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 漫画 タブロウゲート 

 角川書店アスカコミックスデラックスで2巻出てるんですが……。
 打ち切りですか(泣)続きが全然でません。
 2巻に予告があったので単行本未掲載漫画がある筈なんですけども。
 どうなんでしょ?
 ……今ちょっと検索をかけたら、2話分あるようです。
 よし!角川書店の掲示板に書き込みじゃあ。

 孤独な少年・サツキの元に行方知れずの祖父から1冊の画集が送られてくる。
 画集『タブレット』はタロットカードが描かれたものだが、絵の主人公(タブロウ)達の大半は家
出をしていた。
 家出人となってしまったタブロウ達を回収する為に、タブレットの幼き主人が、サツキの元を
訪れる辺りから、物語がスタート。
 タブロウはその時認めた人間が心象力で形成するので、お気に入りキャラの性格が真反対
になったりするトコも、なかなか面白いです。

 タブレットはカードキャプターさくらのクロウカードと似てますので、そんな感じだと思うと、い
いかもしれませぬ(笑)
 

 登場人物

 氷川サツキ(ひかわ さつき)
 ……広い洋館に住む孤独な眼鏡学生。素直な性格で優しさ満載。
    ちょっと引っ込み思案な所も可愛さポイントです。

 エリファス
 ……タブレット第18場面の住人。『月(THE MOON)』のタブロウ。
    愛称はエリー。
    タブレットの管理人のイメージだと剣客。サツキのイメージだとお母さん(笑)

 2巻辺りで、普通に生活している日の、ヒトコマだと思ってください。


 

 
悪夢(あくむ)
                                       

 剣聖と呼ばれ。
 時に崇められ、恐れられていたあの頃。
 タブレットを、私達を造られた偉大な創造人・グランドマスターと共にあった時を凌駕するこの
充実感は。
 全て。
 この方がもたらしてくれたもの。


 サツキの部屋の前に立ち、ノックをして、しばし待つ。
 返事がないところをみると、まだ寝ているのだろう。
 以前は私が起こしに行く頃には、きちんと起きていて着替えまですませていることが多かった
が。
 最近は、揺り起こすまで寝ている時も少なくなかった。
 それだけ、心を許してくれていると、そういうことなのだろう。
 ドアを開けて、ワゴンと共に入る。
 白い大判のナフキンの下には、ホットミルクを入れた銀製のポットと、サツキ専用のブルーも
鮮やかな小花が描かれているマグカップが乗ったトレイを準備してあった。
 極力食器が擦れあう音を立てないように近付く。
 枕元まで来てもまだ目を覚まさない。
 淡いペールグリーンに浮き出るように木の葉を刺繍した、厚めのカーテンを開ける。
 繊細な刺繍を施されたレースのカーテンから燦燦と降り注ぐ太陽の光が、サツキの額を照ら
した。
 「ん……んっ?」
 瞼がぴくんと痙攣をおこす。
 「サツキ?」
 おでこを撫ぜて、頬に手の甲をあてれば。
 「…エリ……ファス…は、よ」
 細く目を開けた、サツキが寝ぼけ眼のままに挨拶をくれた。
 「おはようございます。マスター」
 摺り寄せてくる頬を今度は、両手で包み込んで。
 「さあ。今日もいい天気ですよ。そろそろ起きましょうね」
 「そ…だね?皆、起きてるの?」
 ふわふわと彷徨う掌の上、サツキの眼鏡を置けば、視界がクリアになったせいもあって、サツ
キの言葉も比較的流暢なものに変わった。
 「昨夜の夜更かしが祟って、まだ寝入っているようですけれどね。一緒に朝御飯の準備を……
  と、思いまして」
 「うん、わかった。着替えをするね……と、その前に一杯貰える?」
 「一杯とはいわず、何杯でも」
 温めてあるサツキのカップに、八分目ほどのホットミルクを注ぐ。
 ふーふーと口を尖らせて表面に張った膜を端に寄せつつ冷まして、一口飲み込む。
 「あー朝はやっぱりエイファスの淹れてくれたホットミルクに限るね!どうしてエリファスに淹れ
  て貰うと、こんなに美味しいんだろう」
 私達が来るまでは、広い屋敷でたった一人で暮らしていたサツキは、本当に些細な事でも喜
んでみせる。
 朝のホットミルクも一人でいた頃からの習慣だったらしい。
 私が初めて淹れて上げた日は、ほろほろと涙を流して喜んでいた。
 誰かに、何かをしてもらうことが嬉しいサツキは。
 誰かに、何かをしてあげる嬉しさもまた、大切にしている。
 「ご馳走さまでした」
 私の目を真っ直ぐに見詰めながら、礼を言う辺りは、今は行方知れずとなっているおじいさん
の教育の賜物なのか。
 「お粗末さまでした」
 恭しく腰を折った私に、屈託のない微笑をくれたサツキは万歳をしながら、大きな伸びをする
と、軽快な動作でベッドから飛び降りた。
 前日から枕元にきちんと用意してある着替えをまといながら、私を振り向く。
 「今日のメニューは何にしようか?」
 「そうですねー。スクランブルエッグにベーコンとハムにソーセージ。昨日届けて貰ったオレン
  ジは絞ってフレッシュジュースにして……」
 「サラダの飾り付けにも使おうか?」
 「ええ。そうしましょう。綺麗ですし。パメラ辺りも喜びます」
 頷きながら、皆の為に一生懸命に朝食のメニューを考えるサツキの少しだけ寝癖で跳ねてし
まった髪の毛を、丁寧に撫ぜる。
 「ありがとう」
 この方の些細な微笑がくれる幸福感。
 側にいてくれるだけで、生きている喜びで満たされる今を。
 私は、どんなことをしてでも守り抜くと誓う。
 「どういたしまして、マスター」
 絶対に揺るがない、この忠誠を。
 貴方、だけに。

 口に出してしまえばきっと。
 忠誠を受け取る事はなく、家族になってくれればいいと笑うだろうけれど。
 私は貴方のための、剣となり盾となる。
 貴方がそれを望まなくとも、失いたくはないから。
 いつか、貴方には死が訪れて。
 白髪の老人となって向こうの世界へ旅立つ時は、どうか私も連れて行って欲しい。
 これ以上他の誰かになんか、仕えたくはない。いや仕えないだろう。
 「エリファス、どうかしたの?顔色悪くない?」
 ついと背伸びをしてこつんと、額に額があてられる。
 幼い仕種で熱を、計ってくれているのだ。
 「光の加減じゃないですか?熱はありませんし。体調も万全ですよ」
 「それならいいけど……エリファスは時々、とんでもない無茶をするから心配だよ」
 「本当に、大丈夫ですよ」
 心の底から微笑んで見せる。
 サツキが大切だから。
 心配をかけたくないから、そんなことぐらいは容易い。
 「そろそろ準備をしましょうか」
 「うん、そうしよう」
 いっそ華奢なくらいの背中を撫ぜるようにして促す。

 貴方を失う悪夢を二度と見ないためにも、どうか。
 その時が来たら、どうか。
 先に、逝かせてくださいね?
 せめて、一緒に連れて行って。
 置いて逝かないで下さいね……。




 *エリファス&サツキ

 エリファスの長い髪の毛を掴みながら、縋って揺さ振られるサツキも可愛いかなーと
  か思うんですけど。
  陽だまりの中、まったりと二人で作ったケーキでお茶をするなんて光景が似合いそう
  なんだよなー。
  また、気が向いたら書くつもりです。この二人。




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