て言いながらも、吟味に手を抜けない彼女の作業はまだまだ、時間を要するだろう。
 私は、退屈せずに待てるようにと、祐巳と一面の薔薇が見渡せるベンチに腰を下ろすと、ゆっ
たりと足を組んだ。


                                      

                                                      END


 


 *聖&祐巳&栞?
  自分しみじみ、聖様好きなんだなーと書いていて思いました。
  礼拝堂で、栞の額に唇を寄せる聖様とか書いてみたいですですね。
  エロ一歩手前。寸止めでゴー!ぐらいが意外に楽しいんだなあと。
  でも過去に、福沢姉弟の18禁仕様に挑戦したこともあり。
  途中で止まってしまったけども(苦笑)





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